ばってん爺じのブログ

年を重ねても、尚好奇心旺盛な長崎の爺じの雑感日記。長崎の話題を始め、見た事、感じた事、感動した事などを発信。ばってん爺じのばってんはバツイチではなく長崎の方言

「コロナ禍の東京五輪を問う」を読む

長崎新聞に「コロナ禍の東京五輪を問う」とう識者の意見が掲載された。意見を述べた方は埼玉大学名誉教授の暉峻淑子氏と作家の早乙女勝元氏である。

暉峻先生は次のように語っている『あまりに多くの問題が噴出しているのに、東京五輪パラリンピックがズルズルと強行されようとしている。納得のいく説明もなく「希望や夢を与える」という精神論で突き進む重苦しさは76年前、敗戦に至った戦争末期の空気そのものだ。そして、この後に全ての国民を待ち受けているのは、国策の失敗の途方もないツケである。このことは無関心ではいられても、誰も無関係ではいられない。
今も常識で考えれば、東京五輪・パラ開催は無謀だと分かっていながら、反対の声は、「開催ありき」の首相を翻意させる力にはなっていない。


東京大会の決定は2013年秋であった。東日本大震災原発事故から3年足らず。「五輪をやる場合か」という懐疑論を尻目に国策は動き出した。問題が次々と吹き出した。国立競技場の建て替え計画は、総工費が当初の1300億円から倍近くに膨らんだことでいったん白紙になった。大会公式エンブレムの選考過程の閉鎖性、五輪・パラの招致不正疑惑、組織委員会トップの女性蔑視発言などなど・・。さらに当初7400億円と見積もられた開催経費は、1兆6440億円になった。関連経費を含む総コストは3兆円とも言われている。積算の根拠を求められても納得できる説明はなされない。どの問題からも、この国の民主主義の貧しさが浮かび上がる。

政治の責任は重大だ。新型コロナウイルス感染拡大で、神風が吹くのを待つようにワクチン開発を当てにした開催1年延期も含め、経過の全てを冷徹に検証すべきだ。五輪の後、少子高齢化が加速する日本社会に残るのは途方もない借金だ。将来にわたり社会保障制度などあらゆる生活基盤への影響は計り知れない。代償は赤ん坊から高齢者まで払わざるを得ない。なし崩し的な開催を結果的に許したのは、私たち国民自身ではなかったか。推進の政治家を選び湯水のように血税を注ぎ込む政策に、無関心ではなかったか。国民は「被害者」だけではいられず、次世代に我慢と犠牲を強いる「加害者」でもあるのだ。必要なのは76年前の「一億総ざんげ」のような、責任の所在をうやむやにする「反省」ではない。終わったら水に流すのは、今度こそ終わりにしたい。』

 

早乙女勝元氏は次のように述べている。「東京五輪はさまざまな問題を抱えながら強行されている。今回の東京五輪パラリンピックは当初、復興五輪と言われたが、今は東日本大震災の話題は一切出てこない。日本人は忘れるのが上手い。誰も責任を取らないし偉い人ほど責任を逃れる術を知っている。だから、この東京五輪も誰かが強い意志をもって記録しなければいけない。スポーツの結果だけでなく、五輪をめぐる一連の動きを記録として残す必要がある。開催しておしまいではなく、記録を残し様々な視点で検証していかなければいけない。我々市民が常に心に留めておかないといけないことは決して忘れないということだ。そして決して黙らないということだ。それ以外に社会人としての使命は果たせない。」


そのような意見がある中、東京五輪を推進した安倍晋三前首相は発売中の「月刊Hanada」(8月号)の桜井よしこ氏との対談の中で、コロナ禍での五輪開催に反対する声があることについて以下のように語っている。
<極めて政治的な意図を感じざるを得ませんね。彼らは、日本でオリンピックが成功することに不快感を持っているのではないか。共産党に代表されるように、歴史認識などにおいても一部から反日的ではないかと批判されている人たちが、今回の開催に強く反対しています>と述べている。

また、麻生太郎副総理兼財務相は5日、東京都内で開かれた自民党衆院議員の政治資金パーティーで講演して、新型コロナウイルス感染を巡り「コロナで全員、死に絶えるようなあおった新聞記事も拝見するが、日本の場合10万人当たり12、13人亡くなっている。人口比では、先進国の中で最もうまくいっていると述べ、日本政府の対応に大きな不備はなく、感染による死者は少ないとの見方を示した。また コロナ禍の東京五輪パラリンピックに関し「巨大な祭典なので気分も変わる」と述べたと報道されている。

今夏の開催に反対する声が根強いのは、現状で強行すればコロナ感染再拡大や医療崩壊のリスクがあるからである。安倍氏は、世論調査で中止や延期を求める6~7割の人を反日的だというのだが、決してイデオロギー的な対立はない。懸念を宮内庁長官が代弁した天皇反日的というのだろうか?また、麻生元首相は死者数が少ないから東京五輪を開催しても大丈夫と言っているようだが、東京五輪を開催してもコロナ感染拡大は心配ないと断言できるのだろうか?


どうしても東京五輪を推し進めたいのだろう、医療関係者がパンデミックの中でのオリンピック開催は普通ではないと進言しているのに麻生元首相、安倍前首相、菅首相等は強力なタッグを組んで推進している。

暉峻先生が言われているように、ここまで来たら、東京五輪パラリンピックについては、私たち国民は「被害者」だけではいられず、次世代に我慢と犠牲を強いる「加害者」にならざるを得ないようだ。東京五輪の後に残る途方もない借金を次世代に残したのは、現在に生きる国民である私たちであることをしっかり認識しなければならない。五輪推進の政治家を選び湯水のように血税を注ぎ込む政策を許したのは、私たちの政治への無関心であったことを認識しなければならない。

そして早乙女勝元氏が言われるように、このことを決して忘れないようにしなければと思う。