矢部宏治氏の著書「知ってはいけない 隠された日本支配の構造」を読んだ。
この本を読んで、すぐには信じられないことばかり書かれているので、本当に驚いた。日本は独立国だと思っていたが、この本を読むかぎり独立国ではない。日本は米国の植民地なのか従属国なのかよくわからないが、主権を持たない国は独立国とはいえない。
第一章は「日本の空は全て米軍に支配されている」というタイトルであった。
日本の首都圏の上空は、横田空域と呼ぶ米軍に支配されている空域があり、日本の航空機は米軍の許可がないとそこを飛ぶことができない。いちいち許可を取るわけにはいかないので 、JAL や ANA の定期便はこの巨大な山脈のような空域を避けて、非常に不自然なルートを飛ぶことを強いられている。特に空域の南側には羽田空港や成田空港に着陸する航空機が密集し、非常に危険な状態になっている。
横田空域は米軍・横田基地が管理する空域で、この空域内でなら米軍はどんな軍事演習をすることも可能であり、日本政府からその許可を取る必要もない。危険な飛行機と言われるオスプレイは、すでにこの空域内で頻繁に低空飛行訓練を行っている。
もし、この空域内でオスプレイが墜落して死者が出ても事故の原因が日本側に公表されることはないし、正当な補償がなされることもない。実際に、1977年横田空域内の横浜市青葉区に米軍機が墜落し、死者2名、重軽傷者6名、家屋全焼一棟、損壊3棟という大事故が発生した。パラシュートで脱出した米兵2名は自衛隊機によって厚木基地に運ばれ、その後アメリカへ帰国した。
米軍優先空域は横田空域だけでなく中国・四国地方にある岩国空域と沖縄にある嘉手納空域も同様である。さらに、指定された空域以外でも、「日本政府は、軍事演習を行う米軍機については、優先的に管制権を与える」という密約を結び、「日本の空」全てが戦後70年以上経った今でも完全に米軍によって支配されている。
太平洋戦争で日本は米国に負けて、1945年米軍に占領された。日本を占領した米国は、①米軍関係者が日本の法律によって裁かれないための「裁判権」、②米軍が日本の国土全体を自由に使用する「基地権」の二つの占領期特権を行使して統治した。1952年、日米はサンフランシスコ平和条約を締結し日本の占領が終わった。このサンフランシスコ平和条約は政治、経済においては占領状態を終わらせた条約であったが、逆に軍事に関しては安保条約と連動する形で日本の占領を法的に継続し、固定化するものであった。
1960年、岸首相は、「裁判権」や「基地権」など不平等な日米関係に不満をあげる国民の声を受け、対等な日米関係を作るための安保条約の改訂に取り組んだ。例えば、「米軍関係者の犯罪の裁判権は全て米軍側が持つ」という裁判権条項について、「公務中の犯罪については米軍が裁判権を持つが、公務外の犯罪については日本側が裁判権を持つ」という取り決めが結ばれ発表された。しかし、現在まで、米兵犯罪の実態は何も変わっていない。条約が改定されたにもかかわらず、米兵犯罪は日本では裁判できない状態が続いたわけは、機密解除されたアメリカの公文書によって明らかになった。安保条約改定時に、日米合同委員会の秘密協議によって①裁判権放棄密約、②身柄引き渡し密約の二つの密約が結ばれていた。もとの条文=改定された見かけの良い条文+(裁判権放棄密約+身柄引き渡し密約)という形に変えて、米兵犯罪の多くが以前と同じく、見逃されることになった。
「基地権」の改定についても同様である。占領状態をやめて対等な日米関係をつくるという掛け声で始まった「基地権」改定についても「基地の問題についての実質的な変更はしない」という密約を結んでいたから改善されるはずがなく、さらに占領特権が強化された。「古くて都合の悪い取り決め」=「新しくて見かけの良い取り決め」+「密約」によって、いかにも改善されたの如く装うが、実は必ず密約を結び軍事的占領期特権体制を現在まで続けている。国民は見かけの条文を見て日本は独立国であると思っているが、今なお、国家としての主権を持たない占領状態が続いているのが本当のようだ。世界で米国と基地協定を結んでいる国は多数あるが、国土全体が米軍に対して治外法権下にある国はどこにもない。信じられないが、この本が機密解除されたアメリカの公文書の研究をもとに書かれているので信じるしかない。
あとがきで著者は述べている。「あとはきちんとした政権を作ってアメリカと交渉するだけ」であると。確かにそうである。政権によっては、今の植民地みたいな状態がいいという為政者が現れたら永遠に従属国であり続ける。まず、きちんとした政権をつくらないと先に進めないと思う。現在の主権を無くした日本国家の現状を国民一人一人が理解するところから始めなければならない。道は遠く、簡単にはできないことだと思うが、きちんとした政権を作って独立国を目指したいと思う。