ばってん爺じのブログ

年を重ねても、尚好奇心旺盛な長崎の爺じの雑感日記。長崎の話題を始め、見た事、感じた事、感動した事などを発信。ばってん爺じのばってんはバツイチではなく長崎の方言

「妖怪の孫」を見る

監督:内山雄人  企画:河村光庸  企画プロデューサー:古賀茂明

 

「妖怪の孫」は故安倍晋三元総理を検証するドキュメント映画である。この映画は2023年3月に封切りされ、全国で上映が始まった。私はこの映画をぜひ見たいと思ったが、上映館は全国で36館のみであった。もちろん、地方都市の長崎で上映されることはなかった。亡くなられたとはいえ、最高権力者の地位にあった方を検証する映画ということで、いろんな配慮とか忖度が働いたのかもしれない。その映画が、半年遅れで長崎でも上映された。
チラシには次のように書かれていた
「歴代最長の在任期間となった故安倍晋三元総理。タカ派的な外交政策アベノミクスに代表される経済政策を行い、高い人気を誇った反面、物議を醸す言動やスキャンダルの絶えない人物だった。長期政権下、日本は分断と格差が広がり、選挙に勝てば問題も疑惑も忘れ去られるという悪習が政治に根付いてしまった。安倍晋三とは一体何者であったのか?安倍晋三がこの国に遺したものは何だったのか?
 安倍政治を“今、まさに”徹底検証する!なぜ、安倍政権は選挙に強かったのか?何が多くの国民を惹きつけたのか?政治と行政のモラルの低下、そして戦争ができる国になろうとしているニッポンの本当の姿、その根本にあるものを紐解いていく。安倍元首相やその背景を改めて検証することで、今の自民党や政権が果たしてどこに向かおうとしているのかを、見極めようではありませんか」

 映画は安倍晋三元総理の国葬の場面で始まった。安倍晋三元総理の死は国葬に値するかどうか盛んに議論が行われていたが、国葬は強行された。映画は国葬会場に向かう長い、長い参列者の行列から始まった。これほどまで多くの人が安倍晋三元総理の死を悼んでいるのかと驚くばかりである。中には騙された人も多かったのではと思いながら行列を見た。
 安倍晋三元総理は選挙で負けない首相ということで、歴代最長の総理在任期間をつくったが、映画を見て、納得した。自民党は、自民党の全ての広報活動を電通に委託して行っていたということが描かれていた。莫大な予算を投じて、新聞、テレビ、SNSなど全てのメディアを駆使して自民党のイメージ戦略を行ってきた。政治の中身が無くても選挙に勝てたのはこれらの広報活動の成果であったように思う。他の政党が真似できない豊富な財力を投じて広報活動を展開した結果が選挙に現れていたのではと思う。

 安倍晋三元総理がどのような人物であったかということは、いろんな人の聞き取りで、「要領のいい人物」というのが一番多かったようだ。「アベノミクスの中身は関係ない。何事もうまく見せかけることが大事。成功とか不成功は関係ない。やってるって事が大事。やっている感を出すことが大事」と本人が言った言葉が出ていたが、要領のいい男の中身はそんなものだろうと思う。

映画では、安倍晋三という人物をあらゆる角度からその人間像を浮き彫りにしていた。祖父である「昭和の妖怪」と言われた元総理大臣の岸信介を尊敬し、祖父がやり遂げられなかった自主憲法制定を政治信条とし、大日本帝国憲法への回帰を目指していたようだ。

要領がいい男が、できもしない目標を達成するためには当然口先で騙すしかない。息をするように嘘を言う人間性はまさしく要領のいい男の現れである。集団的自衛権憲法解釈変更、自主憲法制定、森友学園問題、加計学園問題、桜を見る会問題全て、嘘、嘘、嘘を乱発して説明し、言い逃れて、桜を見る会では嘘を追求されて嘘がバレて最後には謝罪した。虚偽答弁から辞任を求められると、最後まで職務を遂行して責任を果たすと言って多数派で乗り切った。国会という言論の府を嘘の答弁を繰り返し、国会を機能不全に貶めた張本人で日本の国会を破壊した罪は重い。ウソを平気で言う人間である安倍晋三元総理は、本来は、国会議員になってはいけない人間であったと思う。

安倍晋三元総理が行ってきた政治を振り返ると、集団的自衛権憲法解釈変更で戦争法案を成立させ、森友加計学園問題では「今だけ、金だけ、自分だけ」の政治を推進して自分の仲間、支援者、協力者にだけに利益が届く政治を実行してきた。その反面、国民には強く自己責任を要求した。安倍晋三元総理は統一教会から選挙協力を得るために統一教会というカルト集団に手を貸してその結果、凶弾に倒れた。安倍晋三元総理の政治を振り返ると、亡くなって全て終わったのではないことがよくわかる。

 安倍晋三元総理の後、自民党政権菅義偉岸田文雄とその跡を継ぎながら、安倍晋三元総理と同じ道を同じように進んでいる。その中身は、旧統一教会というカルト教団との切れない関係であり、集団的自衛権憲法解釈変更から始まった軍拡路線であり、自主憲法制定という大日本帝国憲法への回帰であり、「今だけ、金だけ、自分だけ」の利益誘導政治であり、そして国民には強く自己責任を求める政治である。この映画は、安倍晋三元総理の死後も何一つ変わらず、国民を見ない政治が進められているということを、改めて確認する映画となった