今回の衆議院議員選挙の結果は自公過半数割れ、しかし、自公政権の流れは変わらないというものであった。この結果にコメンテータが裏金問題で有権者がノーを突きつけたが、低い投票率を考えると、政権交代までは望んでいないというように見えると言っていた。
今回の選挙では裏金問題や統一教会問題が一つの焦点になった。裏金問題は赤旗がパーティ券の売り上げの収支を細かく追求した結果、明らかになった自民党金権政治の闇の部分であった。自民党は裏金議員に対しては厳しい態度で臨むといっておきながら、裏金議員に裏金公認料を支給していたことが発覚した。これを報道したのも赤旗であった。赤旗のこれらの報道が自民党及び公明党が退潮する結果となった。与党以外では維新と共産党が改選前より議員数を減少させた。特に、今回の選挙の焦点にもなった自民党の裏金問題を赤旗によって暴いた共産党が議員数を減らす結果となったことは意外であった。
一方票を伸ばした政党は、立憲民主党、国民民主党、れいわであった。れいわは反自民政党として、自民党の政策に真っ向から反対して活動してきた政党である。もともと3名の議員数が3倍の9名に増員したが、200名を超す自民党に比べるとまた、まだまだ弱小政党に変わりはない。れいわの今後の発展を期待するばかりである。野党である立憲民主の議員数が増えたことは喜ばしいことではあるが、立憲民主の現在のトップの姿勢は自民党に近いことが問題である。立憲民主は消費税賛成、原発賛成、安保法制賛成というように基本的に自民党と同じことも多い。特に第二自民党と呼ばれる国民民主党は改選前の7名から4倍増の28名に躍進した。この結果を見ると、自民党の裏金問題や統一教会問題で自民党に愛想を尽かした人たちは、自民党の対極に位置する政党に投票するのではなく、自民党に一番近い政党に投票したことになる。このことが今回の選挙の特徴とも言えるようだ。結論は自民党、公明党の与党は議員数を減らしたが、自民党と机の下でいつでも手を結ぶ、自民党と同じような野党が伸びたのでは実質何も変わらない選挙結果となったといえる。
今回の衆議院選挙は本来なら、自民党の欠陥を問う選挙であった。それは物価高による国民生活の困窮問題をはじめとして、裏金問題、統一教会問題、原発再稼働問題、安保法制と軍拡問題、日米地位協定の見直し問題、新自由主義経済による公共の市場化問題など多岐にわたるものがあったはずである。しかし、選挙戦になると裏金問題にだけ焦点が当てられ、その他の欠陥は何も話題にされることなく選挙が行われた。どこの新聞テレビも選挙の焦点を問うような報道は見えなかった。国民の目を裏金にだけ誘導するような報道ばかりであった。自民党政治の欠陥を矮小化するためにあえて裏金問題を焦点化したように思える選挙報道であった。
選挙期間中の有権者のヤジを聴きながら、政治についての国民の関心の幅が狭いと感じることがあった。
今回の選挙ではれいわ新選組から伊勢崎賢治氏が立候補した。伊勢崎賢治氏は国際機関で国際紛争の解決に尽力されてきた方である。伊勢崎氏は自分の体験などをもとに日本の安全保障問題、外交問題などについて話をされていた時、有権者から「外交問題や防衛問題は我々国民には直接関係ない。我々の日常とかけ離れている。もっと国民のための政策を掲げてもらいたい」とヤジが投げかけられた。
伊勢崎氏はそのヤジを受けて、私が話していることはまさに国民生活に直結している話ですと言って次のように述べていた。
「岸田政権は昨年43兆円の軍拡をすると決めた。これが達成されると日本は世界第3位の軍事大国になります。アメリカ、中国、そして日本です。日本は憲法9条で戦争しないと言っている国です。憲法9条の国が世界第3位の軍事大国になる。しかもこの景気が最悪のときに、やるんですよ。だから、この話は私たちの国民生活に影響を及ぼさないはずがない。まさに国民の生活に直結した話になります。なぜ、防衛費が増大するかその理由の一つをお話します。それは皆さんが怖がるからです。理由は簡単です。国民の皆さんが怖がるから防衛費が増大するのです。中国は怖いですか?だったら、自衛隊をもっと強くしましょう。アメリカともっと連携して軍拡しようとなります。誰も異を唱えない。異を唱えにくいムードができてくる。これが問題なんです。中国怖いですか?はい怖いです。アメリカと同じようにスーパーパワーを持っているからと言うけど、でもちょっと待ってください。今から過去40年の間にアメリカが軍事侵攻した国はどのくらいあると思いますか?13カ国あります。アメリカは過去40年間に他国に13ヵ国侵略しました。そして、中国がこの40年間に軍事侵攻した国はどのくらいあるでしょうか?ゼロです。中国が軍事侵攻した国はありません。もう一つクイズです。アメリカは国外にいくつ軍事基地を持っていると思いますか?アメリカは国外の80ヵ国に750の軍事基地を持っています。そのうちの一つは日本にあります。そして80ヵ国の中で一番でかい基地が日本の基地です。中国は中国国外にいくつ基地を持っているでしょうか?1個です。アフリカのジブチに1個基地を持っています。そこには、アメリ軍も持っているし、日本もそこに基地を持っています。9条の国が国外に軍事基地を持っているのです。国外に基地を持ち、岸田政権の軍拡予算を実行したら、日本は間違いなく本当の軍事大国になるでしょう。しかし、皆さん、私の話を聞いて、本当に中国が怖いと思いますか。過去40年間一度も他国を侵攻したことのない国ですよ。そんなに怖がる必要がありますか?そんなに怖がる必要はないのです。怖がる必要はありません。怖がらせると誰が儲かるかということを考えてください。もちろん武器がたくさん必要になれば武器産業は儲かります。それと政治家です。国民の恐怖は一番票になるんです。これは古今東西一つの法則です。国民を怖がらせると国民の力を集中させる最大の手段となるのです。人間だから怖がるのは仕方ないことかもしれない。しかし、現実に中国は過去40年間他国を侵略していない国なんです。その事実を知って冷静な対応をしてください。冷静に見て、怖い怖いにブレーキをかけることで国の予算を国民の生活に回すことができるのです。ほどほどに怖がるという意識を忘れないようにしてください。そうしないと利用されるのです。イージス艦1隻作る予算で高校授業料無償化ができるし、大学授業料無償化だって可能になるんです」と話されていた。
伊勢崎氏は有権者のヤジを受けて、このように具体的にとてもわかりやすく話をされていた。れいわ新選組は伊勢崎賢治氏を外交・防衛問題のエキスパートとして期待していたが、残念ながら当選までは至らなかった。
今回の選挙は裏金問題選挙に終わってしまった。裏金問題という金権政治も重大事であるが、自民党の欠陥は金権政治ばかりではない。統一教会問題は解決できず自民党は統一教会と表裏一体である。自民党の欠陥政策である国民生活困窮問題、原発再稼働問題、安保法制と軍拡問題、日米地位協定の見直し問題、新自由主義経済による公共の市場化問題など、このまま自民党の政策を続けると、国がますます凋落することばかりである。今後の選挙では、自民党の欠陥を焦点にして選挙に望むようなムーブメントを起こさないといけないと切実に思った。