ばってん爺じのブログ

年を重ねても、尚好奇心旺盛な長崎の爺じの雑感日記。長崎の話題を始め、見た事、感じた事、感動した事などを発信。ばってん爺じのばってんはバツイチではなく長崎の方言

「余りに愚かな日本の原子力政策」を拝聴する

小出裕章さんの講演「余りに愚かな日本の原子力政策」を拝聴した。私は、福島原発事故を見て、原発破局的な事故を起こす可能性があるから早く撤退すべきと考えるようになった。しかし、日本政府は、今も原発を未来のエネルギーとして、原発推進に力を注いでいる。そして、政府広報などでは今も原発の輝かしい未来を謳っている。その日本の原子力政策について、小出さんが「余りに愚かな日本の原子力政策」というタイトルの講演を行なった。小出さんのお話をお聞ききして、確かに日本の原子力政策はあまりにも愚かだと私も思った。以下に小出さんの講演の要旨を述べる。

 「今から、78年前、人々が生きている街に、米国が原爆を落とした。広島原爆である。広島原爆は原料としてウランを使い爆発力は16ktであった。広島の3日後、人々が生きている街に、再度米国が原爆を落とした。長崎原爆である。長崎原爆は原料としてプルトニウムを使い爆発力は広島のものより3割大きい21ktであった。先の戦争においては1トン爆弾というものが一番大きな爆弾で、それを一発受けると町内が吹っ飛ぶといわれていた。広島の原子爆弾は16ktで、これを1トン爆弾に換算すると1万6千発分に相当することになる。長崎原爆21ktは1トン爆弾の2万I千発分に相当することになる。原爆の出現によって、人類は今までの爆弾とは桁違いの爆弾を持つことになった。
 原爆はウランを材料として造られる。ウランは地球上に僅かしかない希少資源である。しかも原爆に利用できる核分裂するウラン235はウラン鉱山から採掘するウランの0.7%しか存在しない。残りの99.3%のウランは核分裂しないつまり原発に使えないウラン238である。
 ウラン濃縮作業は採掘したウランの中からウラン235だけを取り出すための工程である。これはとてつもなく莫大なエネルギーを要する作業であり、しかもウラン鉱山で採掘したウランの0.7%しか活用できないものであった。非効率なウラン235型原爆ではなく、99.3%を占めるウラン238から原爆を作る方法が考案された。それがウラン239のプルトニウム型原爆である。人類は採掘したウランを原子炉で処理することによってプルトニウムという原爆の原料を手に入れることができるようになった。原子炉というものは、当初、原子力発電に使うために開発されたものではなく、原子爆弾の原料となるプルトニウムを取り出すために造られた施設であった。

 戦争によって原子力を操作する力を手に入れた人類は、戦後その技術を原子力発電に広げていった。ウラン燃料による原発では、ウランは希少資源のため資源不足になることから、プルトニウムなどの他の核物質の混合物でも運転できる原発の開発を世界中の科学者が目指してきた。日本でも“もんじゅ”という高速増殖炉をつくりその開発に何十年もかけて2兆円という投資をして取り組んだが、事故が多発して開発は失敗に終わり“もんじゅ”は廃棄することになった。原発が排出する核のゴミを燃料として再利用する夢の計画であった高速増殖炉の完成は、2兆円を投資したが失敗に終わった。日本ばかりではなく世界で開発に成功した国はない。
 日本は、これまで原子力発電を稼働してきた結果、核のゴミとして46トンのプルトニウムを持つことになった。プルトニウム核兵器の原料である。46トンのプルトニウムは長崎型原爆を四千発作ることができる量である。日本は原発を稼働しながら核兵器の材料を着々と手に入れてきた。しかし、世界は日本のことを信用していない。日本は90年前に、アジアを侵略した怪しい国と思われている。そのような怪しい国が原爆四千発のプルトニウムを所持していることは絶対認められないと国際的抗議を受け、日本は使い道のないプルトニウムは持たないと国際公約をさせられている。
 当初の計画では、プルトニウムを含む核のゴミを高速増殖炉の燃料として使い、新しい原子力発電に有効活用する計画であっったが、この計画は失敗に終わってしまい、プルトニウムの処分を急がなければならない状況になった。そこで、そのプルトニウムを処理するために苦し紛れに考えられたものがプルサーマル計画である。プルサーマル計画は普通の原発で燃料としてプルトニウムを使うようにする計画である。普通の原発はウランを使って原発を稼働するが、それをプルトニウムを使ってやるという計画である。これは石油ストーブの燃料に灯油でなくガソリンを使うような危険極まりない計画といえるものである。現在、そのための改良を行なっているが技術的な困難が伴い、現在までプルトニウムを燃料にする計画は1兆円を投資したが現在も完成する見通さえ立っていない。1兆円投資しても見通しは立たず、また中止してもその廃棄に10兆円かかると言う愚かな政策を推進している。

 原子力ムラの住人は原子力を推進して大儲けしてきた。破局的な福島原発事故を起こしたが、原子力ムラの住人は、これによって誰一人責任を負わされることはないということを学んだ。それどころか、福島原発事故の復旧という名目の除染で大儲けをし、さらに復興という計画で大儲けをした。原子力ムラの住人にとって福島原発事故は笑いが止まらない状況である。

だから、原子力ムラの住人は、電力が足りないというウソを垂れ流しながら、原子力を続けようとしている。核のゴミを燃料とする原子力政策は全世界が開発できず破綻している計画である。それに何兆円も注ぎ込み失敗の連続を続けている。それらの費用は全て電気料金に上乗せされる。福島事故の復興費を含めて全て電気料金に上乗せされ日本の原子力発電はとてつもない割高な電気料である。

そればかりか、原子力発電を50年間あまり稼働して核のゴミを出してきた。プルトニウムは原爆4000発分の45トンだが、それ以外に死の灰はすでに広島原発120万発を溜め込んでいる。この死の灰の最終処理場は未だ決まっていない。仮に最終場所が決まってもそれをこれから10万年も100万年も管理しなければならない。それはどれほどのエネルギーを要することかと考えたら日本の原子力政策は愚かとしか言いようがない」

小出さんのお話はおおよそそのような内容であった。日本政府や電気事業連合は原発の未来は明るいと言っているが、小出さんの話は、逆で決して明るくない。日本政府や電気事業連合会はこれまで原発は安い、安全、クリーンなどとウソを言い続けてきた実績があるのでとても信用できない。私は小出さんの話を信じる。確かに日本の原発政策は小出さんが言うように愚かしいと言う言葉がぴったりである。見通しも立たないことに、原子力ムラの住人の金儲けのために湯水の如く税金を投入していたら国が衰退するのは当然だろうと思った。