ばってん爺じのブログ

年を重ねても、尚好奇心旺盛な長崎の爺じの雑感日記。長崎の話題を始め、見た事、感じた事、感動した事などを発信。ばってん爺じのばってんはバツイチではなく長崎の方言

教育におけるアドラー心理学

先日、大村市で講習を受講した。その講習では毎回、ゲスト講師が招かれ専門分野の話を初心者向けに2時間易しく話をする項目がプログラムに組み込まれている。私はいつもその専門家の話を聞くのを楽しみにしている。今回のゲスト講師は長崎大学の加来秀俊教授による「教育におけるアドラー心理学」という話であった。心理学という分野に関心はあってもほとんど知識のない分野であり興味深く拝聴した。

アドラー心理学というのは最近、日本で注目を集めているいまも発展途上にある学問らしい。そのような注目を集めている心理学について心理学の歴史を時代背景も絡めて話をされた。退屈することのない興味を惹かれる話であった。

先生の話によると「精神医学の三大巨頭は、フロイトユングアドラーである。三人はオーストリアのウイーンに住み、フロイトが15歳ほど年長であるが3人ともほぼ同年代に生きて、3人は共同して研究をしたこともあった。そのような共同研究を元に、心理学という分野においてそれぞれが独自の道を切り拓き、アドラーアドラー心理学というものを確立していったようだ。

一番年長のフロイトは、1856年オーストリアで生まれたユダヤ人である。ウイーン大学医学部を卒業して大学の研究者を目指したが、ナチスの台頭により、ユダヤ人である君はどんなに優秀な業績を上げても大学の教授にはなれないということを言われ、大学教授への道を断念して開業医になった。この開業医になったことがフロイトが大きな業績を生み出すきっかけとなった。フロイトは開業医として多くの患者を診ているうちに、病気というものは、身体的器官が損傷することによって起こる、つまり耳が聞こえないときは耳の器官に異常が起こって聞こえない。足が動かないときは、足の機能に異常が起こっているから動かないと考えられていた時代に、心によって、病気が起こることもあることを発見した。

フロイトはたくさんの患者を診ていく中で、その事実に気づいて研究を進めた。人間関係において「私は、あなたの話を聞きたくありません。」と主張する患者は、耳の器官に異常がないのに耳が聞こえない。また「あなたと一緒に行きたくありません」ということを主張する患者は運動機能に異常がないのに足が動かないなどの多くの事例から無意識によって病気が起こることを発見した。

フロイトは研究を進め、刺激の言葉を患者に投げかけ、それを受けた患者が次から次に連想する言葉を言っていくうちに、問題に触れる言葉を発すると次の言葉が出てこない、または突飛な発言や行動につながることを発見した。そのことから自由連想法という治療法を確立した。
人間は心が原因で病気が起こるという心の役割を発見したのがフロイトである。ユングアゴラーは先輩であるフロイトの研究に関心を寄せ意見を交わし、一緒に研究したこともあったが、フロイトの病気の根本を性に結びつける理論に対する意見の違いなどから、その後は独自の道をそれぞれ歩むことになる。

アドラーは1870年オーストリアにのウイーンに生まれ自身が病弱だったことから医師を目指しウイーン大学医学部に入学。卒業後は開業医として活躍しながらフロイトの研究に参加したことが精神分析に関わりを持つことになった。

アドラー心理学と教育
アドラー心理学はアルフレッドアドラーが打ち立て後継者たちが発展させ続けている心理学である
アドラー心理学は民主的な教育観に乗っている心理学である
アドラー心理学は過去の原因探しをしない心理学である
アドラー心理学は勇気づけの心理学である
アドラー心理学は共同体感覚の育成を目指す心理学である

フロイトの心理学では、患者の現在の症状は過去に受けた精神的原因から発生したもので、その原因は意識の下の無意識界の中に潜み本人でも気づかない心の傷になっている場合も多い。だから、心理学は無意識界の中に潜むその心の傷である原因を探り治療していく方法を確立することが求められた。アドラー心理学では人間の心を意識界、無意識界、超自我界などに分類できない、個々の人間を身体と意識と分けられないと考える。アドラー心理学は、フロイト心理学みたいに内面を分解しないで、個人を一つの分解できない全体として捉えるため個人心理学と呼ばれている。アドラー心理学ではカウンセラーが患者の話を聞いて治療をする。アドラー心理学では過去の原因探しはしない。アドラー心理学は基本は指示するカウンセラーではなく、相談者が自分の考えを整理するカウンセリングである。「人間は目的を持って行動する。過去と他人は変えることはできない。しかし、未来と自分は変えることができる」という視点に立って、カウンセリングは行われる。
アドラー心理学が教育界で多用されてきている理由がわかる気がする。

アドラー心理学のカウンセリングでは叱るな褒めるなという鉄則があるようだ。教育界では褒めて育てるという手法が人気を博した時期があったが、その手法は今では必ずしもいい評価を受けないようだ。

人を育てる教育という分野に心理学がどのように応用されているかという話であった。学問の進歩に伴い世の中は常に変わっているのだということが実感できた。専門家の話を聞くのは楽しい。