ばってん爺じのブログ

年を重ねても、尚好奇心旺盛な長崎の爺じの雑感日記。長崎の話題を始め、見た事、感じた事、感動した事などを発信。ばってん爺じのばってんはバツイチではなく長崎の方言

大学入学制度を考える

 花巻東高校の佐々木麟太郎内野手(3年)が米スタンフォード大に進学することが決まり、連日テレビなどで報道されていた。スタンフォード大はアメリカでトップレベルの大学で、世界大学ランキングもトップに入る超名門大である。この大学にはスポーツ推薦枠があるらしく、佐々木選手も野球の才能を買われて進学するようだ。スポーツ推薦による大学進学は日本の大学でもよくあることだが、その進学先が国内ではなく、グローバルになったことに驚いた。

 私は、アメリカの大学の入学制度を知らなかったので、当初は日本と同じようなものだろうと考えていた。スポーツ枠で入学したらスポーツに専念し、学業の出来不出来に関係なく進級し卒業できるのだろうと考えていた。しかし、テレビの解説者の話では、日本の大学と同じように考えないで下さい。日本とアメリカでは入学制度そのものが違うし、入学後の内容もずいぶん違うという説明であった。
 アメリカの大学では、日本の大学入試みたいな入学試験はないそうだ。つまり、日本は入学試験の得点で大学の合否を決めるが、アメリカではそのような試験はなく個人を全体的に評価して合否を決めるということであった。
 さらに、アメリカの大学でスポーツをやり続けるには、成績評価のABCDでC以上をずっと保たなくてはならない。仮にDの成績を取ると試合に出場できないという規定があるそうだ。だから、アメリカの大学では、スポーツ枠で入学しても、スポーツだけしていてはダメで、スポーツと学問の両方に取り組まないといけないとコメンテーターの方が話していた。確かに日本の大学とアメリカの大学では違うようだ。

コメンテーターの話を聞いて、スタンフォード大学の入試について調べてみた。
スタンフォード大学は、アメリカでも最も入るのがむずかしい大学の1つで、スタンフォード大学のデータ(2021年度)では、出願者数 55,471人、合格者数 2,190人、合格率 4%であった。
スタンフォードは、日本の大学のように、1つの試験だけで合否を決めることはしない。Holistic Admission方式という複数の書類を多角的・総合的に評価し合否を決定する。つまり、学力だけでなく、人間としての魅力や個性なども含めて評価するということである。とはいえ、まず何よりも重視するのが、高校の成績(これはアメリカのどの大学も同じ)である。スタンフォードの合格者のほとんどがオールAもしくはそれくらいの成績を修めている。しかし、高校でオールAを修めた出願者であっても、その多くが不合格となっているのが現実である。そして、エッセー(自己アピールの作文)、推薦状、課外活動状況などの提出書類の審査、及び面接、成績はオールAが当たり前だから、学力以外の要素をいかに際立たせるかが大きなポイントになる。

スタンフォード大学が求める学生とは?「起業家精神が旺盛な学生、知的好奇心に満ちた学生、チャレンジ精神に富む学生、独創性に秀でた学生、発想のスケールが大きな学生、スポーツに秀でた学生、他者や環境に優しい学生、国際的な視野をもつ学生」こんな学生たちが、現在のスタンフォード大学の名声を築いてきたことから、スタンフォード大学からして魅力的な学生とは、以上のような学生だろうということが想定できる。

 スタンフォード大学に合格するためには、自分自身が、スタンフォード大学が求めるまさにその学生にほかならないことを大学側に伝えなければならない。エッセー(自己アピール作文)や推薦状、課外活動などがその媒介になる。とはいえこれらの項目は、正解があるものではない。合格率が5%を切るのが当たり前のスタンフォードに対して、「何をどうすれば必ず合格する」という方法は存在しない。日本の大学入試にみられるような傾向と対策はない。アメリカの高校生は、自分の持ち味をよく省みて、スタンフォードがマッチしそうであれば、出願してみようという考えかたである。

エッセーについては、スタンフォードは独自の課題を設けている。以下がその例である。(スタンフォード大学のHPより)
1. スタンフォード大学では好奇心旺盛で、教室の内外で意欲的に学ぶ多くの人がいます。学ぶことに心から興奮するようなアイデアや学ぶことに心から興奮した経験について語ってください
2. スタンフォード大学の学生はほぼ全員がキャンパス内に住んでいます。将来のルームメイトに向けて、あなたについて何かを明かしたり、ルームメイト、そして私たちがあなたのことをもっと知るのに役立つことを書いてください
3. あなたにとって今、関心のあることや意味のあること、とその理由について教えて下さい
などである。
スタンフォード大のデービッド・エスカー監督が佐々木選手について語っていた。「佐々木の大学での学費、寮費は一切かからない。佐々木の勉強については、全く心配していない。スタンフォード大学が合格の判定をしたということは、スタンフォードのレベルについていけるという判断をしたということです。彼は野球だけをしたくてスタンフォードに来ているわけではない。彼は目標をきちんと持っているから何も心配していない。彼は野球も勉強もしっかり頑張るつもりで来ている。もちろん我々もサポートしていく。彼の英語も上達してくるはず」と語っていた。

佐々木選手のスタンフォード大学進学は、日本では、スポーツ選手が超難問大学に進学するのは難しいが、アメリカの大学では評価の仕方が全く違うから入学できたようだ。日本の大学入試では、入学試験の得点によって合否が決まるが、アメリカでは高校の成績は重視するが、日本みたいな入学試験はない。入学試験の得点による合否判定は簡単ではあるが、試験しか評価していないことになる。アメリカみたいに個人の全体(能力、学力、課外活動、意欲、将来の目標、やりたい事、個性、性格など)をできるだけ総合的に見て判定するというのも必要だと思った。日本の若者の選択の幅がグローバルに広がったのはとても良いことだと思った。佐々木選手の今後の活躍に期待したい。