ばってん爺じのブログ

年を重ねても、尚好奇心旺盛な長崎の爺じの雑感日記。長崎の話題を始め、見た事、感じた事、感動した事などを発信。ばってん爺じのばってんはバツイチではなく長崎の方言

伊藤詩織さんの勝訴とBBC放送「Japan’s Secret Shame」

 

 

女性ジャーナリスト伊東詩織さんが被ったレイプ事件を題材にした英国BBC放送のドキュメント番組「Japan’s Secret Shame (日本の秘められた恥)」を見た。

 

伊藤さんが「性暴力被害」を訴えた事件の概要は以下の通りである

 

2015年4月3日、伊藤さん(当時25歳)が自身の就職やアメリカの就労ビザについての相談のため、東京都内で当時TBSの政治部記者でワシントン支局長であった山口敬之と会食。同日深夜から4日早朝にかけて飲酒後に記憶をなくし、ホテルで乱暴されたとして準強姦容疑で高輪署に被害届を提出した。

 

この事件について、東京地裁は2016年7月に嫌疑不十分で不起訴としたため、伊藤さんは2017年5月、新たな証拠を揃え検察審査会に再審査を申し立てた。東京第6検察審査会は2017年9月、不起訴を覆すだけの理由がないとして「不起訴相当」と議決した。そして、不起訴とした理由は開示されていない。

 

民事訴訟

2017年9月28日、「望まない性行為で精神的苦痛を受けた」として、伊藤さんが山口を相手に1100万円の損害賠償を求める民事訴訟を起こした。

2017年10月18日、伊藤さんは自らの訴えを綴った手記「Black Box」を出版し、10月24日には日本外国特派員協会で実名顔出し記者会見を行い、これまでの経緯を説明した。

 

一方、山口は同月26日発売の月刊『Hanada』に、「私を訴えた伊藤詩織さんへ」と題する手記を掲載し、伊藤さんの主張を全面的に否定した。

 

2019年2月、山口は「伊藤さんの記者会見での発言などで社会的信用を奪われた」として伊藤さんを相手に慰謝料1億3000万円と謝罪広告の掲載を求めて反訴した。

 

民事訴訟における裁判は山口、伊藤さんの双方の訴えを同時に審理し、2019年12月18日、伊藤さんの請求を認め、330万円を支払うよう山口側に命じた。山口の反訴は全面的に棄却され、伊藤さんが勝訴した。

 

この事件を概要で見ると以上であるが、BBC放送のドキュメント番組はこの事件を詳細に事実を追っている。番組の中で、信じられないような事実が次々と描かれている。これらの事実が法治国家と呼ばれる現在の日本で起きていることが信じられないと思うような内容である。その事実とは以下の通りである。

 

まず加害者である山口敬之はTBSの官邸キャップやワシントン支局長などを歴任した当時TBSのエース記者であり、安倍総理の伝記である「総理」を出版した作家である。安倍総理のことについての書籍を出すには、安倍総理と深い面識や繋がりがないと切り込んだ内容を書くことができないことから、山口は官邸に最も近いジャーナリストとして知られていた。

 

「総理」という本まで書いていた官邸御用達記者で、山口の姉が安倍昭恵夫人と同級生でもある山口敬之は、伊藤さんレイプ事件の犯人として訴えられ、事件を受理した高輪署は捜査を進め、証拠も固まり逮捕状を取り逮捕を執行しようとする矢先に、警察の上部から「逮捕するな!」と現場に指示があり逮捕が見送られた。この「逮捕するな!」という逮捕もみ消しの指示したのは当時警視庁刑事部長の中村格氏で安倍政権を支える菅官房長官の元秘書であったことが判明している。

 

そして、その後この事件の担当は通常の所轄警察署から警視庁へと移った。警視庁が担当になったあと警視庁の担当者から和解の提案が持ちかけられたが伊藤さんはその和解案を拒否して、捜査の継続を依頼した。そして、所轄警察署が証拠を固め逮捕状をとった事件は、警視庁の管轄となり最終的に起訴するだけの充分な証拠がないと判断されて不起訴と処理された。

 

また、伊藤さんが実名で顔を出して記者会見をした後は、SNSなどで伊藤さんはもちろん、伊藤さんの家族まで非難する書き込みが寄せられた。また、自民党の女性国会議員などから「伊藤さんは落ち度がある」と非難されるなど加害者を擁護する立場での非難を多数受けた。自宅の周りには伊藤さんを監視するかのような黒塗りの車が見受けられるようになったり、自宅に盗聴器が仕込まれていたことが判明した。

 

この事件を英国のBBC放送は「Japan's Secret Shame (日本の秘められた恥)」というタイトルのドキュメント番組を作成してして報道した。このドキュメント番組で英国BBC放送は「この事件は単なるレイプ事件ではなく、恐るべき権力犯罪の事件である。犯罪者は山口敬之だけではない。もみ消しを指示した警察官僚中村格も犯罪者だ、現在、安倍首相の伝記作家である山口敬之との関係性を否定している安倍首相も犯罪者である。女性の人権と国家権力の犯罪が重なった歴史的な事件」と見ていることである。日本は法治国家であり先進的な文化国家と世界の中で見られていると思っていたら、世界からとんでもない無法国家と思われているようだ。

 

先日、フランスで活躍しているミュージシャン兼作家の辻仁成さんはブログの中で「もはや日本だけではなく、フランスでも伊藤詩織さんの勝訴ニュースがル・モンド紙など各紙で大きく扱われた。この問題は日本で考えられている以上に欧州では大きな話題になっている。とくにお隣のイギリスではBBCがトップニュースに近い扱いをした。伊藤さんの場合は権力者と対峙する一人の若い女性の戦いとして、世界のメディアが注目している」と海外の反応を伝えている。

 

それにしても、伊藤詩織さんはよくここまで頑張ってきたと思う。普通だったら、権力に屈し、挫折し、泣き寝入りしていたかもしれないのに、伊藤さんは負けなかった。なぜ、ここまで頑張るのかというインタビューでの質問に、「私はジャーナリストを志望している、どんな困難があっても真実を求めていくのがジャーナリストと考えた場合、自分のことで真実を追求できなければジャーナリストになる資格はないと思ったから」と語った。また、「女性の人権を考えると、性被害についての日本の法律や現状の制度やシステムは改善すべき点が多くあるとわかった。これを見過ごすことは現状を認めることと同じと思うと声を上げなければいけないと思った」とも語った。日本にこれほど自立した女性がいることを、また、信念に基づいて行動する女性がいることを誇りに思う。そして心から応援したい。