ばってん爺じのブログ

年を重ねても、尚好奇心旺盛な長崎の爺じの雑感日記。長崎の話題を始め、見た事、感じた事、感動した事などを発信。ばってん爺じのばってんはバツイチではなく長崎の方言

キム・ジヤン〜解けよ 美の呪い

NHKBSより

 BSの番組表を見ていたら、「ザ ヒューマン キム・ジヤン〜解けよ 美の呪い」という韓国作品があった。NHK BSの「ザ ヒューマン」の案内を読むと、様々なジャンルで新たな世界を切り開こうとする[ヒューマン]たちの心揺さぶられる生き様を描く、本格派ヒューマン・ドキュメンタリーと書かれている。キム・ジヤンさんが美の世界にどのような挑戦をするのか興味が湧き見ることにした。

 キム・ジヤンさん(当時24歳、身長165cm、体重70kg)は、2010フルフィギュアドファッションウィークLA に出場し、アメリカでプラスサイズモデルになった。キム・ジヤンさんは韓国初のプラスサイズモデル(標準以上の体型のモデル)である。番組はキム・ジヤンさんの経歴を追いながら進む。
 ロスアンゼルスの大会では、他のモデルに比べて私は小さく細かった。本当にプラスサイズなのと言われた。美の基準は絶対的ではないと知った。韓国は世界で一番と思われるほど外見至上主義の国で、肥満は退治すべきものと考えられている。なんで痩せないの?痩せたら可愛いのに!痩せたら男性を紹介してあげると言われる。痩せたらメリットがたくさんある。男性は親切にしてくれる。痩せるために朝一切れのパンを食べてあとは水だけで過ごす。肥えている自分に生きる価値があるのだろうかと思う人が韓国にはたくさんいる。

 韓国では親が娘をダイエット教室に通わせたり、卒業祝いに整形手術をプレゼントしたりすることも珍しくない。一方で摂食障害相談室には10代の女性があふれている。そんな韓国で初のプラスサイズモデルとしてデビューしたキム・ジヤンは誹謗中傷を浴びながらも“美の多様性”を掲げて活動中である。自身が運営するLサイズ専門店では容姿の悩みを抱える女性に寄り添う。『美しさは全ての人の中にある』彼女の葛藤と挑戦を描く番組であった。

 彼女が開業しているLサイズ専門店には、服装のアドバイスを求めプラスサイズのお客さんがやってくる。キムさんは試着する前にファッションについての目標や希望を聞く。多くの人が自分に何が似合うかわからないという。挑戦したくても一歩が踏み出せず、同じような服ばかり着ている。色は少しでも小さく見せるようにダーク系ばかり着ている。また姿勢も下向きの人が多い。キムさんは歩く時「みんな見て、私が主人公よ」という気持ちで胸を張って歩くようにアドバイスする。プラスサイズの人はノースリーブの服を遠慮しがちだが、自信を持って着たいものを着て欲しいとキムさんは言う。キムさんは明るい色、可愛いもの、楽しくなるものを提供する。もちろんよく似合う。試着しながら涙を流す人もいる。「洋服屋さんで人として扱ってもらえて何か変な気分です」と話す人もいる。洋服屋さんではいつも見下された視線ばかり浴びていたらしい。涙をこぼす人の背中をさすりながら、つらかったですねと慰める。あなたは自分で鏡を見た通りです。自信を持って胸を張って歩いてくださいとアドバイスする。

 誰でも美しさを持っています。それに気付いているかいないかの違いだけです。自分を好きでい続けることそれが大切です。私はそれを一緒に探す妖精の役割をさせてもらっているのです。

 プラスサイズ専門店のオーナーは語る。以前はプラスサイズの服はシンプルでどれも似ていた。しかし、ジヤンさんがモデルとして活躍するようになってから、今は自分をさらけ出せる服を買う人が増えた。間違いなくジヤンさんの影響です。ジヤンさんは確固としたファッションスタイルがある。

 プラスサイズのお店の顧客の一人で最近生き方を大きく変えた人がいる。ヨンジュさんは40代の主婦である。身長158cmで体重は67kgである。20代頃失恋して食欲抑制剤を飲み始めた。朝のフルーツと夕食のみで出産後も50キロ前後を維持した。彼女の中で女性は肥えたらいけないという強い思いがあった。しかし、食欲抑制剤をやめて自然に振る舞うことに決めた。食欲抑制剤をやめた理由は娘が摂食障害になったからである。娘が摂食障害と気付いたのは4年前、娘が13歳の時である。中学入学を控え、制服を可愛く着たいから痩せたいと言って来た。それで彼女も気軽に、頑張ってみようかと言ってしまった。その後、娘は摂食障害になり8ヶ月で14キロ減った。摂食障害になると筋肉がどんどんなくなって、心臓麻痺で亡くなることもある。娘も20歳になる前に死んでしまうのではないかと怖くなった。全て私のせいだと自分を責めた。彼女は薬をやめて、娘にはあなたがどんな体型でも私はあなたを愛していると伝え摂食障害を乗り越えた。娘も彼女のことをどんな体型でも好きと言ってくれる。無理してスリムにすることはない

 キム・ジヤンがプラスサイズモデルをすることについても嫌がらせもある。韓国では女性の容姿に対する興味が度をこしてる。痩せれば可愛いのに、太っていると男に嫌われるぞ。豚の匂いがすると言ってくる人もいる。悪質なコメントにも悩まされた。ムカつく、気持ち悪いブタ、大事なところも肉付きがいいだろうからセックスも良いだろうなどさまざまな嫌がらせがあった。彼女は言う「人は皆美しい存在だと思う。そのままで大丈夫と言ってあげたい。それだけで美の呪いから抜け出せるとは思わない。なぜなら、外見至上主義は個人の問題ではなくて社会現象だから。でも大事なのは、自分で自分を認めてあげること。私が私で生きていく決心をすること。それが一番大事です。自分を好きでい続けること。それを伝えることが、私の仕事だと思う」

キム・ジヤンさんに拍手を送りたい。日本も韓国と同様にルッキズムが今もはびこっている。社会現象だから個人で完全に解決できないとしても、私が私で生きていく決心することは一番大事なことだと思う。全ての問題解決はそこから出発する。