ばってん爺じのブログ

年を重ねても、尚好奇心旺盛な長崎の爺じの雑感日記。長崎の話題を始め、見た事、感じた事、感動した事などを発信。ばってん爺じのばってんはバツイチではなく長崎の方言

道徳教育の問題点

 最近、小・中学校の教育現場についての話を聞く機会があった。
 一つは、元文部科学省次官であった前川喜平氏が、現在行われている日本の小中学校での道徳教育について、危機感を持っていると次のように語っていた。
「現在、日本の道徳教育では、不平不満を言わないようにしよう。我慢しなさい。我慢することがえらいことですと教えられています。子どもさん、お孫さんの道徳の小中学校の道徳教科書を注意深く見ていただきたい。不平不満を言うな、我慢せよ、上の人の言うことを聞きなさい、決まりは守りなさいと教えています。上の人が言っていることはおかしいではないか?その決まりはおかしいではないか?と言える人間でなければ真っ当な主権者にはなり得ません。しかし、今の日本の道徳では、与えられたものをそのまま受け取って、それに従って生きていくというきわめて従順な人間を作ろうとしています。これは非常に危険なことだと思います」と語っていた。
 また、教育に関わる知識人の方は次のように語っていた。
 「いま、学校の中でブラック校則やカルト校則が蔓延して、それを力ずくで決まりだから守るべきと強要し、守らせることが行われている。子供たちが意見を言うことは認めず、ただ我慢を強いて、従順に規則に従うことを強要し、子供たちの主張を弾圧するということが起こっている。このことは、上の者が言うことには黙って従い、何を言っても無駄であると諦め、主張はしないという思考停止したロボット人間を増やすために行われているのではないかと危惧する。これはまともな主権者を育てる主権者教育に反する行為と言ってもよい。早急に教育現場を改善しないと思考停止したロボット人間だらけになってしまう」
 お二人のご意見を聞いて、「若者が選挙に行かないこと」や「若者ほど政権与党である自民党を支持する人が多いこと」などは思考停止したロボット人間教育の成果が現れているのではないかと心配になった。

 現在の道徳教育が導入された経緯をジャーナリストの池田知隆氏が書かれていたので下記に引用する。
 「道徳教育の教科化は、安倍元首相の長年の念願だった。改めて言うことでもないが、戦前の学校では、修身が全教科の筆頭教科に位置付けられ、教育勅語とともに、お国のために命をささげることのできる国民を育成するのに大きな役割を果たした。戦後、この修身を道徳科として復活させようとの声が自民党文教族を中心に根強くあったが、教育界は『心の中に立ち入るのは危うい』と反発、長年見送られてきた。
 しかし、安倍首相を支持している保守団体『日本会議』が1997年に結成され、道徳の教科化を運動方針に掲げたころから、その実現に向けて動き出した。第1次安倍政権は2006年、教育基本法を改正し、愛国心教育を盛り込んだ。同時に教育再生会議を内閣に設置し、道徳の教科化を打ち出した。だが、文科相から諮問された中央教育審議会中教審)は、正規教科には評価が必要で、心の中を評価することになるので、教科になじまないと答申し、いったん教科化は見送られた。
 第2次安倍政権では13年1月、教育再生実行会議を発足させ、道徳の教科化を強く打ち出した。直接のきっかけとされたのは、大津市でおきた『いじめ自殺』問題だったが、安倍首相の狙いは愛国心教育であった。中教審の委員も入れ替え、14年10月に『特別の教科 道徳』として正式教科にするべきとの答申を得、15年3月の学習指導要領改定を経て、正式教科に格上げされた。教育勅語についても17年3月、安倍内閣は『憲法教育基本法等に反しないような形で教材として用いることまでは否定されることではない』との答弁書閣議決定し、戦後、完全に否定された教育勅語が甦っていった。

 その安倍元首相の道徳観とはどんなものだろうか。安倍元首相は森友学園籠池泰典氏の道徳観に共感していた。道徳が正式教科と決まった15年の9月、森友学園が運営する塚本幼稚園(大阪市淀川区)で講演した昭恵夫人は、こう発言している。『こちらの教育方針は大変、主人も素晴らしいと思っている。(卒園後)公立小学校の教育を受けると、せっかく芯ができたものが揺らいでしまう』と、公立学校の教育内容に対しては否定的な発言をしていた。
 森友学園に寄せた昭恵夫人の挨拶文には『優れた道徳教育』『日本人としての誇りを持つ子どもを育てる』として森友学園の教育を褒め上げている。
塚本幼稚園は、3~5歳の幼児に愛国心を育むことを目的とし、制服を着た園児たちは毎朝、日本国旗の前で国歌を歌い、教育勅語を復唱することで知られていた。
『大人の人たちは日本が他の国に負けぬよう、尖閣列島竹島北方領土を守り、日本を悪者として扱っている中国、韓国が心改め、歴史で嘘を教えないよう、お願い致します。安倍首相、ガンバレ! 安倍首相、ガンバレ! 安保法制国会通過よかったです! 僕たち私たちも、今日1日、パワ-を全開します、日本ガンバレ! エイ、エイ、オ~』
同園の運動会の映像で、園児たちは弾けるような声をあげて選手宣誓している光景だ。「君が代」斉唱、教育勅語や「五箇条のご誓文」などの朗読…。その「愛国教育」に感涙する昭恵夫人の姿がテレビから流れ、世間をあっと驚かせた。このような幼稚園児への教育勅語の強制は、安倍首相の妄想を具現化したものなのだろうか。日本語も満足に話せない園児に教育勅語の原文を唱和させることにどんな意味があるのか、理解に苦しむ。教育勅語を学校教材とすることを否定しない形で閣議決定がなされたことで、いつしか小学校で教育勅語がごく普通のこととして浸透していくかもしれない。そんな悪夢を思い浮かべると、笑って見過ごすわけにはいかない」と書かれていた。

安倍首相が導入した道徳教育はお国のために進んで命を投げ出す国民を生み出すための装置である。国家の指導者が戦争に行けと言ったら黙って戦争に行く国民、どんな無理難題も黙って耐え忍ぶ、指導者に都合の良い国民を作る装置である。このような道徳は要らない。早急に教育の改善をしないと根底から国がおかしくなる。