ばってん爺じのブログ

年を重ねても、尚好奇心旺盛な長崎の爺じの雑感日記。長崎の話題を始め、見た事、感じた事、感動した事などを発信。ばってん爺じのばってんはバツイチではなく長崎の方言

麻生氏の「戦う覚悟」発言から考える

 先日、佐高信さんと前川喜平さんの対談をYouTubeで見つけ拝見した。
その中で、麻生副総裁の台湾での「戦う覚悟」発言が話題になった。麻生副総裁の戦う覚悟発言を受けて、前川さんは、すぐに東京新聞に「麻生副総裁が台湾有事に関して、『戦う覚悟』発言をしていたが、麻生さん、僕には中国と戦う覚悟などない。あなた一人で戦ってくれ。日本を巻き込むな。日本を巻き込むな。僕らを巻き込むな」と寄稿をしたということであった。

 お二人の対談は、戦争についてさらに進んでいく。
世界の歴史を振り返ると、国家の指導者によって、戦争は簡単に引き起こされている。世界のあらゆる戦争において、国家指導者が、国民に対して戦う覚悟を持てと言って国民を鼓舞し、簡単に起こしてきた。しかし、その戦争によって犠牲になるのはいつも平民という国民である。これは万国共通のルールみたいになっている。
 そのような過去の戦争の歴史と過去の戦争のルールを踏まえ、戦争を二度と起こさないようにするための法律、“戦争絶滅受合法案”(せんそうぜつめつうけあいほうあん)がデンマークのフリッツ・ホルム陸軍大将によって考案され各国政府に提案されたことがあるそうだ。
    その内容は以下の通りである。
「戦争行為の開始後または宣戦布告の効力が生じた後、10時間以内に、以下の各項目いずれかに該当する者全員を最下級の兵卒として召集し、出来るだけ早急にこれを最前線に送り、敵の砲火の下に実戦に従わせるべきこと
1、君主や大統領を含めた元首で男性
2、元首の16歳以上の男性親族
3、首相、大臣、次官
4、開戦に反対しなかった男性の国会議員及び高位聖職者
 上記該当者は本人の年齢や健康状態などを考慮に入れてはならず、健康状態については、診断書の提出など認めず、召集後軍医官の検査を受けること。また、上記該当者の妻や娘、姉妹なども戦争継続中、看護師や使役婦として召集し、最も砲火に接近した野戦病院に勤務させるべきこと。

“戦争絶滅受合法案”の考案は、第一次世界大戦終結から10年が過ぎようとする1928年頃、世界は再度戦争の危険に脅かされ、軍縮条約や不戦条約などを締結しても、小規模の紛争が大国、小国を問わず行われている状況であったことから提案されたようだ。実現はせず、第二次世界大戦へと世界は向かってしまったが、世界各国で採用されていたら戦争は間違いなく絶滅していたのではないかと思う。
 この“戦争絶滅受合法案”について、吉武信彦高崎経済大学教授は、戦争が始まれば国家元首や政治家が率先して戦地に赴くべき、という提案は当時としては衝撃的な内容で、現在においても大胆な提案であると評している。また、哲学者の高橋哲哉氏はこの法案について「戦争の最前線に送られるのは、国家権力から最も遠い人々、弱者です。国家権力の中枢の人々は、いつも安全地帯にいて命令を発するだけです。常備軍の兵士は常に国家が養っている、最初の犠牲者です。このからくりを見破ることが重要です。」と述べている。

続いて、お二人の話は勝海舟の「氷川清和」に及ぶ。勝海舟は自著「氷川清和」に面白い話を残している。勝海舟1860年に遣米使節団の一員として渡米した。アメリカから戻った勝海舟は幕府のご老中から「異国ではさぞ変わったことがあっただろう」と聞かれ、「人間のすることは古今東西同じもので、アメリカとて別に変ったことはありません」と答えたが、「そんなはずはない」と食い下がるご老中に、「アメリカでは、政府でも民間でも、人の上に立つものは、みなその地位相応に賢い者が勤めております。その点ばかりは、我が国と反対のように思います」と答えて叱られたという逸話を残している。勝海舟はそのことに関して、アメリカに行って一番驚いたことは、ワシントンを訪れた折、初代大統領ジョージワシントンの御子息は今どこに?とアメリカ人に聞いても誰も知らないと答えたことであると記している。既にアメリカでは国民がリーダーを選ぶ民主主義国家であったから、あたり前のことであるが、当時、日本は徳川時代で、徳川家康から続く世襲の政権であったので、どうしてジョージワシントンの子孫をアメリカ人は知らないのかと、勝は非常に驚いたと記している。
 勝海舟の渡米の体験を引き合いに出して、お二人の会話は進む。麻生副総裁は三代目の正真正銘の世襲議員である。勝海舟が江戸時代に渡米して、アメリカでは人の上に立つものは、皆その地位相応に賢い者が勤めておりますと言っていたが、日本では令和の今になっても江戸時代と同じ発想で世襲が続いている。これでは国が発展するはずがないと話が続く。全く同感である。
戦争絶滅受合法案にしても世襲議員問題にしても解決する課題は多い。