ばってん爺じのブログ

年を重ねても、尚好奇心旺盛な長崎の爺じの雑感日記。長崎の話題を始め、見た事、感じた事、感動した事などを発信。ばってん爺じのばってんはバツイチではなく長崎の方言

NHK スペシャルドラマ「海峡」を見る

韓国語教室で2007年に放映されたNHK スペシャルドラマ「海峡」が話題になった。話を聞くと、映画は、太平洋戦争末期、韓国・釜山で恋に落ちつつも、戦後の混乱と国籍の壁に翻弄される日本人女性と韓国人男性の恋愛を描く作品であった。無骨な私は、恋愛モノに関心がなく、今まであまり見たことはない。今回も、恋愛モノなら見ないでもいいかと思ったが、女性陣の多くがこのドラマを推薦しますと言っていたので見ることにした。

NHK スペシャルドラマ「海峡」は第1話「釜山港の別れ」、第2話「海を越える誓い」 第3話「一人だけの海峡」の3話から成り、各編1時間15分で合計3時間45分のドラマである。恋愛モノの3時間45分は長いなあと思いながら見始めたが、歴史に翻弄される二人の姿に涙しながら一気に見てしまった。

映画の概略を次に記す
 このドラマの主人公である吉江朋子は日韓併合時代に、韓国の釜山で生まれ釜山で育ち、釜山高女を卒業して京城水力発電会社に勤めていたが、終戦前の混乱の中、憲兵隊の木戸俊二に助けてもらう。日本が戦争に負け、さらに両親を亡くし天涯孤独の身になっていたときに、再会したのが憲兵隊の木戸俊二であった。日本人はリュック一つで強制帰還というとき、朋子はほのかに心を寄せる木戸に、日本に帰るとき一緒に連れて行ってくださいと頼む。しかし、木戸は「私は日本には帰りません」という。「どうして?」と尋ねると、「私の本当の名前は朴俊仁です。木戸俊二は創氏改名で付けられた名前です。日本が韓国併合した時に、韓国人も日本人と同様に天皇陛下に忠誠を尽くすべきと教えられ、志願して日本陸軍に入隊し、日本陸軍憲兵になりました。しかし、今は、もう日本人ではないのです。日本には許可なく入国できないのです」「私は日本に行くことはできませんが、朋子さん、私と結婚してください。韓国に残ってください。私が必ず幸せにします」と懇願されたが、朋子は「両親のお骨を日本に持ち帰りたい。私は日本を捨てきれない」と言って断った。日本に帰国するとき、俊二(朴俊仁)は港に来て必ず迎えに行くと言って、韓国の住所とカササギのブローチを渡す。

 釜山生まれの朋子にとって、帰還船による日本は初めての祖国・日本行きであった。朋子が父方の親類を頼って世話になっているところへ、俊二が訪ねて来た。日本で再会して2人は思いを確かめ合い、韓国へ渡った。二人は俊二の実家のある韓国で祝言をあげ、韓国で新生活を始める考えであった。だが、俊二の母は「朋子は朝鮮人になれないから、結婚するなら2人で日本へ行け。俊仁は戦争中日本の兵隊であったことは韓国人にとって恨みの対象である。まして、その妻が日本人であることは韓国人は許さない。二人は韓国では幸せにはなれない。どうか日本で幸せになってくれ。結婚に反対はしない。息子と別れるのは辛いけど、息子が幸せになるなら我慢できる」と涙で告げる。2人は再び日本へ渡り、ささやかな幸せを求めて暮らし始めた。

 朋子と俊二は、京都で支え合いながら、ささやかな幸せな生活を送っていたが、ある日俊二は不正入国で逮捕され、そのまま強制送還された。俊二は必ず戻ると言って強制送還されて行ったが、俊二からはそれ以来一切の便りが途絶えてしまった。強制送還されて、何度も何度も、実家に手紙を出すが、何の返信もない。5年待って何も連絡がない中、返事がなければ半年後結婚しますという手紙を出す。新しい職場で知りあった男性、野中が、「何年でも待つ」と言って、俊二を思い続ける朋子に結婚を申し込んだ。返事の来ない手紙を待って半年、朝鮮戦争のぼっ発を経て、朋子は野中を受け入れる決心をする。そして、そのまま、時は流れ27年が過ぎて、俊二から一通の手紙が朋子のもとに届く。そこには、「ガンに侵され、余命いくばくもない。できたらお会いしてお話ししたい」と書いてあった。

朋子は会うことを一度は躊躇したが、心の蟠りを整理したい、なぜ手紙をくれなかったのか聞きたいと思い、会いに行くことを決心して夫に伝えると快く許可してくれた。27年ぶりの俊二は病魔に侵されていたが、病床から起きて迎えてくれた。俊二は語った。「強制送還されて、すぐに、日本に再入国しようとして、密入国を試みたが見つかり逮捕された。再犯で重罰を受け、その重罰の最中に朝鮮戦争が勃発して、最前線に送られた。戦争が終わって実家に戻ったら、半年後までに返信がなければ結婚しますという手紙を見たが、時期は過ぎていた。そのあとは、ただ、がむしゃらに働いて現在の会社を起こした。朋子からの手紙は、亡くなった母が私に見せないで処理したことをあとで知った。今になっては母の気持ちもわかり、母を責めたりもしない。君は今は幸せにしているか?君が幸せであることを聞いて僕は満足だ。もう何も思い残すことはない。君が幸せであることを聞いて安心したよ。」俊二の話を聞いて朋子が言った。「私はお会いして、どうしてこれまで連絡をくれなかったのか恨みつらみを言う思いで来ました。でも、もういいです。あなたにお会いして胸のもやもやがすっかり消えました。一つお願いがあります。どうか、もう私の夢の中に出て来ないでください。」俊二は「わかりました。」と言いながら目に涙を浮かべていた。

この話は実話である。自由に往来していた海峡に突然国境が作られ、別離を強いられ、人の心を分断し、多くの人たちに悲しみ苦しみをもたらした過去を振り返る映画でもあった。それでも、お二人が最後に心を通わせて和解できたことは本当に良かったと思う。「もう二度と夢に出て来ないで」と言う朋子さん、「わかりました」と言う俊仁さんの気持ちを思うと涙が出て止まらない。だから恋愛モノは嫌いだ。