ばってん爺じのブログ

年を重ねても、尚好奇心旺盛な長崎の爺じの雑感日記。長崎の話題を始め、見た事、感じた事、感動した事などを発信。ばってん爺じのばってんはバツイチではなく長崎の方言

「日本解体論」を読む

日本解体論は、東京新聞社会部記者の望月衣塑子氏と政治学者の白井聡氏が政界、財界、労働界など日本のあらゆる分野において劣化し、崩壊していく日本社会の現状を明らかにしたものである。この本はここまで日本は劣化してしまっているのかということを確認する本である。テレビなど見ていると、現政権に都合の悪いことは一向に報道されないので、実際はこんな状態になっているのかと思うことが多い内容であった。日本で驚くべき劣化と腐敗が現に起こっているのにもかかわらず、それを指摘せず、それを隠蔽する人々がいたり、また、それを誤魔化すために屁理屈を並べて擁護するものがいるのが、現状の日本のメディアの姿のようだ。正しい判断をするには、現実を直視して何が問題であるかを知る必要がある。現実を直視せず、現実の問題点を知らないで正しい解答は得ることはできない。その意味では、真実を知るために有益な書であった。

さらに、いろんな問題点とともに、対米従属問題についての白井聡氏の歴史解説は参考になった。そして、対米従属体制を日本はどうすべきかが今問われていると思った。対米従属体制の歴史について、白井氏は次のように語っていた「昨年2022年は日本の近代史における一つの節目の年であった。日本の近代史が1868年の明治維新から始まったと考えると、1945年の敗戦までが77年であり、そして、昨年2022年はその敗戦から77年であった。つまり、戦前と戦後の時間の長さが等しくなった年であった。私は日本の近代史は国体の歴史であると考えます。日本の戦前の歴史は国体の成立、成長と共にこの国の発展が起こった。しかし、その発展途上で停滞が起こり軌道修正が求められたにもかかわらず、うまく軌道修正できず破滅を迎えるというl歴史を描いている。歴史には反復性があり、日本の戦後は戦前の歴史を繰り返しているように見える、ということです。戦前の国体は天皇であり、戦後の国体はアメリカです。

戦前の国体の歩みを具体的に言うと、明治維新に近代天皇制国家という国体が形作られた。封建社会だったものから日清戦争日露戦争という二つの対外戦争を経て一気に、当時の一等国である帝国主義国家にのし上がった。天皇制国家樹立に向け、天皇のもとに一致団結して明治時代は急速に発展した。次の大正時代は急速な発展や社会的統制の厳しさへの反動もあり、大正デモクラシーによる自由主義、民主主義を追求する動きが見られ、天皇制支配や社会的統制が少し緩む時代を迎えた。しかし、自由主義、民主主義が根付くまでにはいたらなかった。昭和の時代に入り、社会的な矛盾への対処がファシズム全体主義体制となっていった。つまり、極端な軍国主義に傾斜して、破滅的な戦争、泥沼の戦争へ踏み込んでいき、最終的には敗戦を迎え、天皇制国家は破滅した。それが戦前の国体の歩みである。

戦後、連合国軍に降伏した日本は、アメリカによって占領され、天皇制国家は廃止された。天皇制国家という国体が廃止されたあと、権力や社会の構造的特徴である国体はその頂点が天皇からアメリカにすり替わって、新しい国体となった。つまり、戦前の国体は、天皇が頂点にいて、天皇中心であったけれども、戦後は、アメリカを頂点とするアメリカ中心の国体になった。戦後の初期は60年代の安全保障条約に関する混乱を乗り越え、日米の支配層はその動揺を乗り切って、日本を属国化する対米従属体制の国体を確立していった。さらに東西対決の冷戦時代を迎え、アメリカにとって、日本はアジアにおける防波堤や不沈空母の役目を果たすことで、軽武装、経済優先の政策を進めることができた。その結果として、1945年に焼け野原から出発して、1970年頃には高度成長を経て経済大国にまでなった。そして1980年代に“ジャパン・アズ・ナンバーワン”.と言われる時代を迎えた。そのとき、蓄えた力を使って、対米従属体制である属国的な位置付けから抜け出る交渉をすべきだったが、取り組まなかった。そして東西対決が終わった1990年代以降は日米関係は根本的に変わった。アメリカは日本を庇護する理由がなくなり、庇護の対象から今度は収奪の対象へと位置付けが変わった。だから、日本としても、現在のアメリカ中心の対米従属体制としての国体を根本的に再考、再設定しなければならない状況になったにもかかわらず、再考することはせず、むしろますます、対米従属体制が強化されていった。これが90年代から今日までの政治状況である」と語っていた。

様々な問題が日本にはある。その中でも、対米従属体制について、今のままでいいのかどうか、国民に全てを明らかにして判断すべきだと思う。この問題を解決しないと、日本は、いずれアメリカの代理として戦争をやらされるように思う。この問題はもはや避けられない問題であり、日本人として逃げられない問題であると思う。