先日の長崎新聞に、軍艦島についての記事が掲載された。「世界文化遺産「明治日本の産業革命遺産」の構成資産の一つ、長崎市の「端島炭坑」(軍艦島)の保全と活用を考えるシンポジウムが市内であり、風化が進むアパート群を調査している東大大学院の野口貴文教授(建築材料学)は、階全体が崩落する「余命」の予測結果を報告。国内最古の鉄筋コンクリート造アパート「30号棟」について「あと半年程度」と明かした。」
軍艦島は、今、観光資源として活用されている。その活用も、老朽化による廃墟が一つの魅力としてPRされている。その廃墟である老朽化した建築物が経年劣化で崩壊の危機があるという記事である。
廃墟の軍艦島を完全かつ綺麗に修復すると、その価値がそこなわれるので、軍艦島は老朽化したまま廃墟のままの建物を維持する難しい修復と保存が求められているようだ。老朽化したままの廃墟を維持するのは莫大な予算が必要となり今後どうなるかわからない。何もしなければ、間違いなく全ての建物が崩壊して単なる岩礁みたいになってしまうだろう。今日は天気が良いので、まだ軍艦島のおもかげを残す軍艦島を眺めながらサイクリングすることにした。
スタート地点は香焼町のシンボルパークである。シンボルパークの“愛と平和の像”の前で愛車の記念撮影をして出発する
スタートしてすぐに海岸道路に出る。右側に防波堤を見ながら長い直線道路を快適に進む。右手の海の先に見える対岸には今から行く蚊焼漁港が見える。それにしても雲一つない快晴で気持ちがいい。
スタートとして10分ほど走ってきたら、隣町の深堀漁港に到着。そのまま通過して進んでいくと、深堀町のはずれから軍艦島が見えてきた。望遠を最大にしてもまだまだ軍艦島は小さい。この位置からだと軍艦島が隣の島である中の島と重なって見える。
深堀町までは平地で快適に飛ばしてきたが、深堀町を抜けると大籠町まで上りになる。頑張ってペタルを漕ぎ続けたが、とうとう上れず押して行く。私の愛車は電動自転車ではないので上りは辛い。それでも上り詰めると必ず下りがある。上りが辛くても下りの爽快さを思うと自転車は手放せない。下りを楽しんでいたら海の向こうに軍艦島が見えてきた。大籠から見る軍艦島は少し近づいたせいか心持ち大きく見える。
アップダウンを繰り返しながら、蚊焼の漁港へ到着。防波堤にペーロンの絵が描かれていると思って近づいてみるとタイルで作られたものであった。小さい四角のタイルをジグソーパズルみたいに組み立てて一枚の絵になっている。どうしてこんなにできるのかわからない。
蚊焼漁港を過ぎて高台の方へ上っていく。そして国道に出たら国道に沿った立派な遊歩道が作られている。この遊歩道は軍艦島を見ながら散歩するために作られたたような遊歩道である。右手には遮るものがない一面の青い海が広がり、そこに軍艦島がいつも見えている。
蚊焼の高台にある遊歩道から軍艦島を眺めながら進むと今度は下りになる。下り終えたところが黒浜である。黒浜の小さな漁港の砂浜は昔、子供が小さい頃、スターウオッチングにきた場所である。夏休み、この砂浜に寝転んで星を見ると水平線近くにさそり座がハッキリと見えていたのを思い出す。黒浜から見る軍艦島はずいぶん軍艦らしく見えるようになった。
夫婦岩がある以下宿に到着。案内板によるとこの夫婦岩の誕生は4億8千万年前ということらしい。軍艦島を夫婦岩の間に入れて写真を撮るのが流行っているようだ。私も記念に一枚。
高浜町へ来たところで、今日の目的地である長崎市恐竜博物館3kmという案内を発見。軍艦島も接近したのかずいぶん大きくなった。
南越名に到着。ここには“南越名海難者無縁仏之碑”が祀られている。この無縁仏之碑は、戦時中、軍艦島に強制連行され、過酷な労働を強いられていた朝鮮人労働者たちがその辛さに耐えかねて海に飛び込み対岸を目指したが途中力尽きて溺死、その死体が南越名の海岸に漂着し、当時の村役場が「行旅病人」(ゆきだおれ人)として埋葬したものと言われている。石碑の前に立ち、心から合掌するのみである。
目的地の長崎市恐竜博物館に到着。恐竜博物館は先月オープンしたばかりである。長崎半島には8100万年前の恐竜時代の地層があり、長崎ではいろんな恐竜の化石が出ていることで恐竜博物館の誕生になったらしい。今日は休館日で中には入れないが、敷地内の公園は自由に出入りできるので公園で小休止する。
恐竜博物館の裏庭に回って海を眺めて、遠く出発点を確認する。海沿いをアップダウンを繰り返しながらここまできた。片道16kmの距離である。平道ばかりなら1時間もかからない距離であるが2時間要している。ここまで来たら、軍艦島は建物の一つ一つがはっきりとわかり、どう見ても軍艦には見えない。今日の軍艦島を見ながらの自転車旅は天気に恵まれ楽しめた。恐竜博物館も何があるのかわからないが興味を感じる。次は休館日でない日にまた自転車で来たい。