ばってん爺じのブログ

年を重ねても、尚好奇心旺盛な長崎の爺じの雑感日記。長崎の話題を始め、見た事、感じた事、感動した事などを発信。ばってん爺じのばってんはバツイチではなく長崎の方言

原発処理水の海洋放出について考える

 国、東京電力が今年夏ごろまでの開始を目指す福島第一原発処理水の海洋放出を巡り、日中両国の対立が続いている。日本は国際原子力機関(IAEA)の包括報告書「計画されているALPS処理水の海洋放出が人及び環境に与える放射能の影響は無視できるもの」と結論づけたことを根拠に安全性を強調し、対する中国は処理水を「核汚染水」と批判して主張は平行線をたどっているという記事を新聞で見た。

 ネットで、“原発処理水 海洋放出”で検索すると、「みんなで知ろう。考えよう。ALPS処理水のこと。知って欲しい五つのこと。本当に海洋放出しても大丈夫なの?」という経済産業省の名前が書かれたページが出てくる。画像をクリックすると動画が再生され「ALPS処理水とは、東京電力福島第一原子力発電所の建屋内にある放射性物質を含む水について、トリチウム以外の放射性物質を、安全基準を満たすまで浄化した水のことです。トリチウムについても安全基準を十分に満たすよう、処分する前に海水で大幅に薄めます。このため、環境や人体への影響は考えられません」という説明がなされている。これは経済産業省が海洋放出の理解を進める広報戦略のために10億円か12億円の費用を投じて電通に依頼して作ったホームページらしい。見やすく抵抗なく入っていけるつくりになっていて、一見正しい内容が書かれているようだが、原発推進役を担う経済産業省の提供だから信用できない。

 最近、原発処理水の海洋放出について、国際原子力機関(IAEA)の包括報告書がお墨付きのように新聞でも報道されているが、そのIAEA報告書に対して、市民や学者らでつくる「原子力市民委員会」(座長・大島堅一龍谷大教授)は18日、国際的な安全基準に合致するとした国際原子力機関IAEA)の報告書について、「海洋放出の科学的根拠とはならない」などとする見解を公表した。見解では、処理水について「事故を起こした原子炉内で核燃料に直接触れて生じたもの」と強調し、通常の原発から放出される水とは異なる「世界にも類をみない初の試み」とした上で、「(報告書では)不測の事態を想定した安全性評価が行われていない」と非難している。

 国際原子力機関(IAEA)はそもそも原子力の研究開発や実用化を進める機関で発足は1957年で、現在加盟国は176ヵ国である。IAEAの資金は各国の拠出金によって賄われ、2020年度でいうと日本国の拠出金は、外務省の拠出額63億円、外務省以外にも、原子力規制庁2億9000万円、文部科学省8000万円、経済産業省4億4000万円、環境省3000万円を拠出金として計上している。日本の分担金は10%を超え加盟国中2位ということであった。そのような機関に中立的な裁定が期待できるのかという懸念がある。

 韓国、中国以外では海洋放出に反対する意見を日本のメディアで目にすることはないが、環太平洋の島国初め、世界各国の多くの団体や機関が海洋放出に反対していることをネットでは伝えている。

 外国ばかりでなく、日本国内でも海洋放出反対の意見を聞くことはあるが、特に福島県内の反対意見は強いと感じる。原発汚染水のこれまでの経緯を見ると国策そのものと言うことがよくわかる。そもそも原発汚染水は福島原発地下水の流入によって生じているもので、地下水流入を止める手段として福島原発周囲を凍土壁で覆う工事を工事費345億円を投じて着手したが、凍土壁を完成させることが出来ず、凍らせるための電気代はl年間に十数億円にものぼるが失敗して現在に至っている。2016年、経産省から汚染水の処理について海洋放出、地層注入、水蒸気放出、水素放出、地下埋設などの報告書が出された。2018年、処理水についての公聴会が開催され44人の公述人が意見を述べた。そのうち42人が環境放出反対、陸上保管を望む意見を述べた。2020年、処理水小委員会が設けられて、海洋放出が現実的という意見を国に上申した。2020年、パブリックコメントの募集が行われ、約4000件のうち大半が海洋放出について反対を表明した。同じく2020年、福島県漁業関連団体は海洋放出断固反対の決意を表明した。福島県内の農林水産業、観光業、消費者団体も反対を表明した。また、福島県内の市町村議会の7割が反対もしくはもっと慎重にという意見書を提出した。しかし、2021年、国会審議もしないで、政府は関係閣僚等会議で海洋放出を決定した。
 福島県民の方が次のように述べていた。「2015年には経済産業省と東電は福島県魚連との間で、『原発処理水について、関係者のご理解なしにはいかなる処分も行わない』という文書での約束を交わしている。東電や経産省にどうなれば理解を得られたと考えるのか、関係者とはいったい誰なのかと問うと、『ご理解を得られよう説明責任を果たします』と繰り返すばかりで彼らが言う理解とは東電や国が決めたやり方に文句を言わず放出に同意することに他ならない。私たち大人は、いま、小学生の子供から何で福島に原発を作ったのかと問われている。そして、原発処理水の海洋放出を許すと、今度は、何で福島の海を汚すことをしたのかと問われるだろう。もう二度と子どもに答えられないようなことはしたくない」と語っていた。
 約束を守らない政府の言うことは信用できない。私は原発処理水の海洋放出に反対する人たちと強く連帯したいと思う。