ばってん爺じのブログ

年を重ねても、尚好奇心旺盛な長崎の爺じの雑感日記。長崎の話題を始め、見た事、感じた事、感動した事などを発信。ばってん爺じのばってんはバツイチではなく長崎の方言

堤未果氏の話を聞く

 マイナンバーカードの活用拡大に向けた改正マイナンバー法などの関連法が、6月2日に成立した。2024年秋に現行の健康保険証を廃止して「マイナ保険証」に一本化するほか、マイナンバーの年金受給口座とひもづけられるようになる。しかし、マイナ保険証に別人の情報がひもづけられたり、公金受取口座の誤登録やカードの取得者が受け取る「マイナポイント」の別人への付与など問題が次々に報じられている。

マイナンバーカードの問題点について、ジャーナリストの堤未果氏は次のように語った。
「個人情報のデジタル化には3つの大切な条件があります。1つ目は政府と国民の信頼関係。2つ目は情報の取り扱いに対する透明性と機密性。3つ目は個人情報の持ち主の主権保護です。しかし、日本はいずれも不十分です。担当大臣は都合が悪くなると、“記憶にない”とすっとぼけるか、自治体のせいにしてしまう。これでは信頼は得られません。
 2つ目の透明性について言えば、外国では、誰が自分の個人情報にアクセスしたかを確認できるシステムがあるし、本人が嫌だと思えば、その情報を削除することもできます。日本はそうした自由を与えないまま、すべての情報を一つのマイナンバーカードに詰め込もうとしている。
 その情報も当初は災害、税金、社会保障の3つの分野に限定されるはずだったのに、岸田政権は省令で、その範囲をどんどん拡大しようとしています。そのうえ、強制的に情報を取得し、それが漏れても本人はわからず、誰が責任を取るのかもわからない。個人情報の主権保護も何もありません」

 「マイナンバーカードについて、政府の対応が批判されると、河野担当相は『日本だけデジタル化に背を向けることはできない』と言ってマイナンバーカード推進を強行してきたが、情報の一本化は危険すぎることから、海外では情報は分散させるのが主流である。米国にはソーシャルセキュリティー番号があるが、日本のようなマイナンバー制度はない。ドイツは納税者番号はあるが、何もかも一元化された共通番号制度は違憲とされている。イギリスは06年にIDカード法が成立したが、政権交代時に廃止された。今どき情報を一本化する取り組みをする国は珍しい」

 「2022年3月4日に運転免許証とマイナンバーカードを一体化させる道路交通法改正案が閣議決定された。23年3月7日には年金給付の受取口座も国民が拒否しなければ、マイナンバーカードと自動的に紐づけられることが決定した。“規定された事務に準ずる事務”であれば、省令でマイナンバーカードの利用範囲を拡大できるようになっている。“準ずる事務”なんて、どうにでも拡大解釈ができる。こうして、国民の知らない間にどんどん、国民の情報が次々にマイナンバーカードに紐づけられている。諸外国では貴重な情報を同じカバンに入れないのは常識で、セキュリティーの概念から、分散化に動いているのに、日本だけが逆行している」
  
マイナンバーカード機能はスマホアプリであるマイナポータルをインストールすると便利に使えると宣伝されている。ただし、アプリの利用規約をよくよく読むと恐ろしいことが書かれている。例えば、「利用規約の変更が合理的であるときは、本利用規約を改正することができる」「マイナポータルの利用にあたり、利用者本人または第三者が被った損害について、デジタル庁は責任を負わない」などなどだ。つまり、やりたい放題で情報が漏れても責任を取らない。この件について質問を受けた河野大臣は普通の民間サービスと同じ規約だから問題ないと言った。確かにソーシャルメディアのサービス規約には、ほとんどの場合「何かあったら自己責任です」と書いてある。けれど民間サービスは、自己責任である代わりに、マイナンバーカードのように強制的に全国民に義務化させることはない。こんな政府に任せていたら、今後は一体どうなるのか心配になる」
 「本来保護されるべき個人情報にアクセスできる国の公的サービスと、民間サービスは同列にはできない。クレジットカードなら、盗まれたら凍結させ、新しく別の番号をもらうことができる。けれど、マイナンバーは原則として番号が変えられないうえに、名前と住所と家族構成、年金や税金の支払い状況や、銀行の預金に生命保険に住宅ローン、所得や不動産、株といった資産情報、学校の成績から職歴、今までに受けてきた治療と飲んでいる薬の種類、公営住宅や失業保険、児童扶養手当をはじめとする各種手当の受け取り記録、犯罪歴まで含むので、悪用されたときの被害が比較にならない」と堤氏は語っていた。

 考えたら不安しかないマイナンバーカードであるが、マイナンバーカードに更なる不安を感じる報道を見た。それは6月15日の東京新聞の次の報道である。
「国内の社会保険労務士の多くが利用している業務支援システム「社労夢(シャローム)」に対し、ランサムウエア(身代金要求型ウイルス)のサイバー攻撃があった。なにより気になるのは、このシステムが800万人超分のマイナンバーを含む個人情報を扱っていたこと。もし外部に流出していれば、影響は計り知れない。政府・与党によってマイナンバーの利用範囲拡大や健康保険証廃止を含む改正マイナンバー法が成立したばかりだが、こんなことで大丈夫か」という記事であった。

このような危険極まりないマイナンバーカードの情報の一本化をなぜ強行するのか疑問に思う。躍起になっているのは自民党お得意の利権政治が背景にあるとも言われている。また、情報の一元化による個人の管理のためという声も聞く。マイナンバーカードを登録するだけで2万円支給するなど総額2兆円を支出してもそれ以上の見返りが見込めるからやる施策である。どのような問題点があっても強行する方針らしい。これを止めるにも、やはり政権与党から自民党を引き摺り落とすしかない。