ばってん爺じのブログ

年を重ねても、尚好奇心旺盛な長崎の爺じの雑感日記。長崎の話題を始め、見た事、感じた事、感動した事などを発信。ばってん爺じのばってんはバツイチではなく長崎の方言

マスコミ各社の報道姿勢について思う

 中古車販売会社「ビッグモーター」の兼重宏行社長は、保険金の不正請求問題で7月25日に初めて記者会見を開いた。兼重社長は謝罪したうえで、一連の問題の責任をとって26日付けで社長を辞任することを明らかにした。また、息子の兼重宏一副社長の辞任も発表した。そして、ビッグモーターの社長記者会見以来ビッグモーターの不正行為について、NHKをはじめ全てのテレビ局は競うように徹底取材を行っている。そして、各局ともこの問題を連日長時間かけて報道している。ビッグモーター問題は、この会社が利益至上主義でブラック企業だったというばかりでなく、損害保険制度の構造上の問題に及ぶ恐れがあり重大な問題であることから連日報道されるのは理解できる。しかし、同時に、記者会見後、ほとんど報道されない事案もあり、マスコミの報道姿勢について疑問を持った。

 記者会見後、ほとんど報道されない事案というのは木原副官房長官の妻に関わる事件である。

 岸田文雄首相の側近である木原誠二官房副長官の妻X子さんの元夫である安田種雄さんが2006年に東京都内で死亡したことに関し、2018年に始動した再捜査で木原氏の妻X子さんに対して事情聴取を行った警視庁捜査一課殺人係の捜査官だった佐藤誠氏が7月28日に記者会見を行った。

 佐藤氏は1983年に警視庁に入庁し、昨年退職した元警部補である。会見冒頭に佐藤氏は、露木康浩警察庁長官の7月13日の定例会見での発言を問題視した。「警察庁長官が記者会見で、この事件を事件性がないとか自殺とか言っているんで、そのときカチンときたんですよ。被害者に対して火に油を注ぐような発言だと思いました」と述べた上で、「証拠品であるとか、各供述であるとか、(捜査官である自分に)集中するんですよ。それをずっと吟味してたんですよね。警察庁長官の発表では、適正な捜査で証拠品をもとに自殺だと判断したという。しかし、そんな(自殺であることを裏付ける)証拠品は存在しないんですよ。それは断言します」と指摘した。さらに、「事件性はあります。誰が見ても、あれを見て事件性がないという警察官はいないと思います」と述べた。

7月13日の定例会見で露木警察庁長官は安田種雄さんの不審死について、「法と証拠に基づき、適正に捜査、調査が行われた結果、証拠上、事件性が認められないと警視庁が明らかにしている」と述べた。

佐藤氏の「証言」は露木警察庁長官の話と完全に矛盾する。佐藤氏は当該事件の捜査を担当して関係証拠をすべて把握している。その上で関係証拠には自殺を裏付ける証拠が存在しないことを明言した。
さらに、7月20日には種雄さんの父が涙の記者会見を開いている。息子が変死したことの真相を明らかにして欲しいという会見であった。
 
 安田種雄さん死亡の経緯概要は次の通りである。当時、種雄さんと妻のX子さんは夫婦仲が悪くX子さんは子供を連れて家出していた。種雄さんは当時X子さんと親密だったY氏の地元にX子さんと子供がいることを突きとめ、父親から借りた車でX子さんと子供たちを連れ戻したが、その直後、2006年10月9日午後10時頃に謎の死を遂げた。当初、所管の警視庁大塚署は「自殺」で処理した。
 週刊文春によると、2018年4月に警視庁大塚署の女性刑事が約12年前の事件の捜査資料に目を留めて、「自殺にしては、ナイフへの血の付き方がおかしい」と違和感を持ったことで再捜査が始まった。そして警視庁捜査一課殺人係の捜査官だった佐藤誠氏が捜査にあたっていたところ、その再捜査が通常の殺人事件捜査ではあり得ない不自然なかたちで自然消滅させられた。このことに対する根本的な疑義が提示されている。そもそもは、2006年の段階で自殺として処理したこともおかしいと佐藤誠さんは述べていた。

この事案は不思議なことばかりである。2006年、なぜ事件の証拠があるのに自殺にされたか、また2018年、正式に再捜査が決定され大捜査陣で取り組んでいたのに、なぜ突然中止になったのかなどである。

 安田種雄さんの父親の記者会見や捜査官であった佐藤誠氏の記者会見を受けて、YouTubeなどのSNS 上では、この問題でもちきりである。多くの意見が発表され、ある意味ビッグモーター以上に取り上げられている。

 この事案について、警察庁長官の発言と第一線で捜査に当たった担当捜査官であった佐藤誠さんの発言は全く反している。そして佐藤誠さんは自殺の証拠はないと反証しているが、警察庁長官の説明は紋切り型の話でしかない。テレビ各局はこの問題について、ビッグモーター問題のように、徹底取材して検証し、何が問題であるかを深めて行くことが可能であるが全くこの事案について触れようとしていない。熱を込めたビッグモーターとの取り組みと真逆である。この問題は権力者が殺人事件に関わる捜査に権力を行使したかもしれない疑惑である。これが放置されるなら法治国家日本は終わったと言っていい。そのくらい重要な要素が含まれている問題なのにジャーナリストを自認するマスコミ各社の報道に熱意を感じない。とくにテレビでは全くとりあげないのは異常というしかない。法治国家という日本の根幹が揺らいでいる。この問題に対して権力に忖度して報道を控えるのであれば、マスコミ各社の存在意義はない。今、報道のありかたがマスコミ各社に問われている