ばってん爺じのブログ

年を重ねても、尚好奇心旺盛な長崎の爺じの雑感日記。長崎の話題を始め、見た事、感じた事、感動した事などを発信。ばってん爺じのばってんはバツイチではなく長崎の方言

「役割を失った原子力発電」

長崎新聞原発事故から10年「役割を失った原子力」という評論が掲載された。この評論の執筆者は国際エネルギーコンサルタントのマイクル・シュナイダー氏である。マイクル・シュナイダー氏は1983年に「世界エネルギー情報サービス」を創設し、現在は独立のコンサルタントとして、国際原子力機関(IAEA)、フランス政府、ドイツ政府などの研究に貢献されている方である。

 

評論の中で、東京電力福島第一原発事故から10年になるが、この10年の間に、世界のエネルギー政策は原発ではなく、再生可能エネルギーを中心に展開するようになったと述べて、世界の原子力をリードし最も多くの原発が稼働している米国の原発の実情を紹介していた。

 

「論争は決着をみた。原子力発電は太陽や風の前にかすんで見える」2017年、米国のエネルギー開発公社の代表を長く務め、米国の原子力の盛衰をその目で長く見てきたデーブ・フリーマン氏が世界の原子力産業に関する報告書にこんな序文を寄せた。

現在米国では2016年に原発を完成させて以来、その後の新規運転開始はない。2013年に始めた新規原発の建設は東芝米原発子会社の経営破綻により2017年に計画が中止された。破綻したプロジェクトには100億ドルが投じられ、発注した電力会社の電力料金は高騰した。現在、ジョージア州では2009年から計画された原発が建設中である。この原発は2009年に61億ドルとされた建設費が2018年には280億ドルと5倍近くに跳ね上がり運転開始は大幅に遅れている。

 

米国で現在稼働している原発は94基である。平均の経年は40年を超え、老朽化がコスト高の原因となり原子力の発電単価は上昇を余儀なくされている。一方で、過去10年間に米国の太陽光発電のコストは90%、風力発電は70%も下がっている。原発再生可能エネルギーとの厳しい価格競争にさらされている。

 

世界の原子力産業は新たな市場をほとんど失って久しい。2020年には世界で、5基の原発が新たに稼働したが、廃炉になった原発は6基あった。2020年、原発の発電容量は40万キロワット増えたものの、風力発電太陽光発電などによる再生可能エネルギーの増加分は2億キロワットにも達している。再生可能エネルギーにはとても及ばない。燃料費がいらないエネルギー源というものがもはや夢物語ではなくなり、現実のものとなった。世界中で新たに建設される発電所の中で再生可能エネルギーが最も人気があるものとなり、原発はどんどん再生可能エネルギーに置き換えられていると述べ、原子力発電はすでに無用のものとなっている。日本の政策担当者もこの現実に向き合わねばならないと警告している。

 

この評論を読み、世界でのエネルギーの動き、流れがよくわかった。原子力発電は、再生可能エネルギーと厳しい価格競争にさらされている。そしてエネルギーの世界市場において原子力発電が再生可能エネルギーに敗北をしている。その結果、原発再生可能エネルギーにどんどん置き換えられているということであった。                                  

 

しかし、日本の原子力発電のコマーシャルを流している日本電気事業連合会のホームページを見ると、原子力発電は、発電コストに占める燃料費の割合が、火力発電などほかの発電方法に比べて低く、燃料費の高騰による発電コストの上昇を避けることができる。原子力発電は発電コストが安いと今も説明している。

 

なぜ日本の原発コストだけ安いのか疑問に思い、調べると

電気事業連合会が発表している原発の発電コストは、一定のモデルで計算された発電に直接要する費用だけをあげている。実際はそれにプラスして放射能再処理費用、開発費用、立地に関わる国の財政支出、さらにそれに災害対策費や放射能事故の補償費などをコストとして入れるべきだが安く見せるために計算に入れてない。現実を反映していないコストと言われているようだ。

 

日本の原子力ムラはこの現実を前にしても何も変わりそうにない。しかし、東日本大震災原発がいかに危険なものであるかを私たちは学んだ。地震列島日本には原発はいらない。日本から原発がなくなるまでその声を上げ続けなければと思う。