ばってん爺じのブログ

年を重ねても、尚好奇心旺盛な長崎の爺じの雑感日記。長崎の話題を始め、見た事、感じた事、感動した事などを発信。ばってん爺じのばってんはバツイチではなく長崎の方言

樋口英明氏の講演を聞く

 樋口英明氏は2014年、大飯原発の運転差止めを命じた裁判官である。判決理由は、地震大国日本の原発には高度な安全性が必要なのにその耐震性は極めて低いというものであった。定年後は脱原発のための活動を行なっている。講演の内容を次に記す
「岸田首相はよくわからない人である。彼は人の話を聞いて政策を決定する。話を聞くのはいいが、誰の話を聞くかが問題である。3.11前、原発推進派は原発は絶対安全だと主張していた。一方、原発をよく理解した人は原発は危険である。いつか事故を起こすだろうと言い続けた。そして、3.11が起こって、どちらが誠実で賢い人であるか、どちらが不誠実で愚かな人かがはっきりとわかった。だけど、岸田さんは愚かで不誠実な人の話を聞き、その人たちの主張に沿って原発政策を進めている。

 脱原発の一番の敵、一番の障害は何かと考えた場合、1番の敵は原発回帰に舵を切った政権や電力会社に見えるが、本当の敵は私たちの心の中にある。それは私たちが持っている先入観であったり思い込みである。たとえば、政府がこれだけ力を入れて推進しているのだから、日本にとって必要なものなんだろうという思い込み、これだけ推進しているのだから原発は安いのだろうという思い込み、3.11があったんだから、その後、再開された原発は安全になっているはずという思い込み、そして1番の強敵は、原発問題は難しい問題であるから、素人にはわからないという思い込みである。それらの思い込みや先入観が脱原発の一番の障壁であり一番の敵である。

 原発問題は決して難しい問題ではない。原発問題を理解するには二つのことを理解するだけでよい。一つ目は原発は人が管理し続けないといけないものということ。二つ目は、管理できなくなったら想像を絶する被害が起きるということである。この二つである。管理し続けるということは電気と水で原子炉を冷やし続けるということである。3.11の原発事故は、原子炉が壊れて事故が起きたわけではない。事故が起こったのは、停電したためである。停電して管理できなくなったから大事故になったということである。3.11のとき、福島原発の吉田所長は、東日本壊滅を覚悟した。あるいは、チェルノブイリ原発事故の10倍の被害を覚悟したと言った。そして、原子力委員会委員長の近藤駿介さんも東日本壊滅を覚悟した。菅元総理も東日本壊滅を覚悟した。現場の最高責任者、日本の原子力行政の最高責任者、日本の行政のトップである総理大臣、この3人が3人とも管理できなくなった原発によって、東日本壊滅を覚悟した。東日本壊滅というのは4000万人が今住んでいる場所に人が住めなくなるということである。それが信じられないような奇跡がいくつか重なり、寸前で東日本壊滅は避けられたが、それでも15万人が避難した。15万人避難という事態は、停電が発生したことによって起こったということである。

 事故が起きたら、大きな災害をもたらすことがわかっているのだから、それなりに安全対策は行われているだろうと普通の人は考える。なぜなら、私たちの社会はそういう仕組みでできているからである。しかし、原発だけは例外である。日本の原発震度6弱が来ると危なくなって、震度6強が来ると本当に危なくなって、震度7が来ると絶望的である。原発差し止め訴訟で何が争われているかというと、電力会社は、この原発敷地に限っては強い地震は来ませんから安心してくださいと言っている。原発差し止め訴訟で争われているのは、それを信用するかしないかたったそれだけのことである。だから、裁判は難しくも何もない。一瞬でわかることである。耐震性が低い原発は間違いなくとてつもなく危ない。原発推進はこの危ないことをやろうとしている。

 原発問題の本質はエネルギー問題であり、環境問題でもある。同時に、私は今、原発問題は大きな国防問題ととらえている。ウクライナ戦争でロシアはザボリージャ原発を攻めた。そして簡単に占領した。簡単に占領したのはウクライナが抵抗しなかったからである。ウクライナが反撃したら、その戦闘によって原発施設が破壊される危険が高まるから反撃できない。電気系統に支障が起きて停電するだけで原発は暴走するから無抵抗で明け渡すしかない。さらに、従業員は逃げることもできない。従業員がいなくなれば原発の管理ができなくなり原発が暴走してしまうからである。原発は自国に向けられた核兵器である。
 日本は海岸沿いに54基の原発を並べている。今、自民党政権は敵基地攻撃能力を増やしながら原発を動かすと言っているが、頭は大丈夫ですかと言う話である。日本の自民党政治家は、仮想敵国やテロリストは日本の原発を攻撃しないというテロリストたちへの高い信頼を持っているらしいが、このような空理空論はありえない。原発は自国に向けられた核兵器である。戦争になれば、間違いなく原発は敵にとって格好の攻撃目標となる。その一つ二つが攻撃されたら日本壊滅である。そのことを無視して戦争準備など狂気の沙汰である。

 自分の責任がわかっている人はわかっていない人より幸せだと思う。私は自分の責任がどこにあるかをわかっていて、その責任を果たせた幸せな裁判官であったと思う。しかし、それで自分の責任が終わったとは思っていない。『無知は罪、無口はもっと罪』と言う言葉がある。裁判官が原発差し止め訴訟を担当して、原発の本当の危険性を知ったのにそれを告げないのはさらに重い罪だと思う。私は、国が壊滅するかもしれないという原発の危険性を知ってしまった以上、それを皆さんにお伝えするのが自分の責任だと思っている。最後にキング牧師の言葉を記します。『究極の悲劇は悪人の圧政や残酷さではなく、それに対する善人の沈黙である。問題に対して沈黙を決め込むようになったとき我々の生命は終わりに向かい始める』私の話を終わります。」

 樋口さんの話を聞いて、改めて原発が如何に危険なものであるか再認識した。3.11は東日本壊滅寸前まで行ったことを思うと今でも震えがくる。そのことも無視して岸田政権は原発再稼働、使用期限の撤廃、さらには新規開発まで着手しようとしている。早急に自民党政治を打倒しなければと思う。