ばってん爺じのブログ

年を重ねても、尚好奇心旺盛な長崎の爺じの雑感日記。長崎の話題を始め、見た事、感じた事、感動した事などを発信。ばってん爺じのばってんはバツイチではなく長崎の方言

「日本が売られる」を読む その3

堤 未果さんの「日本が売られる」を読み直している。この本は、堤さんが2018年10月に上梓したものである。この本は、国際ビジネスにおける日本の危機の警告書である。私は、2020年10月に初めてこの本を読みショックを受けて、ブログに感想を書いた。そしてさらに2年が経過した今、堤さんの警告書を元に日本の現状を見詰めた。読み直して、日本は嘘まみれの安倍政権を継承する政治が続く限り没落は避けられないと思った。

この本の冒頭、堤さんとアメリカ人の友人との会話が記されている。アメリカ人の友人はイラク戦争からの帰還兵である。「戦場では、敵がどこに潜んでいるかわからないから、油断すると命とりになる。自分の周りが静かだから、平和だろうと思い込むのが、最も危険な状態だ。木ばかり見ていると森は見えない。遠くのわかりやすい敵に気を取られて、近くにいる一番危険な敵を見落とせば、気づいた時には全方位囲まれて、あっという間にやられてしまう」とそのアメリカの友人が戦争体験を堤さんに話す。

続いて「日本には前から行きたかったんだ。水と安全はタダと言われる国で、どこへ行っても安全で美味しい食べ物があるなんて最高だ。日本人は礼儀正しくて、災害の時でも略奪しないで行儀よく列に並ぶ姿をネットで見た時は、本当に衝撃的だった。俺の友人にも、日本に住みたいってやつがたくさんいるよ」と話す。堤さんが問う。「アメリカより日本に住む方が、安心して暮らせると思うの?」「そう、アメリカでは保育も介護も学校も病院も、今じゃまともに暮らすための公共サービスが全部企業に売られて贅沢品になっているから生きづらい。売国政府が俺たち国民の生活に値札を付けて、ウォール街と企業に売りまくっているから、裕福でないとまともな生活ができない」と語っていた。

その会話を通して、堤さんは次のように語っている。「アメリカの友人の言う売国とは、『自国民の生活の基礎を解体し、多国籍企業に売り払うこと』を指している。それは例えば、自国民の命や安全や暮らしに関わる、水道、農地、種子、警察、消防、物流、教育、福祉、医療、土地などの公共財産や公共の福祉にかかわるモノやサービスを、安定供給する責任を放棄して、市場を開放し、外国人にビジネスとして差し出すことである。現在、国際社会の金融市場においては、あらゆるものが国境を超えた投資商品になっている。エネルギー、温暖化ガス排出権、国家の破産、食料、水などが投機の対象になっている。多国籍企業群は民間商品だけでなく公共財産にも触手を伸ばし、その国の土地や水道、空港に鉄道、森林や学校、病院、刑務所、福祉施設に老人ホームなどがオークションにかけられ、最高値で落札した企業の手に落ちるようになった。それによって、多国籍企業は税金を使いながら利益を吸い上げ、トラブルがあったら、責任は自治体に負わせて速やかに国外に撤退する。水源の枯渇や土壌汚染、ハゲ山や住民の健康被害や教育難民、技術の流出や労働者の賃金低下など、本来企業が支払うべき社会的コストは納税者に押し付けられることになる。それが全世界でおこなわれているのである。

日本においても、時の政府によって、売国政策が行われてきた。2013年1月、安倍元首相は第183回国会施政方針演説において次のように述べた「『世界で一番企業が活躍しやすい国』を目指します。聖域なき規制改革を進めます。企業活動を妨げる障害を、一つひとつ解消していきます。これが、新たな『規制改革会議』の使命です」と語っていた。この部分だけを聞けば売国を意味するとは思えないが、10年後の今日までの経過を見たらこの意図が何であったかかがわかって売国奴を首相に持ったことを最悪と思う。

さらに堤さんの本の中には、当時の麻生太郎副総理の言動も掲載されている。2013年4月、当時の麻生太郎副総理は米国ワシントンにあるシンクタンク戦略国際問題研究所」の席で、水道バーゲンセールを宣言した。「世界中ほとんどの国では、プライベートの会社が水道を運営しておられますが、日本では自治省以外では、この水道を扱うことができません。しかし水道料金の回収が99.9%というようなシステムを持っている国は、日本の水道会社以外にありません。この水道は全て国営もしくは市営、町営でできていて、こういったもの全て民営化します」

安倍元総理が、「国家戦略特区」というドリルで次々に穴を開けてきた。教育、農業、労働、医療の分野が、すべてをマネーゲームの道具にしたアメリカからの要望だからである。そして、国家戦略特区諮問会議は、「公的に運営されているもので、利用料金を取るものについてはすべて民営化しましょう」という政府の意向に沿った提言をしている。

堤さんは述べている。わたしたちは慎重に考えるべきだ。多国籍企業が君臨するアメリカでは国民が疲弊して喘いでいる。アメリカのリアルな現実を検証すべきだろうと堤さんは述べている。アメリカではあらゆる公共サービスが企業に売られている。教育もそうだ。アメリカではスクールは7年間で投資額が2倍になる人気投資商品らしい。企業は利益を上げるために教員を全て非正規雇用にし、人件費を下げて教師を減らす。当然、そのしわよせは子供にいく。優秀な成績を残すために学生の選別をして公教育が崩壊する事態になっている。日本では国家戦略特区として大阪ですでに始まっていて、教育の民営化のモデルを全国に普及する計画を考えているようだ。

「遠くのわかりやすい敵に気を取られて、近くにいる一番危険な敵を見落とせば、気づいた時には全方位囲まれて、あっという間にやられてしまう」という帰還兵の話があった。今、ウクライナ戦争や北朝鮮のミサイル発射などのわかりやすい敵に目を奪われて、すぐ近くで息を潜めながら大切なものを奪っていく別のものの存在を、見落としているのではないか。次々に売られてゆく大切なものは、絶え間なく届けられる派手なニュースにかき消され、流れていく日常に埋もれ、見えなくなってしまっていると書かれてあった。確かに、国民の目を騙し、国民の目を逸らしておいて売国はどんどん進められようとしている。東京オリンピック汚職統一教会問題、そして売国問題全て根は同じである。「今だけカネだけ自分だけ」の政治家が闊歩している日本の政治を変えなければならないと強く思う。