ばってん爺じのブログ

年を重ねても、尚好奇心旺盛な長崎の爺じの雑感日記。長崎の話題を始め、見た事、感じた事、感動した事などを発信。ばってん爺じのばってんはバツイチではなく長崎の方言

小出裕章さんの講演「フクシマ原発事故は終わっていない」を見る

福島第一原子力発電所事故は2011年3月11日に起こった。すでに事故から11年を経たことになる。そのフクシマ原発事故について、先月、岐阜県小出裕章さんの講演が行われた。そのタイトルは「フクシマ原発事故は終わっていない」というものであった。

小出さんの講演を聴き、11年経った今も、フクシマの復興は進んでいないことを知って愕然とした。そもそも放射線に汚染された大地が復興できるのかという暗澹たる気持ちになった。小出さんは次のように語っていた。
「2011年3月11日フクシマ原発事故が発生し、広島原発168発分の放射能が撒き散らされた。同時に、原子力緊急事態宣言が発令された。その原子力緊急事態宣言は11年を経た今も、解除されず続いている。決してフクシマ原発事故は終わっていません。

フクシマ原発事故によって、福島県の東半分を中心にして、栃木県、群馬県の北半分、さらに、宮城県の南部・北部、千葉県の北部、岩手県新潟県、東京都の一部地域など1万4000㎢の大地が、放射線管理区域(4万Bq/m2を超える区域)にしなければならない汚染を受けた。事故当日、政府は「原子力緊急事態宣言」を発令し、60万bq/m2以上の汚染地から住民を強制避難させたが、それ以下の汚染地の人々に対してはすぐには健康被害は生じないなどと喧伝しその場に人々を打ち棄てた。

そして、現在は放射能の除染が進んだとして、避難指示は順次解除されているが、それでも1市4町2村は放射線量が今も高く、人の立ち入りを制限する帰還困難区域に指定されている。その面積は337㎢で名古屋市とほぼ同じ面積にあたる。しかも、避難指示解除を受けた住民にとっても喜ばしいことばかりではない。町だけは除染されて放射能が低下しているが、その周辺は依然として放射能の値は高い。放射能感受性の高い子供を連れて帰れない。帰還を渋る住民に対して、これ以上のわがままは許せないとばかり、政府は帰還拒否者に対して、家賃補助の廃止などを通知している。

原子力緊急事態宣言を解除するには、放射線に汚染されていない元の状態に戻さなければならない。そのためにはまず、放射能の汚染をくい止めなければならない。そのために、崩壊した原子炉建屋から原子炉内に溶け落ちた核燃料デブリを取り出して安全に保管しなければならない。国と東電は燃料デブリを掴み出し30年〜40年で事故を収束させると言ってきた。しかし、原子炉内の燃料デブリは今もってどこにあるかさえも判然としない。近づくと人間が即死するほどの強い放射能のため人間は近づくことはできない。そのためロボットを投入して作業を進めているが、ロボットのICチップは放射線に弱い。今までロボットを何台も投入しているが、全てダウンしてしまい作業が進まない状態が続いている。同じく、福島第一原発に置かれている2600本以上の使用済み核燃料棒を安全な場所に移さねばならない。その核燃料棒の取り出しも遅々として進まない状況が続いている。このままでは100年後にも事故は収束できない。もちろん、掴み出したところで放射能は消えてしまうわけではない。それは無毒化するまで10万年から100万年の管理が求められる。

原発敷地内では、今も3000人以上の作業員が被曝の危険を犯しながら放射能の封じ込め作業に懸命に取り組んでいるが、100年経っても終わらない状態である。敷地外では、広大な放射能汚染によって生活を根こそぎ破壊され、地域や家族をバラバラにされた人、流浪化させられた人、汚染地に捨てられた人、帰還させられる人など様々な形で今なお苦しみが続いている。

フクシマ事故が原発事故ではなく、火力発電所の事故であれば、事故後すぐに、また元の地域社会が同じ場所に再建され笑顔にあふれた地域社会ができただろうと思う。しかし、原発事故の復興は進まない。」

そのような中、東京電力福島第1原発事故で避難した住民らが東電と国に損害賠償を求めた裁判で、原告計約3600人に総額約14億円の支払いを東電に命じたというニュースが流された。原発事故による避難民が東電に裁判で勝訴したということで大きく報道されたが、本当に勝ったことになるのだろうかと思う。生活の基盤を奪われ、地域も家族もバラバラにされ、流浪の民の苦しみを11年間も味合わされ、元に戻せと叫んできた結果が一人当たり40万円足らずである。勝利の結果が40万円足らずである。

小出さんはこの裁判を見て、原発事故で原子力政策を推し進めてきた当事者である東電や国はフクシマ原発事故で何を学んだかと考えたら、フクシマ原発事故みたいな未曾有な過酷事故を起こしても、誰も責任を取らないで済む、損害賠償の裁判に負けてもわずかなお金で解決できる、これほど都合の良い原発は絶対やめられないと思うだろうと話していた。確かに住民の生活を根こそぎ奪っておきながら、雀の涙ほどの金額で解決できるので有れば笑いが止まらんだろうと思う。汚された国土には人は住めない、事故があっても責任を取らない、補償もしない、それで済むのが原子力政策である。

生物の存在そのものを否定する取り返しのつかない大惨事をもたらすのが原発である。ロシアによるウクライナ侵攻に伴うエネルギー問題から原発再稼働の声を与党から聞くようになった。新設の計画もあるようだ。危険すぎて都会には絶対作れないので、地方に住む住民の生活や生命を無視して進める原発、核のゴミを含め責任を取れもしない者たちが自己の利益のために子孫に責任だけを押し付けながら進める原発など即刻廃絶にしなければと改めて強く思った。