良い天気が続いている。今日は朝から川原大池公園を散策しようと思い立ち、やってきた。川原大池は広さ13ヘクタール、周囲約1.9キロメートル最大水深約9メートルの長崎県内最大の天然の淡水湖で、野鳥や淡水魚が多く生息している湖である。また、公園内には川原海水浴場やキャンプ場が整備されている。今日はこの大池の周りをひさしぶりに散策することにした。
駐車場であるS地点に車を停めて、歩き始める。大池一帯はシダ植物を始め貴重な植物が多く「川原大池樹林」として長崎県指定の天然記念物に指定されている場所である。小さな舗装道路をどんどん進んむと薄暗くなっていきトトロの森に入っていくようなな感じである。トトロに会えるような期待を抱かせる森である。
遠目に、木株に何か鳥が止まっているのを見つけた。フクロウみたいだ。しかも2羽もいると思い、音を立てずに接近していく。いや、フクロウは夜行性なのに、こんな明るい時間帯に、よく見える木株に昼間から止まっているのはおかしい?と思いさらに接近すると案の定置物であった。トトロの森を演出するために誰かが置いたのかなと思う。
川原大池のモニュメントがある場所へ来た。モニュメントは着物姿の女性と大蛇が描かれている。案内文には「平安中期、この地の領主が楠の大樹を使って船を作り海岸まで引き出そうとするが船は全く動かない。占いを立てると、領主の娘・阿池姫(おち姫)を乗せると人力なしで船は動くと言われ、早速、阿池姫を乗せたところ船は動き出したが、空は一変、大暴風が起こり一里四方の地面が沈み大池となり、阿池姫は船もろとも跡形もなく消えてしまった。その後、大池の周囲は妖気が漂い人が寄り付けなくなった。領主は熊野から修験者を招き祈祷を行ったところ、大蛇が現れ、ひとたび池に潜り再び現れると美しい女性となり、「私は文殊菩薩です。私を川原権現として崇めればこの地の守護神にとなりましょう」と言った。このため修験者はこの地に権現堂を建て自ら文殊菩薩を刻んで安置した。それが現在の「池の御前神社」であると記されている。神社には大池に現れた龍が祀られ、今なお「阿池姫伝説」として語り継がれている。湖面を見ると対岸に聳える寺岳(452m)」が逆さ寺岳をみせている。
池の周りはウッドデッキの遊歩道が整備されているので歩きやすい。今日は晴天で日差しは強いが日影に入ると涼しい。このような日は歩くことが楽しくなる。散歩中の人とすれ違うことも滅多にない。少し淋しい気もするが今はしかたない。
睡蓮が咲き誇っている場所に来た。一面スイレンの白い花が咲いている。睡蓮と蓮(ハス)の違いは花の咲き方で区別すると、昔習ったことがある。睡蓮は水面に浮かぶように花を咲かせるが、蓮は水面から茎を伸ばして花を咲かせるというものだった。しかし、よく見ると、水面に浮かぶように咲いているのも、茎を伸ばして咲いているのもある。多分、これは蓮ではなく睡蓮と思うが区別はよくわからない。
池の御前神社に到着。海岸から本殿までの間に鳥居が建っている。一番古い鳥居は弘化二年という文字がかろうじて読める。弘化二年は1846年であるから175年前に建てられた鳥居である。神社の横に紀念碑があった。紀念碑の案内には「この地の浜は、蛇紋岩の礫だけからなる日本でも珍しい貴重な浜である。昔、この蛇紋岩を装飾などに使うため乱獲が行われるようになった。初代村長はその事を憂慮して、貴重な自然を後世に残すべきと意を決して運動を起こし、国有地の払い下げを実現した。このことは郷土愛にかけた執念の勝利であるとして初代村長の足跡を称えた顕彰碑であった。
湖の景色を楽しみながら歩いていたら、対岸の緑の中から何か白いものが飛び立ったように見えた。目をやると、大きな鳥がつがいで湖の上を飛んでいる。サギの種類だと思うが詳しいことはわからない。湖の上を低空で2度旋回して、その後、海の方に仲良く飛び去った。サギという名前はその羽根が白いことから「さやけき(鮮明)」の意味でサギと呼ばれたという説がある。白い姿を見るとなるほどと納得する。
今日もいろんな花を楽しんだ。紫陽花は今が盛りである。またヒメジョオンとハルジオンはいつも迷うが、これはヒメジョオンと思った。オシロイバナの鮮やかな赤はいつも目を惹く。
大池のまわりを歩きながら考えた。阿池姫伝説の阿池姫が文殊菩薩となりこの地を守護していること、初代村長が美しい自然を後世に残すために国有地の村への払い下げ運動を何年間も続けて実現したこと、多くの人の願いや希望が積み重なって現在がある事をありがたく思う。