ばってん爺じのブログ

年を重ねても、尚好奇心旺盛な長崎の爺じの雑感日記。長崎の話題を始め、見た事、感じた事、感動した事などを発信。ばってん爺じのばってんはバツイチではなく長崎の方言

小林製薬「紅麹」サプリで死者

小林製薬が製造した紅麹原料を使ったサプリメント「紅麹コレステ ヘルプ」を摂取し、腎疾患などの健康被害を訴える人が増え続けている。4月2日現在、亡くなった人は5人、入院して治療した人は166人、同社への相談件数は約3万件に上るという報道があった。

 問題のサプリは「悪玉コレステロールを下げる」とうたった、「機能性表示食品」である。機能性表示とは、食品やその成分が体や健康にどう働くかを示すものである。「機能性表示食品」制度は、米国のダイエタリーサプリメント(健康補助食品)を参考に作られたもので、当時の安倍晋三首相が、規制緩和による成長戦略として健康食品の機能性表示を解禁する方針を示し、2015年4月に制度として導入された。消費者の要望ではなく健康食品メーカなどの強い要望により作られた制度である。

 「機能性表示食品」制度の大きな特徴は、消費者庁の許認可で表示を認めるのではなく、企業の責任で認めるという仕組みである。企業は、販売60日前までに安全性や有効性などの根拠情報を含めた製品情報を消費者庁に届けるだけで、機能性表示食品を販売することができる。企業は自ら臨床試験をする必要はなく、機能性の成分に関する研究文献を提供するだけで可能という安易なものである。さらに、問題なのは、「機能性表示食品」制度には国の食品安全委員会が安全性をチェックする仕組みは組み込まれていない。食品そのものの安全性については、「企業等が自ら評価を行うことが適当」として、安全性評価を企業に任せている。

 従来は、日本で特定保険用食品を販売したいと思った時は、「特定保険用食品(トクホ)」の認定を受けなければ販売することはできなかった。トクホは1件ずつ国が厳しい審査をして許可するのに対し、機能性表示食品は届け出だけで国の審査はナシ。許可の際に人間に投与した臨床試験が必要なトクホと異なり、含有成分に関する既存の研究をまとめた文献提出で可能。ほぼノーチェックで商品に効果や効能などを記載できるようにした。大幅な規制緩和の「届け出」だけで容認できる「機能性表示食品」を安倍元首相は解禁した。この「手軽さ」が企業には魅力で、機能性表示食品は急成長していった。市場規模は18年からの5年間で3倍超となる6865億円(推計・富士経済調べ)にまで膨らんだ。今年3月時点での届け出は約6800件とトクホの6倍を超える。しかし、年々増加する届け出に事後チェックが追いつかず、消費者庁実施の買い上げ調査は22年度で119品に過ぎない。

今回の塩麹事件では多くの死傷者が発生しているが、機能性表示食品の危険性については、制度導入時にもその危険性が指摘されていたが、森雅子消費者担当相(当時)は「消費者被害が拡大しないような方向でとりまとめたい」と願望を述べるばかりで、制度の欠陥について根本的に取り組むことはなかった。「機能性表示食品」制度は、危険であるという警告を受けながら、導入された制度である。

「機能性表示食品」制度のもとでは、今回のような重大な被害が、今後も発生する不安が拭えない。早急に「機能性表示食品」制度の見直しをしてもらいたいと思う。