ばってん爺じのブログ

年を重ねても、尚好奇心旺盛な長崎の爺じの雑感日記。長崎の話題を始め、見た事、感じた事、感動した事などを発信。ばってん爺じのばってんはバツイチではなく長崎の方言

日米軍事同盟に潜む危険

最新のJNN世論調査で、「日本の安全保障環境が厳しさを増す中、日本の防衛姿勢である『専守防衛』について聞いたところ『見直すべき』が52%、『見直すべきではない』が28%でした。また、日本の防衛費の増額については『賛成』が55%にのぼり、ウクライナ情勢などを受け、防衛力の強化を求める声の高まりを示す結果となりました」というニュースを聞いた。

この調査結果を踏まえてネットでは、「専守防衛を見直して、軍事予算を増加して、結局、日本もロシアのような国と同じことがしたいのだろうかと疑問に思う。この世論調査について、防衛費の増額について賛成している人が多いが、『防衛費増額の為の財源は消費税増税か、それとも社会保障費を削るか、どちらが良いですか』と設問に入れたらどうだろう。今でもこの国の財源は一杯一杯なのに、すでに世界トップクラスである日本の防衛費を増額するという事は、消費税増税か、社会保障費を思い切って削減するかしか財源は出てこない。調査に答えた人達は、そういう所まで想像力を働かせているのだろうか。日本が敵基地攻撃能力を備えていつでも相手を攻撃できるという事なら徴兵制も必要だし、戦争のできる国になると、そちらの方に人員も割き費用も割き、ますます国民負担が増えるがそれでも納得するのか。そして耐えられるだけの体力が国民にあるのだろか。」と疑問を呈する意見があった。私も同意見である。冷静になって考えるべきと思う。

「安全保障のジレンマ」という言葉がある。仮想敵国を想定して武力を増強させると、敵国も脅威を感じてさらに軍備を拡張する、それに対してさらにお互い軍備を増強していくとますます安全になるどころか危険が増す状態になる。これが安全保障のジレンマである。これではいつまでも平和は来ない。一旦戦争が始まればウクライナのような悲惨な状態は避けられない。「原発はみずからに向けた核弾頭だ」といわれている。日本のように全国の海岸線に50機以上の原子力発電所を設置している国はそもそも戦争などできない国である。平和外交でしか日本は生き残れない国である。

そういう中、東京外国語大学教授(平和構築学)の伊勢崎賢治氏が、戦争状態に陥っているウクライナ情勢を踏まえて、日本の安全保障について語っていた。その中で、日米軍事同盟の中に危険があるという話を聞いて驚いた。
「戦争は大国の間にある緩衝国でおきる。ウクライナNATOとロシアの間にある。ウクライナNATO加盟国ではない。一方、日本は米国の軍事同盟に入っている。だから緩衝国家でありながらNATOの一員としてやってきた国々のことをわれわれは勉強するべきだ。ノルウェーアイスランドがそうだ。これらの国は、日本人にはあまり知られていない工夫をしている。NATO加盟国のノルウェーは、ノーベル平和賞の国であり、オスロ合意など世界のいろいろな紛争の信頼醸成の場になってきた。それはロシアに接しているという地政学上の条件があるからだ。NATO地位協定は、日米地位協定のように2国間協定ではないので主語がなく、派兵国と受け入れ国という言葉しかない。NATO地位協定は、お互いの軍の自由を認めていない。派兵国の軍隊はすべて駐留受け入れ国の法律に従い、環境基準も訓練のやり方もすべて受け入れ国の基準に従う。派遣国の軍隊は駐留受け入れ国から自由に軍事作戦のため出国することは認められないなどNATO地位協定はすべての加盟国が対等な協定として結ばれている。
 
ノルウェーはロシアを刺激しないように、つい最近まで国内にNATO軍も米軍も入れない方針をとってきた。ノルウェーの北側にあるバレンツ海はロシアの原子力潜水艦も行き来するので、NATOや米軍にとっても重要な国だ。それでも米国の資金援助でレーダー施設をつくったとしても、それはノルウェーのものであるとし、ロシアとの国境地帯ではノルウェー軍も軍事訓練をおこなわない。そのようにしてロシアと付き合ってきた。これが2014年のロシアによるクリミア併合で変わってくる。ノルウェーでは史上初めて米原子力潜水艦が国内に寄港した。それまで世論は二分して争ってきたが、クリミア併合によってロシアへの恐怖心から軍事同盟強化という声が大きくなっているという。
 ノルウェーは大国に挟まれた緩衝国家である。緩衝国家として戦争の危険に近づかないようさまざまな工夫をしてきている。置かれた立場は日本も同様であるが、私は日本は緩衝国家ではなく、「緩衝材国家」と呼んでいる。その意味は自分の意志が働かないからだ。NATO加盟国の緩衝国家の国々は、NATO地位協定だからお互いに対等だ。外国軍を受け入れても駐留する外国軍に勝手なことをさせない。

決定権をもつ主権国家だからこそ緩衝国家になれる。だが、われわれ日本は駐留軍である在日米軍に対しての自由がない。米国のいいなりになっていることがまずいということがわかっていない。自国内で外国軍が勝手なことをして、一番先に報復されるのは緩衝国家だ。だから基本は、駐留させたとしても自由なき駐留にしないと危険極まりない。これがNATO同盟国との違いである。日本が戦争をしたくないと思っても、日本国内で外国の軍隊が自由に自国の利益のために軍事行動を起こしたら、攻撃を受けるのは緩衝国日本であるのに、自由に軍事行動をしていいという協定を結んでいることこそ戦争の危険でしかないと語っていた。まさにその通りだと思う。日本の政治家はウクライナ情勢を踏まえて愛国心を叫ぶのではなく、日米軍事同盟の危機をまず解決すべくことに力を注ぐべきと強く思う。