ばってん爺じのブログ

年を重ねても、尚好奇心旺盛な長崎の爺じの雑感日記。長崎の話題を始め、見た事、感じた事、感動した事などを発信。ばってん爺じのばってんはバツイチではなく長崎の方言

なぜ日本は原発を止められないのか その2

 原子力ムラの権力は強大で、もはや我々国民はそれに異を唱えることさえできなくなっているのではないかと思いながらこの本を読み始めた。この本は、原発問題をライフワークとして長年にわたり取材してきたジャーナリストの青木美希氏が原発に関わるさまざまな出来事を歴史的俯瞰で捉え、日本の原発問題を時系列的に整理して示したものである。原発はなぜ始まったのかから、原子力ムラの人々の考え方、原発にまつわる黒い金、原発核兵器などさまざまな視点で原発問題を掘り下げていき、原発ゼロで生きる方法と現政権の取り組みまで書かれていた。

 この本を読んで、一番参考になったことは、「原発核兵器」の問題である。原発を動かすたびにプルトニウムが生じ、日本が保有する量はいまや45.1トンにのぼる。これは原爆6000発分にあたる。昔から、原発を持つことは潜在的核抑止力になるという考え方がある。日本を攻撃すれば、核攻撃で反撃されると恐れさせる力である。つまり原発を持つことによって、今は核兵器は持っていないが、すぐにでも核兵器は作れるという技術的潜在能力を常に維持しているということを国際的に明示していると同じであるという考え方である。「原発核兵器」の話になると、国民としては核兵器の所有は断固反対であるが、「原発核兵器」の話は外交問題に関係するトップシークレットの話となり、国民からするとわかりにくい話になると懸念していた。しかし、青木氏は、「原発核兵器」の問題について、原発科学者等にインタビューを申込み、その見解を記している。「仮に核兵器のために技術を保持したいのであれば、小さな研究炉と再処理施設があれば十分。巨大な原子力産業は要らない。日本が核兵器を持てても、逆に日本の沿岸部に54ヵ所も建てられている原発施設をミサイル攻撃されたら、核兵器攻撃されたと同じ状態になり、日本は滅亡する。国防のために、原発を止めるべきという意見がある」とまとめていた。

 「なぜ日本は原発を止められないのか」という本を読み終えての感想は、日本の政治の貧困をまざまざと見せつけられたという思いである。この本を読んで「日本はなぜ原発を止められないのか」の根本的な理由は日本の政治が金権政治だからであると思った。国会は自民党政権の裏金問題で混乱しているが、この裏金問題も「原発を止められない」のも同じ構造だと思った。

 自民党は政権与党である。政権与党は国会で法律を作ることができる。その政権与党には、いろんな企業が、自社や業界に有利な法律を作ってもらうためにお願いにやってくる。もちろん、手ぶらでは来ない。その一つがパーティ券購入である。パーティ券購入だけではなく、盆暮のご挨拶と称して有力議員には毎回1000万円が原発企業から贈られていたことも明白になっている。そして、それらの費用は法律によって全て電気代に上乗せされるように作られている。全て物事はお金によって動いていたのである。自民党政治家にとってお金をもたらすものしか興味はないし、国民にとって良し悪しは関係ない。また日本国の将来などどうでもいいようだ。自民党にとってはお金になるかどうかがいちばんの関心事であるようだ。

原発を続けることは事故が起きる可能性を抱え続けることを意味する。事故をひとたび起こせば取り返しのつかない事態を招くにもかかわらず原発はなぜ優先されるのか、
小泉純一郎元首相は、福島原発事故後、脱原発に主張を変え「原発ゼロ推進連盟」の顧問を務めている。昨年5月、都内の日本料理店で小泉元首相と岸田首相が鉢合わせをした。「憲法改正は3分の2ないとできないから無理だ。原発ゼロは総理が決めればすぐにできる。できないことを言って、できることをやらないのはおかしいじゃないか」と言った。岸田氏は苦笑しながら「総理が決めれば・・・・」と復唱していたと書かれていた。
原発産業の人口は20万人だそうだ。原発産業は裾野が広い産業で日本のトップ企業が幾つも絡んでくる問題である。そこに手をつけるには相当の覚悟が必要だ。手をつけると、企業の反対だけでなく(電力会社は原発を止めたいと思っているが、自分から言うと全てを負担させられるから、自分からは言えないという意見もある)、原発から利権を得ている各省庁や自民党議員からの攻撃も覚悟しなければならない。逆に放っておくと総理としての評価は高まるし、また献金も今まで通り間違いなく入手できるだろう。岸田氏には覚悟もないし、力量もないようだ。
いずれにしても、自民党は、長い年月をかけて原発を「自分たちの打ち出の小槌」に作りあげた。自民党原子力ムラの住民は原発によってこれからも税金をしゃぶりつくそうと思っているようだ。折角、美味しい法律を作ったのに簡単に手放してなるものかと思っているようだ。この本を読んで、原発によって税金が食い物にされていることがよくわかった。そして自民党政治というのは、金が全てであるようだ。