秋晴れの穏やかな日曜日、柔らかい日差しと爽やかな風が心地よい。こんな日を家の中で過ごすのはもったいないと思い、山歩きをすることにした。行き先は「熊が峰(569m)」と「悪所岳(506m)」である
午前8時30分、自宅を出発。車で「熊が峰」登山口まで行く。登山口は大山集落である。大山集落は昔からキリシタンの里である。大山町のシンボルである大山教会の近くに車を止めてそこから登山口へ進む。
大山教会の標高は225mである。大山教会は山奥に位置する教会である。山奥に教会があるのはキリシタン迫害によって信者が山奥の地に逃れてきてこの地を開墾したことを意味する。大山教会が現在あるのは迫害に耐えて信仰を貫いた証ともいえる。登山口は大山教会の先にある。午前9時、ここから標高569mの「熊が峰」を目指す。
登山口から入ってしばらく行くと、竹林の中へ入る。小さな踏み固められた道を登っていく。案内の赤いリボンを探しながら進む。しかし、9月の台風の影響か倒木が多く道を塞ぐことも多い。そればかりか、赤のリボンがなかなか見つけられず道を見失う。右往左往しながら道を見つけて進む。竹林を抜けると尾根道にでる。しばらく緩やかな尾根道を楽しんだ後は、「熊が峰」に直登する長い急な登りに取り付く。長い急な登りはきつい。息を切らして上り詰めると「熊が峰」山頂に至る。
熊が峰は標高569mである。山頂は広場になっている。周囲を高木に覆われているので展望はきかない。長い急坂の登りを登り切ってかなり疲れた。息を整えるためにしばらく休憩して、次の目的地「悪所岳」を目指す。
熊が峰山頂から悪所岳をめざす。広い尾根道を行く。鳥のさえずりを聞きながら、誰もいない誰も通らない道をゆっくり進む。この広い通りを独り占めである。木々の切れ目から橘湾の青い海が見える。そして海の向こうには雲仙普賢岳が見える。晴れた日であっても雲仙普賢岳の頂上付近は雲に覆われることも多い。今日は珍しくその頂上は雲に覆われていない。お山雲仙は紅葉シーズンが始まったところである。今日の紅葉狩りは最高の景色が楽しめることだろう。
アップダウンを繰り返しながら進む。緩やかなアップダウンはまだいいが、急坂のアップダウンは泣きたくなる。若い時は上りも下りもそんなに時間差はなかったが、今は極端に上りの時間がかかる。平地が一番好きだが、平地を進んでいると、突然通行禁止みたいにバリケードが横たわっている。ここを通らないといけないのにどうして?と心配したが、どうやら単なる倒木みたいである。そのまま乗り越えて進む。しばらく行くと悪所岳0.7kmの案内板が見えた。悪所岳までもう一息である。
アップダウンを繰り返して進んでいると突然目の前に八天宮と書かれた木の鳥居が現れた。ここを通ると悪所岳はすぐである。悪所岳は間近であるが、悪所岳への最後の登りは傾斜もキツくなり、足場が悪い岩場が続く。岩場で足を滑らせたらただでは済まない。慎重に踏みしめて登っていく。
ようやく、悪所岳頂上到着。頂上には八天宮が祀られている石の祠が置かれている。
頂上は狭い。石の祠の後ろは断崖絶壁である。祠の後ろを通るのは怖くてできない。足がすくむ。私の想像であるが、悪所岳の名前の由来は一歩踏み外すと命を落とす頂上の断崖絶壁から悪所という名前になったのではと想像する。それでも頂上からの眺めがいいのでフアンは多い。
悪所岳からの景色は雄大である。眼下には大崎の集落が見える。東方面を見ると橘湾が広がり、島原半島と天草が見える。南方面には野母半島の山々が連なっている。雄大な景色を楽しみながら昼食をとる。
悪所岳の景色を十分に堪能したので帰路に着く。往路と同じ道を帰って行く。山歩きするといつも数人の人に出会うが、往路では誰にも会わなかった。天気は良いので山歩きしている人はいるはずなのにと思っていると後ろから男の人が勢いよく登ってくる。戸町岳へ向かうそうだ。元気な男性と話していると前から男性の登山者が近づいてきた。どちらへいきますかと尋ねると「烏帽子岩」へ行くという。この辺りはコースが交差する場所である。お互いに「お気をつけて。ご安全に」と言って別れる。
15時2分大山教会に到着。6.5kmの道のりを6時間かけて歩いた。時速1キロである。私の山歩きはスローペースである。風が吹けば立ち止まり風の音を聞く。花を見つけたら立ち止まって写真を撮る。振り返って良い景色を見つけたら小休止する。時には、道迷いして時間をロスする。ゆっくり行くことで、今日もいろんな初めてを体験した。山歩きは行く度に初めてを体験できるのが楽しい。