ばってん爺じのブログ

年を重ねても、尚好奇心旺盛な長崎の爺じの雑感日記。長崎の話題を始め、見た事、感じた事、感動した事などを発信。ばってん爺じのばってんはバツイチではなく長崎の方言

「堤未果のショック・ドクトリン」を読む

 堤未果さんの著書「堤未果ショック・ドクトリン」を読んだ。

 著書の中で、世界で起こった大惨事などを千載一遇のチャンスとして過激な政策が一気に推し進められている実態が数々述べられていた。そして、それは他国の話だと思っていたが、実は、我が国においても同じように進められていることを知って驚いた。
著書の一部を記す。
 「ショック・ドクトリンとは、テロや戦争、クーデターに自然災害、パンデミック金融危機、食料不足に気候変動など、ショッキングな事件が起きたとき、国民がパニックで思考停止している隙に、通常なら炎上するような新自由主義政策(規制緩和、民営化、社会保障切り捨てなど)を猛スピードで ねじ込んで、国や国民の大事な資産を合法的に略奪し、政府とお友達企業群が大儲けする手法である 。

 国家が強いショックで思考停止している間に、理想の経済システムに入れ替えて自由に好きなだけ利益を得るというショック・ドクトリン(規制緩和・民営化・社会保障の切り捨て)の経済学説は“新自由主義”としてシカゴ大学経済学部のフリードマン教授らによって唱えられていた。(現在、フリードマン教授に学んだフリードマン・チルドレンが日本にも数多く存在する)  
 ショック・ドクトリンという新自由主義経済政策が世界で初めて導入されたのは南米チリである。フリードマン教授に学んだフリードマン・チルドレンが、軍事クーデターを画策し、新政権を樹立して、あとはショック・ドクトリンのマニュアルに沿って、反対する国民を片っ端から公開で拷問し、国中がショックで震え上がったところで、一気に新自由主義政策を導入していった。

 チリでは、外資が参入できるよう、それまで保護されていた国内市場をワイドに開放し、安い 輸入品がどっと流れ込み、国内産業が次々に倒されていった。医療と教育の予算は大幅に削られ、公立学校から教師が追い出され、バウチャー性に変えられたことで、民間経営の学校が増やされていった。学校給食はコストカットでメニューが貧相になり、幼稚園やお墓まで、まさに徹底した民営化祭りが繰り広げられた。食料価格や電気・水道・ガスなどの公共料金は上限が外されて高騰し、ロケット級に上昇したインフレ率は375%まで到達した。反発する市民は速やかに逮捕され拷問され、恐怖をしっかり植え付けられた。そして、さらに重要なことは、国民が正気に戻る前に、ボロボロになった国営インフラや国内企業を、外資のハゲタカたちがそれらを最安値で根こそぎ 手に入れてしまった。フリードマン教授や銀行家、多国籍企業、投資家たちにとって、チリでの実験は大成功であった。
ショック・ドクトリンの5大スッテプはここチリで確立した。
①ショックを起こす、②政府とマスコミが恐怖を煽る、③国民がパニックで思考を停止する、④シカゴ学派の息のかかった政府が、過激な新自由主義政策を導入する、⑤多国籍企業外資の投資家たちが、国と国民の資産を略奪する

 チリでの実験の後、フリードマン教授のこの「強欲略奪バイブル」は、ブラジル、アルゼンチンから始まって、アフリカ、中東、イギリス、アメリカ、タイ、韓国 、インドネシア、ロシア、中国にまで導入され、まるで獲物を探して大陸から大陸へと世界中を駆け巡る凶暴なバッタの群れのように、富を食い尽くしていった。
私たちの国日本にも、特に小泉純一郎政権以降、何度も使われてきた。

 3.11の日本は、津波に加えて人類史上最悪の原発事故というダブルショックであった。まさにシカゴ学派の外国勢力から見たら、かつてない規模のビジネスチャンスが山盛りであった。例えば被災した宮城県の復興推進委員会のメンバーを見ると、政権与党で規制緩和の旗を振る大学教授や外資シンクタンク、大企業トップがずらりと顔を揃え、どう見ても復興ではなく「ショック・ドクトリン 」実行委員会であった。

 もともと村井嘉浩宮城県知事自身が竹中平蔵氏と親しい新自由主義信奉者だったこともあり、漁業や水道や空港の民営化、外国企業の誘致などのドクトリンは、障害もなくスピーディーに実行されていった 。2021年には、ついに日本で初めて、上水道、下水道、工業用水の9事業をまとめた運営権を売却した。受託した企業の51%の株式を持っていたのは、外資系水道メジャーのヴェオリア・ウォーターであった。漁業権も開放して外国企業もどんどん参入し、まさに外資にとって笑いが止まらない ショック・ドクトリン が、復興の名の下に繰り広げられた。

 水や海という、国民の命や環境、国の安全保障に関わる最重要分野を手に入れることは、その国の生存権を握ることと同じである。ショック・ドクトリンのもう一つの顔は、ビジネスを通した新たな植民地政策である。私たちはそれに気つき、私たち国民の手で火事場泥棒たちのやりたい放題を阻止しなければなりません」と堤氏は語っていた。

 今や日本の政治も官僚も民間企業もショック・ドクトリン新自由主義が権勢を振るっている。新自由主義の本質は強欲資本主義で、自由に好きなだけ儲けたいと願う人たちの経済政策である。それは「今だけ、金だけ、自分だけ」の現在の自民党政治に直結である。

 ショック・ドクトリンは自由に好きなだけ儲けたいという人たちの経済学説である。ショック・ドクトリンを国家規模で遂行すると合法的に最大限の効果が期待できる。だから、ショック・ドクトリンは、政治家を巻き込んで国家規模で遂行される。ショック・ドクトリンは国家を食い物にして資本家が肥え太る政策である。ショック・ドクトリンの先には国家の成長・繁栄はなく、あるのは国家の衰退である。

 私たちは、政治家を信用しすぎていないだろうか。政治家は自分の利益のために、国を売るようなことをするはずがないと思い込んでいないだろうか。政治家は権力を持つ者である。権力を持つ者に対して、私たちはもっと厳しい目を向けなければと思った。政治家の監視は国民の義務だとこの本を読んで思った。