ばってん爺じのブログ

年を重ねても、尚好奇心旺盛な長崎の爺じの雑感日記。長崎の話題を始め、見た事、感じた事、感動した事などを発信。ばってん爺じのばってんはバツイチではなく長崎の方言

米国務省、日本の技能実習制度を問題視

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『米国務省は7月1日、世界各国の人身売買に関する2021年版の報告書を発表した。日本については、「日本の外国人技能実習制度」を国内外の業者が、外国人労働者搾取のために悪用し続けているとして問題視した。政府の取り組みは最低基準を満たしていないとして4段階評価で上から2番目のランクに据え置いた。さらに報告書では、「日本の外国人技能実習制度」は強制労働による人権侵害の温床となっているとの見方を示し、政府当局の監視強化などが必要だと明記している。人身売買が軽微な処分で済まされ、「十分な抑止力になっていない」と指摘し、「政府に被害者を把握して保護するという政治的意思が引き続き欠けている」として厳罰化も求めている。加藤勝信官房長官は2日の記者会見で「米国の国内法の基準に照らし独自に作成されたものだ。政府として意見は述べない」と語った。』という記事を長崎新聞で見た。

外国人技能実習制度は主に開発途上国の労働者を一定期間日本で受け入れ技術や知識を学んでもらい本国の発展に活かしてもらうことを目的として、1993年に制度化されたものである。

技能実習制度を推進する国際研修協力機構 (JITCO) のホームページには、「この制度は、技能実習生へ技能等の移転を図り、その国の経済発展を担う人材育成を目的としたもので、わが国の国際協力・国際貢献の重要な役を担っている」と書かれているが、実際には日本の労働力不足を補うための制度と言われたり、また多くの技能実習生が単純労働部門で働き、人権侵害にさらされる事例もあるなど、これまでに技能実習制度の「技術移転」・「国際協力」という建前が有名無実化してるケースが多々指摘されている。

 

法務省の発表によると、外国人技能実習生の受け入れ人数は年々拡大しており、2018年では約28万5千人にもなっている。国籍別でみるとベトナムがもっとも多く、約13万4千人。次いで中国約7万5千人、フィリピン約2万9千人、インドネシア約2万3千人となっている。

外国人技能実習制度における問題点として、指摘されることが多いのが「賃金」と「労働時間」である。

技能実習生は、2ヶ月間の講習が終了すると、受入先に雇用される労働者となるので、日本の労働関係法令が適用される。そのため技能実習制度においても、賃金は最低賃金以上、労働時間も原則として1日8時間、週40時間までとなっている。時間外労働や深夜勤務、休日勤務にはもちろん割増賃金が支払われなければならない。ところが実際にはこれらが守られない事態が頻発しており、実習先によるタイムカードや勤務記録の改ざんという、悪質なケースも報告されている。

 

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巣内尚子氏が書いた「奴隷労働」という著書には、ベトナム人技能実習生のさまざまな実態が書かれていた。
例1. 縫製業に勤務したCさん
研修期間が終わると、その後は朝8時から翌日の午前3時までミシンの前に座り続けることが常態化していった。午前8時に仕事を開始し、正午から午後1時までお昼休憩。その後は、午後1時から午後5時まで働き、午後5時から午後6時に夕食をとる。食事が済めば、今後はそのまま午前3時まで仕事が続く。つまり休憩時間を抜くと1日17時間も働いたことになる。休みは月に多くて4日、少ないと3日しかなかった。

午前3時までの長時間労働と、少ない休み。清潔とは言い難い宿舎での共同生活。寒い冬でも簡易シャワーを使うことが求められる暮らし。それがCさん達の職場では日常化していた。また、Cさんは実習先企業から時給が698円だと説明を受けた。これは C さんの会社が立地する都道府県の当時の最低賃金とほぼ同水準であった。給与から家賃と電気代として計32000円が引かれた後、手取りは月に8〜9万円ほどにしかならない。長時間の残業分の賃金が計上されていない。あれだけ働いてなぜこの金額になるのか、Cさん達はおかしいと思ったが会社からの十分な説明はない。タイムカードは工場の中にあったものの、Cさん達技能実習生はそのタイムカードを自ら押すことはできず、管理者が技能実習生の代わりにタイムカード押し、カードを管理していた 。C さんはノートに就労時間の記録をつけていた。自ら記録をつけない限り、正しい労働時間を記録するものはなかった。

 

例2. 建設業に勤務したAさん
2015年に日本にやってきた A さんは研修を受けた後、福島県内の建設会社で働くことになった。その中で A さん達技能実習生は仕事の内容を知らされないままに放射性物質を含む土などを除去する除染労働をさせられていた。
除染作業に先立つ安全教育などは何も行われなかった。Aさん達は十分な説明と同意なく除染作業に従事させられたことにショックを受け、とりわけ健康被害の不安を強く抱いた。除染労働をしつつも、Aさんの技能実習生としての賃金は基本給が13万円にとどまっていた。ここから寮費として月に1万5000円そして税金や社会保険料などが引かれて、手取りは8〜9万円だけであった。さらに食費として月2万円、雑費が1万合わせて3万円の生活費を引かれ、手元に残るの5万円だけであった。

 

「建設会社にとって除染作業者の確保は容易ではない。そのため日本人作業者の1/3程度、日給5000円台で働く労働者はありがたい存在に違いないでしょう。しかし、一体誰が技能実習生の健康不安に責任を負うのですか。除染の作業現場の空間線量が比較的低レベルであったとしても、汚染土の体への付着や粉じんを吸入する可能性が皆無である保証はありません。除染や原発廃炉のための作業は社会にとって必要な労働です。でも、その労働は安全基準と労働基準が確実に担保された条件のもとで行われるべきで、技能実習生を使い捨てるような方法であってはならないものです。会社と監理団体の責任は当然ですが、技能実習制度を「技能習得」「国際貢献」の建前から大きく埀離させ、事態を放置させてきた政治の責任は重大と言わなければならないのです」と技能実習生を支援する団体の関係者は語っている。

 

今から2年前、巣内尚子氏の「奴隷労働」は2019年3月に上梓された。この中で、「低賃金の奴隷労働」「契約書と異なる賃金や暴力」「途上国への国際貢献を偽装した労働者搾取」「裏切られた憧れのニッポン行き」など技能実習制度のさまざまな絶望労働が語られていた。しかし、今回の米国務省による日本の技能実習問題視発言は、今も、日本の技能実習制度は何ひとつ改善されていないことを示しているようだ。

日本に好印象を持って来日した多くの外国の若者が対日感情を悪化させて帰国する制度が技能実習制度である。このような恥ずかしい制度は直ぐに改めてもらいたい。