ばってん爺じのブログ

年を重ねても、尚好奇心旺盛な長崎の爺じの雑感日記。長崎の話題を始め、見た事、感じた事、感動した事などを発信。ばってん爺じのばってんはバツイチではなく長崎の方言

我らのヒーローが蘇った

 

ネットニュースでつぎの記事が配信された。

「プロボクシングのタイトル戦が12日、大阪浪速区エディオンアリーナ大阪で行われ、WBA世界ミドル級タイトルマッチで挑戦者の村田諒太(33、帝拳)が王者のロブ・ブラント(28、米国)を2回2分34秒TKOで下して王者に返り咲いた。前回に比べてスタイルを変えた村田は終始前へ出てボディから殴り続けブラントの戦術も心も叩き潰した。ベルトを失った王者が再戦で奪還したのは輪島功一氏、徳山昌守氏以来、史上3人目、4度目の快挙である。」

 

7月12日の村田選手の試合を見た。そして驚いた。劇的王座奪還は見事と言うしかない闘いであった。

 

私は村田選手のフアンであるが、今回の再挑戦に勝利するのはなかなか難しいのではないかと考えていた。村田選手は才能においても人間性においても、同じ日本人として誇りに思うプレイヤーである。

 

これまでの村田選手の経歴は、2012年ロンドンオリンピックで日本人で前人未到のミドル級での金メダルを獲得し、プロに転向後も、2017年層が厚いミドル級で世界チャンピオンという偉業を成し遂げてきた。しかし、絶頂期にあった2018年10月20日アメリカのラスベガスで行われた2度目の防衛戦で挑戦者の同級1位ロブ・ブラント(28)に0―3の判定負けで敗れた。この時の試合では村田選手の良い点は何も見いだせなかった。反面、挑戦者のロブ・ブラントのスピードと村田選手の顔面に1,262発ヒットさせた手数の多さは眼を見張るものがあった。この試合は28歳の若き挑戦者ロブ・ブラントの一方的な勝利に終わった。この試合を見て、さすがに、天才と呼ばれた村田選手も33歳になりピークを超えてしまったと思った。ロブ・ブラントに圧倒された試合であった。

 

試合後、村田選手は引退と言う噂が流れていたが、敗戦から1ヶ月後村田選手が会見を開いて現役続行を発表した。併せて、「この惨めな敗戦のまま私のボクシング人生の幕を下ろすわけにはいかない。世界チャンピオンを目指す」と宣言して、今回の試合が実現した。

 

リベンジする。この気概はアスリートとしては絶対必要な要素であろう。現役続行を言う限りリベンジして倒さない限り道はない。その気概は立派であると評価するが、現実は簡単ではない。10月のぼろ負けした試合を思い出すたびにロブ・ブラントの強さに圧倒され、もはや村田選手の時代は終わったと私は思った。

 

7月12日の試合が近づいても、私の予想はロブ・ブラント有利のままであった。私は村田選手のフアンだからもちろん村田選手を応援する。しかし、勝利するのは難しいのではという気持ちはいつも心に残っていた。この試合について、私は勝敗にはこだわらず、前回の一方的な惨めな負け方ではなく、負けても一矢を報いるような試合になれば良いと思っていた。そうすれば、負けてもアスリートとしての魂を貫き通すことができると思った。村田選手が自分で納得できる試合をしてもらえば良いと思っていた。

 

そういう中、いよいよ試合が始まった。大声援の中1ラウンドが始まり、1ラウンドは互角か、ロブ・ブラントやや有利な展開で始まった。2ラウンド、村田選手は前へ前へ踏み込んでいく。パンチを打ち続ける。前に踏み込むことでパンチを受けるけどそれ以上に強烈なパンチを繰り出す。「肉を切らせて骨を断つ」その言葉を彷彿させる強烈なパンチを浴びせ続けた。渾身の右ストレートがロブ・ブラントにヒットし、ぐらついて倒れた。起き上がって再開しても攻撃の手を緩めずパンチを浴びせ続けると、再び、ロブ・ブラントの身体がぐらつく。レフリーが間に入りTKOを宣言して勝利が決定した。2ラウンドの劇的勝利。完璧な見事な勝利だった。

 

7月12日の村田選手の試合を見て、感動した。この試合の劇的勝利はもちろん素晴らしかった。しかし、この試合に勝利したから感動したのではない。村田選手は前回ロブ・ブラントに敗れた後、このまま引退すべきか、現役続行して挑戦すべきかを1ヶ月間考え抜いた。あの惨めな負け試合を自分の集大成としていいのかと自問自答して出した答えが挑戦であった。挑戦がいつも成功するわけではない。挑戦して、また惨めに跳ね返される恐怖も考えただろう。しかし、挑戦しなければ何も生まれないことを村田選手が明確に示してくれた。前に進む、挑戦する、その先にしか希望はないということを村田選手が示してくれた。村田選手の前に進む生き方に感動した。

ますます村田諒太が好きになった。