ばってん爺じのブログ

年を重ねても、尚好奇心旺盛な長崎の爺じの雑感日記。長崎の話題を始め、見た事、感じた事、感動した事などを発信。ばってん爺じのばってんはバツイチではなく長崎の方言

「人はどう老いるのか」

 大竹まことゴールデンラジオをネットで聞いていたら、ゲストに久坂部羊氏を招いてトークが行われていた。久坂部氏のことは私は何も知らなかったが、久坂部氏は「人はどう老いるのか」という著書を最近上梓された作家さんという紹介であった。

 日本は今、高齢化社会を迎えている。その日本で、高齢者の問題をテーマにした小説を書かれたのかなと思っていたら、少し違っていた。番組の中で、大竹まことさんが「人はどう老いるのか」という本をどうしてを書こうと思ったのですかと質問すると、久坂部氏は本を書こうと思った経緯を語り始めた。

 久坂部氏はそもそも外科医で大学卒業後外科医として癌を始めさまざまな外科手術を行なってきた。しかし、三十代後半に外務省の医官に任官し、10年間、日本の外務省の出先の外国にある日本大使館に勤務していた。その後40代後半に外務省を辞めて、医療現場に復帰したが、10年のブランクでは最先端の外科医に復帰することができず、どういう方向に進もうかと考えていた時に、高齢者医療の現場を紹介されてその道に進んだということであった。
 高齢者医療の現場で、毎日毎日多くの高齢者に接して医療を行ってきた。医療は患者の病気を治すことが使命であるが、高齢者医療は治らない病気の医療である。現代医学では老化は治せないという中で患者に接してきた。
 老化によって、人々は肉体の劣化に伴い、見た目が変わっていくし、様々な病気にかかる。見た目においては、ハゲ、シラガ、シミ、タルミ、イボ、アザ、色素沈着などいろんなことが起こる。そればかりか、うつ病認知症、肺炎、心不全など自然現象みたいに病気が増えていく。そのほかにも愚痴が増えたり、小言が増えたり、心配が増えたりもする、疑い深くなったり、僻みぽっくなったりする。そのほかにも関節が痛くなったり、細かい字が見えなくなったり、風呂に入るのが嫌になったりする。それが老化である。毎日毎日、多くの高齢者の方に接していると「上手に老いて、上手に亡くなる人」と「下手に老いて、せっかくの残り時間を無駄にして亡くなる人」に分けられることに気づいた。そして、できるなら、「上手に老いて」もらいたいという思いでこの本を書いたと語っておられた。

 世の中には「歳とってからの幸福論」とか「素晴らしき90歳」とかのいろんな本が出てますがどう思われますかと大竹氏からの質問されて、久坂部氏はそんな本は嘘ばっかりでしょうと切り捨てておられた。
 「高齢者の現実はそんなに甘いものではありません。そんな甘い言葉に踊らされて浮かれていると、実際老いに直面した時に、なんでこんなになるんだという怒りが湧いたり、こんなになるとは思わなかったと言う余計な苦しみを抱くことになりかねない。では、上手に老いるためにはどうしたらいいんですかと聞かれるが、それは、老いに対する期待値を下げることです。最初から老に対する期待値を下げて老に対する覚悟を持つことと、老いとはこういうものだという受け入れる気持ちを持つことが必要です」と答えていた。

 「しかし、期待値を下げるというのは難しくないですか?」と大竹氏が質問する。「でも、現実は厳しいのだから、期待値が高ければ高いほど苦しみますよ。初めから期待値を下げておくと、厳しい状況になってもやっぱりなという思いでダメージが少なくて済みます」と久坂部氏は答える。「では、その期待値の下げ方はどのくらいまで下げたらいいでしょうか?」と大竹氏が質問する。「それは期待値ゼロです。最悪の状況をイメージしておくと一番いいです。期待値ゼロだと、厳しい状況に直面してもそれほどでもなかったなあと思えるのが一番いいです。期待値を上げたい人は上げてもいいですが、上げれば上げるほど現実に直面して打ちのめされることが起こります。限りなくゼロまで下げた方がいいです」と久坂部氏はは答える。


 大竹氏が、期待値レベルを明確にするために例題を出します。「今日もカレーライスを食べられてよかった」「今日もカレーライスか」「カレーライスがこんなに美味しとは思わなかった」カレーライスを例題にした期待値はどれが一番久坂部氏の意見に即していますか?どうでしょうと久坂部氏に回答を求める。「カレーライスは二度と生涯食べれないだろう」というのが期待値ゼロの正解です。こういう覚悟を持って過ごすことから始める必要があります。当たり前に起こることは当たり前ではないという感覚で捉えれば、当たり前に起きることも感謝でしかありません。そのような気持ちが上手に老いるためには必要なことです。『上手に老いて、上手に亡くなる』人は間違いなく皆そのような感覚、心持ちで過ごしている人です。反面、期待値が高い人は、いろんな悩みや思いに苦しみあがき、少ない残り時間を最後まで苦しみ通す人です」と答えていた。

 期待値は限りなくゼロへ。これが上手に老いる、より良く老いるための秘訣らしい。自分の老いについて高い期待値を設定し、ぶつぶつ文句を言っていることはないか。勝手なことを言っていることはないか反省しながら進みたいと思う。