ばってん爺じのブログ

年を重ねても、尚好奇心旺盛な長崎の爺じの雑感日記。長崎の話題を始め、見た事、感じた事、感動した事などを発信。ばってん爺じのばってんはバツイチではなく長崎の方言

「イミテーション・ゲーム」を見る

2015年に作られた「イミテーション・ゲーム」を見た。

 この映画は「人口知能の父」とも言われるイギリスの天才数学者アラン・チューリングが解読不能と言われたドイツ軍の暗号エニグマを解読する実話であった。
 1939年、イギリスがヒトラー率いるドイツに宣戦布告し、第二次世界大戦へと突入した頃、天才数学者のアラン・チューリングは、ブレッチリー・パークにある無線機器製造所で、ドイツ軍の暗号解読という最高機密の計画に参加していた。精鋭チームの前に置かれたのは、ポーランド情報部が手に入れた1台のエニグマ暗号機。イギリスは毎日数千もの通信を傍受していたが、それを解読するにはエニグマ暗号機を通す必要があった。しかしドイツ軍が0時になる度に設定を変えるため、毎日18時間以内に設定を解かなければならないのだ。しかもその設定の可能性は実に159000000000000000000通りもあった。暗号解読チームは途方もない暗号解読への挑戦に取り組んでいた。
 チームが地道に分析を行うなか、チューリングは一人、どんな暗号文も瞬時に読み解くマシン(人口知能を持った計算機)を作ろうとしていた。しかしそれには莫大な費用が掛かり、その請求は却下されたが、チューリングチャーチル首相に直訴して許可を得て、マシン造りに取り組んだ。苦心の末、マシン「クリストファー」は完成したが、猶予期間の1か月が迫っても、「クリストファー」は暗号を解読できずにいた。解読するには全設定を探索せねばならず、改良を重ねてもその時間を劇的に短縮することは出来なかった。ある日、無線を傍受している女性から、共通の言葉があることを聞いたチューリングは、通信の中で確実に使われる言葉だけを「クリストファー」に調べさせることを思いつく。それは毎朝6時に発信する天気予報だった。そこに毎回含まれる共通の言葉「天気」「ハイル」「ヒトラー」を設定し、暗号文を打ち込むと「クリストファー」はそれらを基にたちまちすべての暗号を解読していった。
 こうしてチューリングたちは暗号の解読に成功したが、それで全てが解決するわけではなかった。解読することで攻撃を予測し、防ぐことができた。しかしそれをしてしまえば、エニグマを解読したことがたちまちドイツにばれてしまう。そうなればドイツ軍は直ちにエニグマの構造を変え、チューリングたちの2年間の努力は水の泡となってしまう。多くの命を救うために少数の犠牲を黙殺せざるをえないこともあった。解読に成功してから2年間、チューリングたちの孤独で残酷な戦争は続いた。そしてイギリスは勝利し、戦争は終わった。「暗号エニグマ」を解読したことで戦争が2年縮まり、1400万人の命が助かったと推定されている。
チューリングたちはブレッチリー・パークを去る前日、上官の指示ですべての資料を燃やした。そしてここであったすべての出来事を口外しないことを命じられ、普通の生活へと戻っていった。

戦後、チューリングは天才数学者として大学教授の地位を得て、人工知能の研究に取り組んでいた。1951年チューリングの家に空き巣が入り、その捜査の過程でチューリングが同性愛者であることが発覚した。当時、同性愛は犯罪でありチューリングは同性愛者として有罪とされ、入獄するかホルモン投与の転向治療を受けるかを迫られた。ホルモン投与を選択したチューリングは1年間の強制的ホルモン投与の後、心身に変調をきたし1954年6月7日に自殺した。41歳であった。

かつて同性愛は多くの国・地域で違法または異端視されていた。世界保健機構(WHO)は同性愛を、1990年に疾病及び関連保険問題の国際統計分類(ICD)からの削除を決議するまで、病気の一種とみなしていた。それまでは、欧米では同性愛は犯罪者扱いだったり病人扱いにされてきた。(イスラム国においては今も犯罪とされる)

これまで多くの人が犯罪者や病人として不当な扱いを受けてきた。イギリスでは同性愛のホルモン治療を命じられた人が約49,000人いたそうである。

 戦争が終わった後、イギリス政府は暗号解読チームに解散を命じ、エニグマ解読の真実を極秘扱いとした。イギリス政府が公表しなかった理由は次によると言われている。「第二次世界大戦を終えたイギリス政府は、ドイツから押収したエニグマ暗号機を中南米やアフリカの国々に売却した。購入した中南米・アフリカの諸国はエニグマを使い、機密情報のやりとりをした。エニグマ解読技術を持っていたイギリスは、極秘に解読して、外交交渉としての情報を入手したと言われている。

アラン・チューリングの人生を描いたこの映画を通して、いくつも驚きがあった。驚きの一つは、人工知能誕生の発端は戦争における暗号解読であったこと。次に、同性愛は犯罪という時代があったこと。また、ドイツが誇った暗号機エニグマはイギリスから中南米・アフリカに売られ、それをイギリスは極秘に解読して外交情報を入手していたということ。いろいろと驚きのある映画であった。