ばってん爺じのブログ

年を重ねても、尚好奇心旺盛な長崎の爺じの雑感日記。長崎の話題を始め、見た事、感じた事、感動した事などを発信。ばってん爺じのばってんはバツイチではなく長崎の方言

田岡俊治さんの話を聞く

軍事ジャーナリストの田岡俊治さんが担当する「田岡俊次の徹底解説」という番組を拝見した。今回は「米国はどっち向き?和解模索のバイデン政権と好戦日本」というテーマで話が進められた。冒頭、麻生副総裁の台湾での「戦う覚悟発言」についてどう思いますかと司会者から聞かれた田岡俊治さんは「別に大きな意味はない。一人の人が言っているだけの話である」と関心もないというようなそっけない回答であった。
 続いて最近のアメリカの中国に対する動きについて田岡俊治さんは次のように解説した。「台湾有事については、アメリカが実際にどのように動くかということが1番問題で注目しなければならないことである。実際にアメリカが中国と戦争しようという姿勢をますます強化しているのであれば、日本もそれに引きずられる可能性が高くなるので麻生発言も問題となるが、現実は、アメリカは中国と事を構えるのでなく、対話路線をとりながら、関係をうまく作ろうという動きに変わってきている。アメリカの声は必ずしも対中国好戦論ばかりではない。日本では対中国好戦論しか報道されないが、アメリカは5月以降、がらっと中国に対する姿勢が変わっている。

 例えば、米国中央情報局(CIA)のバーンズ長官が5月に極秘で中国を訪問し、中国当局者と会談していたことが分かった。そして、バーンズ長官は米中の情報機関が意思疎通を維持する重要性を伝えた。米中関係は米軍が2月に米本土へ飛来した中国の偵察気球を撃墜したのを受けて悪化していた。米国は軍事衝突を含む不測の事態に陥らないように両国関係を安定させるため、高官による対話を続けるべきと中国に働きかけていた。そして6月3日にはシンガポールで開かれたアジア安全保障会議に出席したオースティン米国防長官は台湾海峡で紛争が起これば、世界にとって最悪の結果で壊滅的だと述べて地域の安定の必要性を訴えた。アメリカの陸軍大将である国防長官が明確に中国との戦争について反戦を述べたことに注目が集まった。そのほか6月にはブリンケン国務長官が北京を訪問したり、7月には経済に関連して米国のイエレン財務長官が北京を訪問して、米中対話強化の重要性を強調した。そのほか、マイクロソフトやテスラなどの米国先端企業のトップが相次いで中国を訪問している。また、ケリー米特使が訪中して気候変動についてハイレベルな対話を行なった。米中の高官が相次いで対話をすることで首脳会談への機運を高める狙いもあると見られている。さらに現在100歳といわれるキッシンジャー元米国国務長官が7月に訪中して習近平国家主席はじめ国家首脳と会談したことについて、米国のスポークスマンは今回の訪中は米国政府を代表しているものではないとしながらも、キッシンジャー氏から訪中に関する報告を聞く事を楽しみにしていると発表している。秋以降はさらに商務長官の中国訪問も予定されている。これらの動きを見ていくと、アメリカの中国に対するスタンスが大きく変化しているのを感じることができる。アメリカの対中国対策はトランプ大統領とバイデン大統領では全く違っている。トランプ大統領は中国が悪玉であるという事をあらゆることにおいて演出して国民に中国に対する反感を醸成していたが、バイデン大統領は中国を敵視する政策をやめて、中国との対話路線を大事にする政策に転換している。それが今のアメリカの中国政策である事を理解する必要がある。その意味で麻生副総裁の言動は意味もないことで、逆に台湾住民から迷惑がられているのが実情ではないか」と語っていた。

 私は、最初、戦う覚悟という麻生発言に対する田岡さんのあっさりしたコメントを聞いてがっかりした。もっとしっかりここは怒るべきだろう。その無関心さは何だと思った。しかし、田岡さんの解説を聞いて納得した。田岡さんみたいに世界のあらゆる国々のニュースを多角的に見ている人には意味がある発言と意味のない発言、国際的発言と国内的発言など一目瞭然に理解できるから、麻生氏発言など、国内向けの国際的に無意味な発言としか言いようがないのだろうと了解した。私は新聞は一紙しか読んでいないし、まして英字新聞も読まない。しかも日本の新聞は大本営発表みたいな記事を書くから、世界の流れやニュースは入ってこないことがある。日本の新聞、テレビは政府に都合の悪い記事は忖度して掲載しないようだから、日本の新聞、テレビしか見ない人は北朝鮮の人と同じだと思う。私は、田岡さんに教えてもらうまで、米国が対中国政策を転換したのを知らなかった。国際ニュースにあまり関心を持たなかったのは無知であったと改めて思った。

 田岡さんは、麻生発言について国際的に無意味な発言とあっさり片付けていたが、日本の防衛白書については厳しく糾弾していた。日本防衛白書では、中国に対して「米中両国において相互に牽制する動きがより表面化し、バイデン政権においても両国の戦略的競争は不可逆的な動きになっている」と書かれている。この部分について、これはトランプ大統領時代の中国敵視政策のままである。米中戦争への道はもう後戻りできないと書かれているが、現実は戦争の道から対話路線の平和への道を米中は歩み出している。日本の防衛白書は、予算を確保するためか、あるときは勇ましい言葉を使って事実を曲げて表現するという姿勢が見られると指摘していた。戦う覚悟の麻生発言も国内向け予算確保の口実でしかない

日本は対中国向けミサイルを何百基も中国に向けて設置し続けている。また、さらに今後、何十兆円もの予算を軍拡に投じる計画である。トランプ大統領の時代は終わり、バイデン大統領は中国との敵視政策を見直し、台湾での紛争は起こすべきではないという和解の方向に舵を切った。しかし、どのように世界が変わっても、日本は一度決めた何十兆円もの軍拡予算はそのまま遂行するのだろう。その意味でも自民党を政権与党から引きづり下ろすしか道はない。
田岡俊治さんの解説は明快である。このような方のお話を聞けるのは有り難い。