3月11日のモーニングショー「そもそも総研」では、「3・11福島原発は30年後に廃炉・無害化できる?」がテーマで話が進められた。
事故があった福島第一原子力発電所は、政府が定めた廃炉に向けた「中長期ロードマップ」によると事故から30~40年後に、廃炉措置が終了とある。
「本当に30年後に原発は廃炉となるのでしょうか?」が今日のテーマであった。
結論を先に言うと、番組に出演した佐藤暁氏(原子力情報コンサルタント)は、「政府が進める廃炉作業ロードマップでは30年後に廃炉にする事は不可能である。現在、核燃料デブリをロボットで取り出す計画を進めているが、ヒューマノイド系ロボットのような細かいところまで手のいくような技術を確立する必要がある。技術のイノベーションがない限り燃料デブリの取り出しの見通しは立たない。いずれにしても放射性物質を外部に拡散させないことが必要で、石棺で原発を覆って放射能漏れ対策を施したチェルノブイリの方策を踏襲せざるを得ない」と指摘した。
また、多摩大学名誉教授の田坂広志氏は、政府と東京電力がまとめた中長期ロードマップでは2011年の事故から30~40年後に廃炉が完了する目標を掲げていることについて、楽観的すぎると指摘した。そして、「10年前、悲惨な事故を起こした福島原発の内部には、核燃料がメルトダウンを起こし、周辺の圧力容器などと溶融一体化したデブリと呼ばれる極めて危険なものが存在している。このきわめて危険な核燃料デブリがどこにどのような形で存在しているのかさえもわからない。たとえわかっても、それほど危険なデブリを取り出す技術方法は世界で確立されていない。しかも福島原発には、核燃料デブリの問題や大量の汚染処理水の問題以外に、まだ極めて厄介な問題が存在している。それは核燃料デブリによって高濃度に放射能汚染された汚染土である。東京ドーム8杯分の高濃度汚染土をどのように処理するのか大きな問題として残されている。高濃度に汚染された放射能汚染土は掘り出すと粉塵となって周囲に撒き散らされるので掘り出すこともできない。仮に掘りだすことができたとしても、高濃度に汚染された汚染土を安全に運搬する車両もなく運搬できない。また、莫大な量の高濃度汚染土を搬入する場所もない。核燃料デブリ、汚染水、汚染土これらを全て解決しない限り福島第一原発の廃炉・無害化ができたとは言えない。国民に甘い期待を持たせるのではなく、廃炉作業の難しさを正直に国民に伝えるべき」と語っていた。
東京電力に、あと30年で無害な土地に戻すことができるのか尋ねたところ、「廃炉の最終的な姿について、いつまでにどこまでどのような状態にしていくかということについては地元の方々をはじめとする関係者の皆さまなどと相談させていただきながら検討を進めていくことになると考えている」という回答があったが、あと30年で廃炉処置が終了し、無害な土地に戻すという明確な回答は何もなかった。
佐藤暁氏と田坂広志氏の発言を受けて、玉川徹氏は、「原発再稼働を目指す政府や原子力村の人たちは都合の悪いことは明らかにしたくないだろう。しかし、福島第一原発の廃炉処理は30年〜40年経っても廃炉できないことを東電や政府は国民にはっきりと説明すべきである。また、廃炉作業がこれほど難しいことであるということを説明し、この福島第一原発の大量の高濃度汚染土をどうするのか、チェルノブイリ方式で石棺にしてこのまま福島第一原発に閉じ込めておくのかを含めて国民の前に明らかにして廃炉作業に取り組むべきと主張していた。
今日のそもそも総研のテーマである福島第一原発の廃炉問題は玉川氏のジャーナリストとしての熱を感じる取材であった。
福島第一原発事故とその廃炉問題については、2011年の事故直後から都合のいいことだけを発表するのではなく現実を直視して対応すべきと主張していた小出裕章氏の主張を思い出す。小出裕章氏は2011年6月に上梓した「原発のウソ」という著書の中で、「福島原発周辺の汚染はあまりにひどく、批判を恐れずに言えば、将来にわたって無人地帯とせざるえない状況です。大変言いにくいことでありますが、おそらく周辺住民の皆さんは元にもどれないでしょう。むしろ、すぐに戻れるような期待を抱かせる方が残酷です。現実的な方策として、私は福島原発周辺のその無人地帯に放射能のゴミを捨てる「放射能の墓場」を造るしかないと思っています」と語っていた。
それでも原発再稼働を目指す政府や原子力村の人たちは出来るだけ都合の悪いことは隠し続け、騒ぎがおさまるのを待つのであろう。そして、騒ぎが収まってきたら、今までやってきたように、好感度の高いタレントさんを高額ギャラで雇って原発推進キャンペーンをゴールデン時間帯に全国放送で毎日毎日放送していくだろう。国民を騙す作戦を実行し、そして、いつしか国民を原発フアンに変えていく計画を行うであろう。
私は騙されることの責任を自覚して、もう二度とだまされないようにしなければと思う。