ばってん爺じのブログ

年を重ねても、尚好奇心旺盛な長崎の爺じの雑感日記。長崎の話題を始め、見た事、感じた事、感動した事などを発信。ばってん爺じのばってんはバツイチではなく長崎の方言

評論「夢の原発はありえない」を読む

原発への依存度を下げる」と言っていたはずの岸田文雄首相が、昨年突然、原発の運転期間の延長や新増設、建て替え、次世代革新炉の開発などを検討すると表明した。東電福島第一原発で未曽有の被害を出し、故郷を追われた周辺住民の傷はいまだ深く、廃炉など事故処理の見通しが全く立っていない状況で、ロシアのウクライナ侵攻などで起きた「電力ひっ迫」を口実の暴挙だ。 
 岸田首相の方針転換の表明は、昨年8月24日に首相官邸で開かれた脱炭素を議論するGX(グリーン・トランスフォーメーション)実行会議の第2回会合で行われた。会議は非公開で、原発推進の産業界や電力会社の幹部、学識経験者、それに連合の吉野友子会長らが参加していた
 福島原発事故後の政権は、原発の新増設や建て替えは「想定していない」とし、岸田首相も昨秋の自民党総裁選や衆院選でも、新規制基準に適合した原発を再稼働させる意向は示したが、新増設には言及しなかった。先の参院選公約で、それまでの「可能な限り原発依存度を低減」という文言は消したが「安全が確認された原子力の最大限の活用を図る」としていた。これまで、首相は原発の新増設への考えを聞かれても答えず、原発を争点から外すことに腐心してきたことがうかがえる。少しずつスタンスを移しながら、財界・電力業界の要求実現を表明する機会を狙っていたのである。そして、参院選で政権基盤を強化できたとみるや、原発政策の180度転換に踏み出したとみられる。しかも、短期間に結論を出すというのだから、民主的手続きを無視した暴挙と言わざるを得ない。

次世代革新炉の新増設に関しては、技術の進歩に“より安全でより安い”電力などといった説明記事も時折見受けられるようになった。しかし、今までの原子力政策は、本当は“危険、ダーティ、高い”にもかかわらず、“安全、クリーン、安い”とウソの情報を、電通を通じてテレビコマーシャルで常時茶の間に流し続け、国民を洗脳し騙し続けた過去があるので、素直に受け入れ難い。次世代革新炉というのは、言われているように期待を持てるものだろうかと悩んでいたところに、長崎新聞に「夢の原発はありえない」という評論が掲載された。著者欄には原子力資料情報室の広報担当者のケイトリン・ストロネル氏とカナダブリティッシュコロンビア大学教授のM・V・ラマナ氏のお二人の署名があった。評論は次のように述べていた「日本政府が地球温暖化対策の一環として、新しい安全機構を取り入れた次世代革新炉の開発推進を盛り込んだ基本方針を決定した。これは本当に成功するのか。より安く、より安全だという夢のような原子力発電は可能なのか。答えは否だ。原子力発電には、高コスト、事故のリスク、核拡散への懸念、有害な放射性廃棄物の生成という少なくとも四つの未解決の問題がある。企業にとって、最も重要な課題は経済性だ。原子力発電は、他の低炭素代替エネルギーに比べてはるかに高価な発電方法だ。米国の調査では、新規原発の電力のコストは1 MW 当たり131ドル〜204ドルになると推定している。一方新たに建設される商用の太陽光発電所や風力発電所のコストは26〜50ドル程度だ。原発のコストが安全対策費用がかさむ事によって上昇傾向にあるのに対して太陽光や風力発電は急速にコストが下がっておりこの傾向は今後も続くことが予想される。コストの問題が従来の原子炉より小型化した新型原子炉(SMR)によって解決されることはない。また、小型化した新型原子炉(SMR)を含むすべての原子炉は高レベルの放射性物質が高温、高圧の環境下に置かれているという特性を持っており、これに起因する事故が発生し、広範囲の放射能汚染につながる危険はSMRも同様に懸念される。しかも放射能廃棄物の問題は今なお未解決である。原子力発電の基本的問題は、原子炉の小型化では解決しない。安全で安価だというこれまでと同じ約束をしたところで、国民の信頼は回復しないだろう」と結ばれていた。

この評論を読んで数値に基づく具体的な説明は説得力があり、私は、この評論を信じたいと思った。同時に、政府は懲りずにまた国民を騙そうとしているのだと思った。政府の言うことは何も信用できない。政府の言うことは、まず疑ってかかることから始める必要があると改めて思う。別の信用度の高い記事では世界エネルギー需給予測において、2050年には大多数の国が再生可能エネルギー(太陽光発電風力発電など自然エネルギー)によって100%エネルギーをまかなうと予測している。再生可能エネルギーは無限でしかも原材料費がいらないから各国とも熱心にその方向を目指している。地球上のウランは少なく、とても原発は夢の電力になりえないと言われているのだから、再生可能エネルギーへ全力を注いでほしいと思うが、これからも原発に何兆円も投資していくようだ。このまま行くと、2050年に日本は大多数の国に入れそうにない。エネルギー分野でもいよいよ落ちこぼれの後進国になりそうだ。その場しのぎの利権政治に明け暮れる現政権では未来の明るい姿を描けないばかりか、没落する姿しか浮かんでこない。早く政権交代を目指さねばと思う。