今井絵理子議員や松川るい議員ら自民党女性局メンバーによるフランス研修問題が、今もネット上で話題になっている。７月下旬に渡仏した自民党女性局メンバー総勢38名のご一行は、表向きは多様性あふれるフランスの文化を勉強するための「研修」ということだったが、ドレスアップした松川氏がパリ・エッフェル塔前でポーズを決めた写真をＳＮＳにアップしたことで、「研修」の中身に大きな疑問がなげかけられ、ネット上では今でも様々な意見が上がっている。そういう中で、植草一秀氏が次のような投稿をされていた。
「自民党女性局の議員らによるフランス研修について、議員が海外で研修を行うことには意義があるとの擁護論が唱えられる一方、費用の財源に国民の血税が投下されていることを踏まえて、主権者である国民に対する配慮の欠如を批判する声も強い。こうした論議で注目しておくべき点は、この論議に関する賛否が、そのまま自民党や現政権に対する擁護と批判の立場と重なることである。各発言者はこのことを念頭に置いて発言していると考えられる。つまり、常に自民党、あるいは岸田政権を擁護する方向の発言を示す者と批判的な見地からの発言を示す者がくっきりと分かれる点に留意が必要だ。
客観的に見れば観光旅行の乗りで海外訪問を楽しむ姿をＳＮＳで発信する姿は、岸田文雄氏の子息である岸田翔太郎氏が首相公邸での親族大忘年会で公私混同のドンチャン騒ぎを演じた姿とだぶる。このような醜態を誰がどのように擁護しているのかを冷静に記録しておくことが重要だ。
そもそも、政治とは何を目的とするものか。政治に求められるのは何か。こうした根本問題と直結する話だ。政治は主権者である国民のためのものであり、主権者である国民が自らの代表者を国会に送り込み、主権者に代わって政治が行われるものである。代表者は上に立つ者ではなく、主権者の代わりに政治活動を行う者で、主権者である国民に対する奉仕者である。
ところが、現実には与党をはじめ多くの国会議員は、国会議員を特権階級であると勘違いして、その特権を得ることを目的に国会議員を目指す例が現在我が国においては蔓延している。そのような国会議員など存在意義がない。不要である。主権者である国民のための国会議員ではなく、法外な特権を獲得できる、個人に利権を付与する職業として国会議員が選好されているという本末転倒が観察されている。
本末転倒を是正するために何が必要か。三つの制度変更を断行するべきだ。
第一は議員報酬を大幅に引き下げること。
第二は企業団体献金を全面禁止すること。
第三は政治資金規正法第２１条の２の第２項を削除すること。
日本の議員の報酬が高すぎる。議員の基本報酬である歳費および期末手当が年間で２２００万円程度になる。文書通信交通滞在費が年間で１２００万円。立法事務費が７８０万円。これ以外にＪＲ特殊乗車券、国内定期航空券、さらに政党交付金を原資とする政党からの資金配分がある。合計すれば５０００万円から６０００万円の水準に達する。英国の国会議員の報酬は為替レートが円安に振れているため円換算額が拡大傾向を示しているが、それでも日本の４分の１程度の水準だ。
政党交付金制度を創設する際に企業団体献金の廃止が検討されたが、結局、企業団体献金が認められている。大企業が巨額の政治献金を行い、政府・与党は巨額政治献金をもたらす大企業に沿った政治を行い、また大企業に税金である巨大な補助金を投下する。合法的汚職の構造がすでに構築されている。
政治資金規正法第２１条の２の第２項は、政党から議員個人への寄付を認めている。元々は税金である政党交付金が政党から議員個人に寄付され、その使途が一切公開されていない。飲食に使おうが、蓄財に回そうが、すべてが容認され、資金使途も明らかにされない。野党の一部もこの制度を利用して法外な資金が私的に流用されている。
１年を通じて勤務した給与所得労働者の５５％は年収４００万円以下。２０％を超える労働者が年収２００万円以下である。国民が生活苦にあえぐ中で血税が投下されている政党からの資金支援による観光旅行ではしゃいでいる姿を嬉々として情報発信することが適正でないことは常識的感覚を持つ者なら誰しもが抱く感想である」と書かれていた。
植草氏の寄稿を読んで私も同感である。政治家ほど金になる職業はないと認識され、仕事はやったふりだけで、金儲けのために政治家になるという実態がある。元明石市長であった泉房穂氏は自著の中で次のように語っていた「政治家になって、多くの政治家と接して愕然としたことは、『せっかく当選したが、何かしたいわけではない』『やりたいことがない』と言う政治家がけっこう多いことです。政治家になることそのものが目的だと思われる人間があまりに多い。(政治家になって自分の金儲けに尽力するのではなく)、政治家たるもの、自分の手で実現したいことがある人間にやって欲しい」と述べていた。日本の政治制度を変えないとまともな政治家は出てこないような気がする。
