ばってん爺じのブログ

年を重ねても、尚好奇心旺盛な長崎の爺じの雑感日記。長崎の話題を始め、見た事、感じた事、感動した事などを発信。ばってん爺じのばってんはバツイチではなく長崎の方言

「老記者の伝言」を読む その1

むのたけじさんの聞き書き「老記者の伝言 日本で100年生きてきて」を読んだ。聞き手は朝日新聞記者の木瀬公ニ氏である。この本は、2009年1月むのたけじさんが94歳の時に始まり、2015年100歳まで続いた聞き書きをまとめたものである。そして、むのたけじさんは2016年8月に101歳でお亡くなりになった。

「老記者の伝言」を読んでいきながら、むのさんが発する一つ一つの言葉に重みを感じた。それはどれだけ性根が座っている言葉か、揺るぎない信念に満ちている言葉であるか、言葉の中に魂が宿っていると思えた。それに反して、日本の政治家の話す言葉がいかに軽いものか、中身のないものか、嘘偽りの多いことか、考えると悲しいくらいである。そのような軽い言葉しか話せない人間に政治を任せることの危険性を今更ながら思う。このような言葉の軽い人間に日本国の未来を託している愚かさを今更ながら思う。

1945年(昭和20年)8月15日。むのたけじさんは「負け戦を勝ち戦と書き、戦争遂行の手助けをした責任を取る」と朝日新聞記者を辞めた。以来、戦争絶滅に生命をかけてきた方である。戦争とは何かということをこの「老記者の伝言」の中でも語っている。その中で私が気になったことを次に記す。
「戦後70年という言葉に接すると、もうそうなったかと時の歩みに感慨を覚える。と同時に、日本がやってきた戦後処理を思い、日本のそれが70年たった今もぶざまな姿で近隣諸国との間に軋轢を続けていることを情けなく思う。日本と違ってドイツの対応は見事でした。ヒトラーナチスがやった戦争犯罪全てをドイツ国民みんなの責任として詫びた。そして戦争で迷惑かけた諸国家、諸国民への詫びに物心両面で全力を尽くした。だから、許されて、ヨーロッパ社会に受け入れられて国際社会で見事な働きを続けている。
ドイツになぜそれができたか。私の考えでは歴史に学ぶ能力を持っていたからだ。ドイツ社会はデモクラシー、ヒューマニズム、資本主義、社会主義共産主義の成立に母の役割を果たした国だ。だから歴史が指さす道をきちんと見たのであろう。日本の政府と国民はあの敗戦時にすぐすぐやるべき事があった。満州事変以来の15年戦争の責任の所在、戦場での犯罪行為に対する裁き、そして、迷惑をかけた諸国民への詫びをきちんと自らやるべきであった。それがなぜできなかったか。まっすぐに歴史に学ぶ能力を失っていたからだ。それは何故だと今も思う。

この戦争は何だったのか。誰が何のために計画したのか。天皇陛下の命令だと聞いたが本当にそうなのか。おれらは戦争やろうなんて言ったことないけど、何でこんなおかしな生活になったのか、そういう、戦争を自らが裁く作業をやらなければならなかったのにやらなかった。命が助かったというだけでポーとなって、全然能力がなかった。

日本と同じファシズムの国で無条件降伏した国、ドイツは違った。日本国民が時の政権を支持したように、ドイツ国民もヒトラー政権が誕生した時は歓迎した。戦争が終わって、ドイツ国民は、これはナチスだけの問題ではなく民族全体の問題と受け止めて全国民で裁くことにした。ドイツを旅行すると、小さな広場に標柱があって『何年何月何日、ここに500人のユダヤ人が集められて、アウシュビッツに連れていかれたが、我々は止められなかった』と書いてある。二度とそういうことをしないぞという決意表明。そういう碑がちゃんと残されている。日本もすごいことをやってきた。女性に乱暴する。金品は略奪する。他国民を拉致して投獄して強制労働をさせる。でも戦争が終わったらみんな黙ってしまった。迷惑かけた中国や朝鮮やアジアの人たちへの一生懸命のお詫びもあまりない。本当にきちっと考えなかった。日本人は、自分たちが戦争したという意識がないからなんだろう。軍隊だから、上から言われたからやっただけと考えるからだろうか」

先日、日本経済新聞が実施した世論調査の結果をニュースで見た。その内容は以下の通りであった。
「日本が他国から攻撃される不安を感じるか」という質問では、83%が「感じる」と答えた。「感じない」という回答は14%にすぎなかった。中国を「脅威と感じる」人は89%と、前回の調査(90%)と似ていた。「北朝鮮」を脅威と感じるという回答は4ポイント上昇した87%で、今回初めて調査対象になった「ロシア」が90%となり、最も高かった」とあった。
ロシアだけでなく周りの近隣諸国に攻撃される不安を多くの日本国民が持っているという結果は、これはドイツが近隣諸国と友好な関係を築いているのと正反対であり、日本の戦後処理の間違いがそのまま現れているのではないかと思った。逆に、近隣諸国は日本から以前侵略された経験を持っているのだから、日本に対して日本以上に不安感を持っているのではないかと心配になる。さらに平和主義をかなぐり捨てて敵基地攻撃能力を持とうというのだから尚更である。

今の岸田政権、自公政権に任せていては戦争の危険が高まるばかりである。真剣に戦争絶滅に取り組む政権の樹立を目指さなければと思う