先日のネットニュースで、「れいわ大石議員が全面勝訴」という見出しの記事を見つけた。裁判のニュースであるがどのような内容だろうと思ってニュースを読んだ。裁判はジャーナリストの伊藤詩織さんをレイプした山口敬之元TBSワシントン支局長が大石議員を名誉毀損で訴えていた裁判のことであった。記事を読みながら、大石議員が勝訴して当然であり、勝訴して本当に良かったと思った。
ジャーナリストの伊藤詩織さんは山口敬之氏からレイプ被害を受けたとして告訴したが、検察は山口敬之氏を不起訴にした。これは、山口敬之氏が安倍元総理の御用記者として親密な関係にあり、権力者が捜査機関などに横槍を入れて不起訴にしたという疑いが持たれる事件であった。刑事事件としては不起訴にされたが、伊藤詩織さんは真実を明らかにするために民事裁判を起こして争うことにした。その裁判の流れは次のとおりである。
2015/04 TBSワシントン支局長山口氏、伊藤詩織さんと東京都内で会食後、準強姦に及んだとして送検。
2016/07 東京地検、山口氏を不起訴とする。
2017/09 伊藤氏、山口氏を相手に 1,100万円の損害賠償を求める民事訴訟。
2019/02 山口氏、伊藤氏に慰謝料1億 3000万と謝罪広告を求めて反訴。
2019/12 東京地裁、山口氏の性暴力を認定し慰謝料等 330万円の支払いを命じる。同時に、山口氏の慰謝料請求を棄却する。山口氏は控訴。
2022/01 東京高裁、「同意なく性行為に及んだ」として一審判決を追認し、山口氏に損害賠償の支払を命じた 一審判決を支持。さらに賠償額は一審判330万を約2万増やして約332万とした。
2022/07 最高裁、第1小法廷は双方の上告を退け、二審判決が確定した。刑事事件としては不起訴処分にされたが、民事訴訟においては伊藤詩織さんの主張がすべて認められて伊藤詩織さんの勝訴が確定した。
この裁判について、れいわの大石あきこ議員は、2019年12月19日、東京地裁判決で山口氏の性暴力が認定されたことを受けて、ツイッターに次の二点をツイートし意見を表明した。
①元TBS記者で安倍総理の御用記者山口敬之氏。伊藤詩織さんに対して計画的な強姦をおこなった。
②1億円超のスラップ訴訟を伊藤さんに仕掛けた。とことんまで人を暴力で屈服させようという思い上がったクソ野郎。
このツイートによって、名誉を傷つけられたとして山口氏が、れいわの大石あきこ議員を相手に880万円の損害賠償とツイートの削除と謝罪文のの掲載を求めて訴訟を起こした。
2023年7月の東京地裁の一審判決においては、①の計画的に強姦を行なったことは真実であるとしながらも、②の・・・「クソ野郎」は人身攻撃に及んでおり、名誉毀損が成立するとして、大石氏にツイートの一部削除と22万円の支払いを命じた。双方が判決を不服として控訴していた。
2024年3月13日、二審判決が東京高裁で言い渡された。東京高裁は一審判決を破棄し、「クソ野郎」に違法性はないとの判断を示した。上記①②のツイートが名誉毀損にあたるとする原告の訴えはすべて斥けられ、大石議員の全面勝訴判決となった。判決文によると、ツイート①は事実を摘示しており、②は意見ないし論評の表明に属する。東京地裁が認めた性加害の事実に対して、大石議員が論評し意見を表明したことで問題はないとした。
全面勝訴の判決を受けて大石あきこ議員は次のように語っていた。
「クソ野郎っていう表現は誰に対しても言っていいわけではない。伊藤詩織さんに対し、性加害を行ったっていうこと、さらに、その伊藤さんに1億円を超えるスラップ訴訟を提起しかけたことに対してクソ野郎と強い言葉で非難したのであって、一般の方を捕まえてクソ野郎と言ったわけではないことが認められた判決です」また、佃克彦弁護士は「クソ野郎が言い過ぎかどうか重大な論点になったが、何についてクソ野郎と言ったのかが検討され、合理的で違法性がないという判断になった。非常に的確に事案の中身を見て判断してくれた判決である」と評価した。
クソ野郎という表現は品性に欠ける言葉使いであり、それをだれかれ構わず使うことは人身攻撃と批判されることはわかる。しかし、計画的に性加害するような人間のクズをクソ野郎と呼び、さらに金の力で言論を封じようとする人間のクズをクソ野郎と呼ぶのは当然だと思う。裁判所がそれを認めてくれたことは嬉しい。このようなクソ野郎に22万円の損害賠償を支払うことが確定していたら、日本人は言葉を失う恐れがあった。高裁で一審破棄の判決が出て本当に良かったと思う。