ばってん爺じのブログ

年を重ねても、尚好奇心旺盛な長崎の爺じの雑感日記。長崎の話題を始め、見た事、感じた事、感動した事などを発信。ばってん爺じのばってんはバツイチではなく長崎の方言

羽場 久美子教授の話を聞く

羽場久美子教授は青山学院大学国際政治学者である。「東アジアでは戦争はしない、戦争より対話」というタイトルの羽場教授の講演を聞いた。講演の中身を一部記す。

 「今、世界は大きく変動している。ロシア・ウクライナ戦争が起こり、さらに台湾有事とか中国脅威論がいわれている。その背景には中国やアジアの急成長があることが統計を見ると明白である。世界人口の推移から見ると、経済面で近代米欧の時代は頭打ちとなり、ゆっくりと終焉に向かっていて、そしてアジア、アフリカの時代に入ってきている。近代米欧に代わりアジア(中国、インド、ASEAN)の急速な経済発展が起こっている。その結果、あと50年もしないうちに先進国が入れ替わるといわれている。

 地域別世界人口の推移を見ると、75年後の2100年にはアジア・アフリカの人口が世界人口の8割を超える。そして米欧の人口は1割を切る状態になる。この人口の推移が意味することは、20世紀の貧しい遅れたアジア・アフリカが単に増加するというのではなく、21世紀は経済でアメリカを抜き、IT 、AIでアメリカをしのぐという経済も発展し科学技術も進歩したアジア・アフリカが出現するということを意味している。
 世界GDP比較では、2022年は1位アメリカ25兆億ドル、2位中国19.9兆億ドル、3位日本4.9兆億ドル、4位ドイツ3兆億ドル、5位インド3兆億ドルであった。中国は2010年に日本を抜いた。日本はアベノミクスで成長しないままであったが、中国はたった12年間で日本の4倍まで成長している。そして、さらに2028年には中国はアメリカを抜き1位になり、インドは日本を抜きアメリカに次ぐ3位となると予想されている。またトルコやメキシコもヨーロッパ諸国を追い抜いていくと予想されていて、これから10年〜20年で先進国が入れ替わるといわれている。
 アメリカの金融会社ゴールドマンサックス社が50年後の2075年世界GDP予測を発表した。それによると1位中国、2位インド、3位アメリカ、4位インドネシア、5位ナイジェリア、6位パキスタン、7位エジプト、8位ブラジル、9位ドイツ、10位イギリス、11位メキシコ、12位日本であった。想像できないと思われるかもしれないが、50年後世界のトップ7の先進国にはアメリカが3位に入っているだけである。
 人口はいま経済とIT分野における、トップに躍り出る条件と言われている。人口超大国の中国、インドの急成長はもちろんであるが、人口が3億に届こうとしているインドネシアパキスタン、エジプトなども急成長が見込まれる国となっている。このように世界の様相は米欧を中心とした世界からアジア・アフリカの時代を迎えようとしている。その中での中国脅威論である。

 2021年6月、G7でアメリカは、これからは「民主主義対専制政治」という価値観の対立が起こりえると述べて、価値の同盟を主張して同盟国との関係強化を図り、アメリカの最大の競争相手である中国を牽制した。そして東アジアが米中対立の最前線になると主張した。アメリカは台湾問題から米中対立に備え、日本国とともに沖縄諸島を中心にミサイルを配備して軍拡を進めている。そして対中国向けミサイルを200基設置した。沖縄ばかりでなく、戦争準備は日本全国にわたって行われている。地上が攻撃を受けても地下から攻撃司令ができる地下司令塔の設置は全国10ヵ所、北は青森まで及ぶ。これは対中国だけでなく、対北朝鮮、対ロシアへの対応を考えての設置である。アメリカの対中国戦のためのコマが日本であり沖縄である。日本がやらなければ戦争は始まらない。

 日本の周りには中国、北朝鮮、ロシアなど仮想敵国が並んでいる。防衛のためと言って対中国ミサイルをすでに200基設置した。ミサイルを発射したら当然その反撃を受けることを覚悟しなければならない。中国は2000基、ロシアは6000基、北朝鮮は100基ミサイルがあると言われている。1発ミサイルを打つことで日本は反撃のミサイルを多数受けて壊滅すると言われている。これで本当に日本国民の命を守れるのだろうか?アメリカの経済的覇権を維持するためにこのようなシナリオが実行されていいのだろうか。

 シナリオはまだあった。これから急激な発展が見込まれているのは東アジアである。そして、東アジアの発展が世界経済の覇権を握る時代が来ようとしている。それは、長く世界経済の覇権を握ってきたアングロサクソンを中心とした米欧にとっては許し難いことである。その東アジアで戦争が勃発して、北朝鮮原発施設であるミョンピョン核施設が爆破されるだけで半径1200km圏内の放射能汚染区域が発生する。それは北朝鮮、韓国、日本、中国の工業地帯が全滅することになる。東アジア経済の中核となる地域が一瞬にして消滅するということである。そして、今経済的覇権を握っている米欧にとっては放射能の影響はほとんどなく、あくまでも遠い戦争である。まさに、東アジアにおける戦争は米欧にとってまさに漁夫の利であるという話をされていた。

世界では、このようなシナリオさえ描かれているというのに、防衛のためと言って45兆円の予算を軍拡に投じることしか考えない日本国首相には呆れるしかない。戦争準備はいらない。平和外交のための対話こそ必要という話がよく理解できた。