ばってん爺じのブログ

年を重ねても、尚好奇心旺盛な長崎の爺じの雑感日記。長崎の話題を始め、見た事、感じた事、感動した事などを発信。ばってん爺じのばってんはバツイチではなく長崎の方言

思いやり予算と基地問題

「ザ・思いやり」というドキュメンタリーを制作した米国人映画監督リラン・バクレーさんの動画を見た。「ザ・思いやり」は日本の在日米軍駐留経費負担(思いやり予算)を扱った作品である。日本の思いやり予算は2020年度予算で1993億円に上る。バクレーさんは、米軍再編経費なども含めた在日米軍関連の拠出額は年間8千億円に上ると述べていた。思いやり予算についてはトランプ大統領の時に法外な額を吹っ掛けられたようで交渉継続のままバイデン大統領に代わったようだ。バクレーさんは「在日米軍基地に提供している土地も、思いやり予算も、日本にとってはもったいない。この先100年米国に頼りつづけるのか、国民も政府も真剣に考えるべきだと思う」と訴えている。

 

バクレーさんの話の中で、私たち日本人は核や基地問題に関心が薄いと言われていたが、決して関心がないわけではない。特に、日本にある在日米軍専用施設の面積の7割を占めている沖縄の負担を考えると基地問題を早急に解決しなければと思う。

 

基地問題を考える時、一番問題と思うのは不平等条約であるところの日米地位協定である。

この日米地位協定には、米軍関係者の事件・事故について日本側は刑事裁判権を持たないという規定がある。私はこの不平等な日米地位協定を知るきっかけになった1995年の沖縄の事件を決して忘れることはできない。

1995年、米兵三人が沖縄の商店街で12歳の女子小学生一人を拉致し、人気のない海岸まで連れていき、レイプした。三人は拘束されたが、米軍が身柄を確保し、起訴するまでは日本の警察に引き渡さなかった。米軍は沖縄県警による三人の取り調べにも非協力的であった。

 

1995年の少女暴行事件をきっかけに沖縄県沖縄県民は日米地位協定の改定を求めたが、日本政府はそれには応えず、沖縄の要求を鎮めるために、普天間返還というカードを持ち出した。

日米地位協定は改定されないまま、さらに事件はくり返された。2016年、沖縄県うるま市を散歩中の20歳の女性が、強姦目的で路上の女性を物色しながら車を走らせていた米軍属に、後ろから殴りつけられて車内に引きずり込まれ、殺害された。事件を受けて、沖縄県及び沖縄県民は再び日米地位協定の改定を求めたが、日本政府はこれを黙殺したまま現在に至っている。

 

この種の犯罪事件は、沖縄に米軍が駐留して以来日常的に発生している。犯罪を犯した犯人は、本来日本の法律によって処罰されるべきだが、日本の法律は適用されず、今までの事例ではそれらの犯罪者は除隊になり本国に送還され無罪放免になる事例が多く発生している。

 

また、沖縄国際大学の事故も日米地位協定の問題点を浮き彫りにした。

2004年、沖縄県宜野湾市にある沖縄国際大学に、訓練中の米軍ヘリが墜落し大学本館に激突して、建物ごと炎上した。事件発生後、約100名の米兵が大学構内に無断進入し、一週間もの間、大学を占拠・封鎖した。そして、沖縄国際大学を占拠した米軍は、日米地位協定合意議事録にある「日本当局は、所在のいかんを問わず合衆国軍隊の財産について、捜索、差押え又は検証を行なう権利を行使しない」という規定を根拠に、日本側の事故現場への立ち入りを全面的に一方的に禁じた。

 

この日米地位協定によって、在日米軍関係者が起こす事故・事件は日本の法律で処罰できないことについて、日本は本当に独立国なのかと言う疑問とともに非常に大きな不満を感じる。

 

私たち日本人は日米地位協定の改定こそ、自尊心をかけて取り組まなければならない国家的課題と私は考える。いくら日本がオリンピック開催を成功させようとも、不平等条約日米地位協定がそのままでは国際的に何も認められないと同じではないかと思う。日米地位協定不平等条約であることは明確なのに、なぜ日本の為政者は日米地位協定の改定に全力で取り組まないのか不思議に思う。

 

「誤解だらけの日米地位協定」を著した国際政治学者の山本章子氏は以下のように述べている。

『米国務省が2015年に発表した「地位協定に関する報告書」には、米軍を受け入れている国がその存在を必要としていれば、地位協定についての交渉でアメリカは常に優位に立てるとあります。日本はまさにこの典型です。同報告書は、もし受け入れ国の国民が、駐留米軍は自国の主権を侵害しており、不要な存在だと考えれば、アメリカは交渉で不利になるとも指摘しています。日本政府の2015年の世論調査結果によれば、国民の8割超は安保条約を「役立っている」と評価しています。こうした現状では、日米地位協定の改定は簡単ではないといわざるをえません。』

 

日米安保条約が日本にとって役立っている。だから不平等条約でも構わないと国民が思っているのであれば、そうなるだろう。しかし、本当に不平等条約でも構わないと国民の80%がそう思っているのだろうか。今だけ金だけ自分だけの真剣に日本の政治課題に取り組まない為政者の80%がそう思っているだけではないかと思う。今だけ金だけ自分だけの為政者ではなく、真剣に独立国日本の成立のために尽力する政治家の出現を期待したい。