ばってん爺じのブログ

年を重ねても、尚好奇心旺盛な長崎の爺じの雑感日記。長崎の話題を始め、見た事、感じた事、感動した事などを発信。ばってん爺じのばってんはバツイチではなく長崎の方言

「高すぎる結婚というハードル」を読む

酒井順子さんのエッセイ「高すぎる結婚というハードル」を読んだ。このエッセイは岸田首相が打ち出した“異次元の少子化対策”について述べたものであった。エッセイのなかで酒井さんは次のように述べていた。「今から約25年前に、私は『少子』という本を書いた。この本は、当時、独身・子ナシの30代の自分を見つめ『なぜ、自分は子供を産まないのか』について書いたものである。少子化は、1970年代の第2次ベビーブームが終わると出世率が減少に転じ、『少子』を出版した2000年時点では、おおむね下がり続けて25年と言う状況であった。その本の中で、少子化対策が現状のままであれば、出生率はこの先も増えるわけがないと書いたが、その予測は当たり、少子化は既に50年も続く問題になっている。『少子』の中で、私は子を持たない理由の一つとして『羨ましくないから』ということを挙げた。それは、働きながら子育てする女性たちがいつも疲れ切っており、かつ夫との仲もギスギスしているのを見て、私にはとても無理と思ったことが一番の理由である。もっと『子どもを持って、いいことだなあ』と羨ましがらせてほしいとその本に書いた。

 今回、岸田首相が“異次元の少子化対策”を打ち出した。その柱になるのは①児童手当などの経済的支援の強化、②学童保育などのサービス拡充、③働き方改革の推進というニュースを見て『?』という気分になった。もちろんいずれも日本に必要な施策であるからこれらを推進することはもちろん必要であるが、これが異次元?という疑問を持った。
 日本では、子どもは結婚してからつくるべしという意識が強く存在するため、子どもが欲しいと思っても、その前に結婚という高いハードルが立ちはだかる。しかし、日本では、婚姻率の低下傾向が続いている。婚活という言葉があるように、結婚は自然に生きていればできるものでなくなり、必死に活動しなくてはできないものになった。この結婚難が少子化の一つの要因ではないかと思う。結婚という制度そのものについて考える必要がある

 フランスはかつて少子化が問題になっていた国である。そのフランスには、同性であれ異性であれ、同居のカップルが法律婚と同様の社会保障を受けることができる制度がある。1999年にこの制度を導入以降、高い出生率を回復している。当然、婚外子の比率も高く、全体の約半数が婚外子である。法律婚でなくとも、カップルも、そこに生まれた子も歓迎されるこの手の制度があれば、日本でももっと子どもを持つ人は増えると思う。日本では、婚外子というといまだに特殊な見方をされる国であり、いまだに夫婦別称すら選択できない国である。多様性が大切だとさんざん言われているが、子供の持ち方の多様性という視点が日本では抜け落ちているようだ。両親が法律婚をしていようといまいと、両親の名字が同じであろうと違っていようと、親が1人だろうと2人だろうと、全ての子どもを歓迎しますという世になれば日本も異次元に到達したということになるかもしれない。そのくらいの次元を求めない限り少子化は続く気がする」述べていた。

日本を取り巻くさまざまな負の要因の中でも、少子化は日本消滅という言葉も聞くようになった最重要課題である。

少子化問題の原因の一つは明確である。小泉・竹中時代の新自由主義の激しい加速により、結婚適齢期の若者の年収の激減、しかも不安定な非正規雇用が激増したことにより、多くの人々が結婚して家庭をもつことができなくなったことである。

年収200万程度で手取りが10万円代前半、先行き収入が増える可能性もないとなれば、異性と付き合って結婚して家族を扶養することを完全にあきらめてしまう人が多くなるのはまぎれもない現実である。また、なんとか結婚にこぎつけられた世帯でも、子どもに十分なお金をかけて育てられないとなれば、当然、子どもをもつことを諦めてしまう世帯も多くなるだろう。

さらに、岸田政権は軍事大国化を目指している動きが見られ、その先にある徴兵制の噂などを思うと子どもは作りたくないと思う人々が出てきても不思議ではない。岸田政権の元ではこんな国に生まれてもろくでもない未来しか待ち受けていないと考える若者が増えていることはまちがいなさそうである。

50年前から何ら有効な対策を打てず、今日の状況を迎えてしまった。異次元の少子化対策と仰々しく語る岸田首相に期待をしたけど中身が何もない。岸田首相は、子ども予算は思い切って倍増していかなければならないと言っていたが、最側近の木原官房副長官は子ども予算の倍増を問われて、子ども予算は子供が増えれば、それに応じて予算は増えていく。従って、出生率がV字回復して上がっていけば、割と早い時期に倍増が実現されるし、効果がなければ、いつまで経っても倍増できないと語った。出生率を向上させるためのあらゆる施策のために予算を重点配分するのではなく、明らかになったのは、子供が増える結果としての倍増という詐欺的なオチであった。いかに岸田首相が少子化対策に真剣に取り組む気がないかを表している。


酒井順子さんのエッセイを読んで、世界各国が少子化に取り組んでいることを知った。本気で少子化対策を考えるなら先進国が取り組んだ有効な対策も考えるべきだと思うし、何よりも若者が希望を持てる国を作らない限り少子化対策は効果はないと断言する。