ばってん爺じのブログ

年を重ねても、尚好奇心旺盛な長崎の爺じの雑感日記。長崎の話題を始め、見た事、感じた事、感動した事などを発信。ばってん爺じのばってんはバツイチではなく長崎の方言

ジャン・ユンカーマン氏の話を聞く

「18歳のためのレッスン第8回」は「沖縄うりずんの雨」というドキュメント映画を制作したアメリカの映画監督であるジャン・ユンカーマン氏が「沖縄戦は終わっていない」というテーマで話をした。

 

「沖縄うりずんの雨」というドキュメント映画は、沖縄住民の4人に一人が亡くなった沖縄戦を下地にして沖縄を考える作品である。1945年4月1日のアメリカ軍の沖縄本島上陸から6月23日(現在の慰霊の日)までの12週間に及んだ沖縄地上戦を元にして、当時同じ戦場で向き合った元米兵、元日本兵、そして沖縄住民に取材を重ね、米国立公文書館所蔵の米軍による記録映像を交えて、沖縄戦の実情に迫ったものである。また、戦後のアメリカ占領期から今日に至るまで、米軍基地をめぐる負担を日米双方から押し付けられてきた、沖縄の差別と抑圧の歴史を描き、現在の辺野古への基地移設問題に繋がる、沖縄の人たちの深い失望と怒りの根を浮かび上がらせているものである。「沖縄うずりんの雨」の作品の中で、沖縄の戦争体験者は終戦後70年経た今も「沖縄戦は終わっていない。戦争は続いている。」という話をしている。

 

沖縄に米軍基地は必要か?

沖縄の経済に占める米軍基地の貢献度はベトナム戦争当時は50%を越えていた。ベトナム戦争が終わった時に15%に低下して、現在は5%でしかない。沖縄は米軍基地がないと経済的に成り立たないという話はむしろ逆で米軍基地があるために沖縄の経済成長が妨げられているというのが事実である。

10年くらい前から、米軍人によるさまざまな犯罪被害などを受けて、沖縄の80%以上の人が沖縄に基地が押し付けられているという事実をこれ以上我慢できなくなっている。沖縄の米軍は日本を守ってくれているのだから沖縄に基地は必要という意見がある。しかしそれは間違いである。沖縄にいる海兵隊は攻撃部隊であり戦争抑止力にならない。

 

沖縄になぜ米軍基地があるか?

沖縄になぜ今も米軍基地があるかということをアメリカ側から考えると、アメリカには今も沖縄は戦利品(the soils of war)という考え方が根底にある。自分たちが血を流して奪い取った島だから自分たちが使う権利があるという古い概念が戦後70年経った今でも、以前としてアメリカ側には残っている。

 

沖縄では米軍基地のフェンスの内と外では全く違う意識が存在する。フェンスの外にいる沖縄住民はみんな、住民の4人に一人が亡くなった沖縄戦の遺族である。沖縄戦で悲しい苦しい思いをした遺族である。沖縄米軍基地は沖縄本島のいたるところに存在するが、その米軍基地の名前は沖縄戦で英雄となった兵士の名前がつけられている。沖縄戦で沖縄人日本人をたくさん殺した軍人を賞賛して命名されている。そのことに違和感を持つアメリカ兵はいない。フェンスの中は今も戦利品という意識を持ったアメリカ兵が存在している。フェンスの内と外では全く違った価値観が存在している。

 

また、沖縄には昔から「命が宝(ぬちどうたから)」という文化が育まれてきた。だから、沖縄戦ベトナム戦争で沖縄が攻撃基地に使われたことも沖縄人とってはやりきれないことであった。沖縄人には、人を殺すことを仕事とする軍隊ほど沖縄に合わないものはないという考え方や意識がある。

 

 

なぜ沖縄の基地はなくならないのか?

イラク戦争のとき、沖縄に海兵隊はいなかった。イラク戦争当時、沖縄の軍隊はイラクに行っていた。沖縄に軍隊が存在する理由はない。沖縄に米軍基地がある理由は思いやり予算(host country contribution)があるからである。どこの国もアメリカ軍に対して駐留経費を負担している。しかし、どこの国も10%〜20%を負担しているが日本だけは70%である。これが米軍が日本に軍隊を展開する理由の一つになっている。

 

沖縄のフェンスの中の意識は戦利品と考え、フェンスの外の意識は差別されていると考えている。その差別されているという沖縄人の意識は近年高まったおり、与党も野党もないオール沖縄という意識にまで高まっている。アメリカによる差別だけでなく、日本の米軍基地の74%が沖縄に押し付けられているという事実も沖縄人にとって差別だと考えている。

 

アメリカ人は沖縄についてどの程度知っているか?

沖縄戦を戦った米軍兵士は沖縄が戦後70年も占領されているような扱いに心を痛めている人も多い。沖縄戦を戦った「平和を求める元兵士の会(veterans for peace )」というのがある。沖縄住民の80%が反対している辺野古基地反対闘争の座り込みに賛同して、平和を求める元兵士の会の会員である元アメリカ軍人10人が辺野古基地反対の座り込みに参加したニュースが流された。少しづつであるが沖縄の声がアメリカにも届くようになってきている。アメリカのニューヨークタイムス紙が沖縄の辺野古基地問題を取り上げ日本政府とアメリカ政府が民主主義を踏みにじっているという社説を掲載した。沖縄問題を契機として各国との友好関係を維持しながらのアメリカ軍の世界展開を模索する声がアメリカにも上がりつつある。

 

日米安保条約と沖縄

日米安保条約の支持率について考えると、本土の80%〜90%の人が日米安保条約が必要と考えている。反面、沖縄では日米安保条約が必要と考えている人は10%〜15%にとどまっている。現実は日米安保条約は必要ないと考えている沖縄に74%の基地を押し付けていることになる。どうしても日米安保条約が必要と思うのであれば、負担を平等にしていくことが必要になる。

 

アメリカ人のジャン・ユンカーマン氏が沖縄に深く心を寄せて、沖縄を自分の問題として捉え、活動していることを知って驚いた。彼は沖縄のドキュメント番組を作成する中、戦後70年を過ぎているのに、沖縄戦はまだ続いているという沖縄人の声をしっかり受け止めて番組を作った。逆に日本本土に住む日本人は、沖縄の人がどんなに大きく声をあげても聞こえないふりをして70年過ごしてきたのだと思う。また、ジャン・ユンカーマン氏の話を聞き、彼の視点は日本人である私にとって、とても新鮮に思えた。

沖縄問題は日本の問題である。同時に世界に沖縄問題に関心を持っている人がいることを知り勇気をもらった思いがした。これからも沖縄問題の解決のために多くの心ある人と手を繋いで歩み続けたいと思う。